ストレスチェックを超える“折れない心の作り方”として“レジリエンス研修”が注目を浴びている。

レジリエンスとは逆境に置かれてもへこたれないで回復し、復活していく心の力を言う。躓きそうになっても、たとえ躓いても、また立ち直っていく力である。 

本来は外から力を加えた物質が変形しながらも、元に戻ろうとする弾力性を意味する言葉として物理学で使われていた。
サポータ―の棚卸し

心の筋トレとは?

この強くてしなやかな心を鍛えるためのトレーニングがある。 心の筋トレだ。だが、スパルタ教育ではない。

私が学んだ手法は、次の4つの因子(筋肉)を鍛えるものである。

もともと個人の中にあるレジリンスの要因として、森敏昭氏らはI AM(自己肯定感)、I CAN(自分の能力に対する信頼感)、I WILL(自分の楽観的な見通し)/I DOの3因子を、そして環境要因のI HAVE(自分の周囲の支援)の計4因子を析出している。 

4因子の内、今回は環境要因である、I HAVE、について触れる。 

具体的には自分の回りにいる支援者、サポーターを指す。 サポーターがいる人、相談する人がいる人はくじけないと言われる。孤独になりがちな現代、自分のサポーターの棚卸し、振り返りの時間を持つことは、心の筋力に気づく第一歩だ。

人生の様々な場面を思い返し、支援してくれた人々、現在もそうだ、という人の名前を書き出してみる。

連れ合い、学生のころからの友人、上司・同僚、師匠、医者などの顔が浮かぶ。

サポーターを次の4点で分類すると関係が明確になる。

<1>肉親からペットまで掛け値なしの心の支え
<2>メンター、師匠、コンサルタントなどの指導者、相談者
<3>フィジカル面のサポーター
<4>御縁ある人々

フィジカル面のサポーターとは、医者やトレーナーを指す。ストレス社会を自分らしく生きるためには、より積極的で、意識の高い健康管理が欠かせない。

せっかくの医療、スポーツ施設等を“折れる前”に使いたい。

例えばかかりつけ医も自分の健康に合わせ複数持ち、定期に点検したい。総合的な内科医に始まり、歯科医、眼科医、整形外科医、婦人科医等の専門医。相談に乗ってくれる、自分と相性の合う長い付き合いのできる医者達は、重要なサポーターである。

また、レジリエンスを阻害するネガティブ感情の解消、予防としてスポーツやヨガ等もトレーナーとして相談し、レスペクトするならサポーターとなる。

4番目に“御縁ある人々”を上げた理由は、出会いへの感謝を忘れがちな自分の反省である。

当たり前のように自転車に乗っているが、小さい頃、乗り方を訓練してくれた、隣りのお姉ちゃん。家に帰れないと、泣いている自分を助けてくれた知らないおばさん。

なぜ、その会社へ就職することになったのか、学校を選んだのか、趣味やスポーツでも、選択にあたり、縁のあった人々。 今は付き合いのない人だが、たまたま聞いたその一言、アドバイスで決めたことは思いのほか多いものである。 すると、孤独、でもないな、と気づく。実は、おかげさまだらけ、である。

サポーターを別の言葉で表現すると、御縁が絆になった人である。自らのサポーターに心もとなさを感じる場合は、サポーターを作ればよいのである。

では、どのように?

まずは、物理的に“となりにいる”ことである。 または“となりにいることができる”関係を持つことである。心理は自然についてくる。

もし、相手を自分のサポーター、にしたかったら隣りに位置することである。

真正面では威圧感があるが、横並びは親密感を生み易く、別名“恋人ポジション”と呼ばれる。

恋人? 私の場合?、常連と湯船の縁で横並びになりながら、しばし会話が弾む関係か。

ちょっと触れそうでもあり、目線も直視せず、で緊張せずに会話ができる。 

上司が部下にアドバイスする場合も真正面よりも斜め後ろからそっと見守るお隣りスタンスは相手を受け入れ易いし、守備がしやすく、よい関係を生み易い。

相手との距離感、パーソナル・スペースへの介入の仕方の善し悪しは、サポーターづくりに多いに関係する。

隣に座る距離感を訓練してみるとよい。しかし、いきなり近づいたら、嫌われる。また、いただくだけの人も嫌われる。心の入口と出口に挨拶とありがとね、は欠かせない。

レジリエンスは個人にとどまらず、企業、地域、国家にも広がっている考え方である。

子供のためのレジリエンスを研究していらっしゃる深谷和子氏は、レジリエンスは、親が子供に準備してやりたい「最大の自己資産」とおっしゃっている。

今年の夏休み、サポーターの人々への心添え、我が心、友の近くにありやなしや、ひとり静かにサポーターの棚卸し、こっそり訓練、をしてはいかがだろうか。
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