医療や生活環境の向上で長生きはできそうだが、介護、健康保険、年金等と長生きに伴う不安材料は
つきない。
勤め人の定年は給料が入らなくなる事を意味するから、年をとっても自分らしく生活するために、
ライフプランを作ることは賢いことだ。
三途の川は金次第と聞くが、三途の川に行きつく前にお金のハードルで躓きかねない。
定年延長を見据え、高齢社会を豊かに生きるためのライフプラン

ブルーオーシャンを泳ぐ高齢者に

渡部昇一氏が書いた、『 財運はこうしてつかめ』という本多静六の開運と蓄財の秘術なるものを読んだ
ことがある。行き当たりばったりの我が人生を振り返り、その違いに目を丸くした。計画は早いに限る。
ライフプランがソフト、とすると衣食住に関わる暮らし方はハードだ。ライフプランの練り直しは
困難な年齢に至っても、暮らし方には希望がありそうだ。

年齢を重ねるマイナス面は多い。
一方、自分にとっての本当の幸せを見いだす時でもある。
その幸せを担保するものは丁寧な暮らし方にある。
平々凡々の日々の暮らし方にその人の生き方、美学が詰まっている。小さな努力の積み重ねが
大きな差として現れるのが高齢期の生活である。

暮らし方とは、朝起きて、夜寝るまで、何を、いつ、どんな風に料理し、食べ、何を話し、何を着るか
等々を言う。
定年後、連れ合いとの不協和音の多くはこの暮らし方に原因がある。こうあってほしいという希望と
現実の違いは苦しみにもなる。 互いの平和な着地点を見つけなければ、幸せは遠い。
アクティブなシニアであれば、継続が組み込まれた暮らし方の成果として、知らぬ間にブルーオー
シャンに出る、という事も可能だ。

世界新記録達成!100歳女性スイマーにみる『継続の力』

この道一筋、という勲章をもらう方々でなくとも、ごく普通の人が、“続ける”ことで“成功”を手に
することができる。なぜなら、競争相手はどんどん脱落していくからである。活動が限られることで、余計なことはしなくなるが、時間と知恵は増える。若い時には不可能であったことが、高齢でこそ可能になることがある。

その一例が100歳の女性スイマー、100m、世界新記録達成、である。
マスターズの日本記録一覧なるものを眺めた。18才から100才以上まで、5才刻みでグループ分けされ、競技種目ごとのタイムがわかる。
自分が記録を意識せず、ボーっと泳いでいる時間と比べると、いかにすごいかがわかる。

人口比が違うとは言え、100才以上のクラスでは男性は皆無だが、女性は50m自由形から200m背泳まで9種目に記録保持者がいる。
そもそも1500m自由形を100歳以上のクラスの人が1時間以上泳ぎ続けること自体が驚きである。まさに脱落者を尻目に勝ち抜いたわけだ。
年を言い訳にせず新しい事に挑戦し、トレーニングを習慣化し、泳ぎ続けた賜物である。
彼らが続けてこられた要因にはその年なりの知恵があるからだろう。
知恵とは、生き易さの手法を持っていることである。

貝原益軒は“養生訓“の中で年齢について次のように述べている。 
人生は50歳くらいにならないと血気がまだ不安定で、知恵も出ないし、昔から今までの歴史的な
知識にもうとく、社会の変化にもなれていないので、間違った言も多く、行いに後悔することが
しばしばである。人生の道理も楽しみも知らない。

50歳にならないで早世することを夭という。これは不幸短命といわなければならない。長生きすれば楽しみ多くそれだけ益も多い。これまで知らなかったことを日々に知り、月月にいままで不可能であったことも可能になる。だから学問知識の進歩発達は、長生きしなければ得られないのである。それゆえに養生の術を実践し、いかにしても天寿を保って50歳をこえ、なるべくはもっと長生きして60歳以上の寿の域に到達すべきである。
と続き、全編具体策に満ちている。
現在ならここに10歳位は追加することが適当であろう。自らの実践を表した書物である。

世界記録達成の女性を含め前向きな高齢者に学ぶことは次の3点である。

① 自分の到達点を決めないこと
② 死ぬまでやり続けると決めること
③ その日の暮らし方が生き方を決めること

高齢社会を豊かに生きるキーワードは、人よりほんの少し努力することと丁寧な暮らし方、である。
益軒先生のごとくはいかないが、少なくとも清潔な家と服、好みのものに囲まれ、食すことを楽しみ、
身の丈にあった、生き方と暮らし方が乖離しないことが個人的な望みだ。
普通のおっさんやおばさん、爺さん婆さんとして、暮らし方の成功者の幸せをかみしめたいものだ。
悠遊と静かな海で。
  • 1

この記事にリアクションをお願いします!