車を運転する人はガソリンを入れなければならない。いつ給油するかは人により違う。身近な人々の行動を分類すると次の3タイプになる。
①一定の残量になったら満タンに給油する
②残量警告灯の赤ランプがついたら給油する
③残量警告灯の赤ランプがついてもギリギリまで走らせてから給油する。
計画性と想像力が欠落していく順番でもある。
あなたはいつガソリンを入れる? 危険感受性:危険敢行性による4タイプ

警告の受け取り方を左右する危険感受性と危険敢行性

③のケースを常習するタイプに至っては、場合により事故の原因になったり他人に迷惑をかける危険性が高くなる。その行動習慣は交通関係のICカードやクレジットカードの引き落とし口座の残高とも関連しているのではないか、要らぬ想像をする。一事が万事、ということもある。

ところが、4番目という人がいる。まるで気がつかないタイプがいるのだ。そもそもガソリンの残量など気にせず走りだすという天才だ。ある日ガス欠に至り、恐怖の時間を体験する。ガス欠事件で夫は彼女のチェック機能の欠落に気づいた。ガソリン残量の確認は夫の仕事となり現在まで事なきを得ている。 

なぜ、人により警告の受取り方や対処が違うのだろうか。
交通心理学を専門とする蓮花一巳先生は、危険感受性と危険敢行性を物差しに次のように行動を分類されている。



①安全確保行動 
危険感受性が高く、危険敢行性が低いタイプ。危険を敏感に感じ、その危険をできるだけ回避する傾向が強い。 

②限定的安全確保行動
基本的に危険を回避する傾向があるため結果として安全が確保される確率が高い。 通常では危険を逃れ得るが、状況の危険に対応して回避しているわけではないため、特殊な危険事態や複雑な状況には対応しきれない。
警告が出たから、給油、する。

③意図的危険敢行行動
危険感受性、危険敢行性ともに高いタイプ。危険を敏感に感じとっていても、敢えて危険を避けようとせず、危険事態に入り込んでいく。
危ないチャレンジャー。

④無意図的危険敢行行動
危険感受性が低く、危険敢行性が高いタイプ。危険に対して鈍感であり、かつ危険を避けようとしない。

リクスマネジメントは“普通とは違う”ことに気づくことから

現在、ある企業で労働安全衛生マネジメントシステム導入のお手伝いをしている。導入の過程で、個々の立場、年齢、経験、人間関係が行動に影響することを踏まえるとともに、危険に対する感受性と敢行性から個人を捉える事も重要だと感じる。 

いくら安全教育を行い、リスクアセスメントでリスクの見積りをしたところで、③のタイプが、もうちょっといけるさ、と危険に突入、では効果が薄い。危険突入タイプが高度な教育を受けて来た人物かどうかは別なのが悩ましい。

決め手は“気づき”と“イマジネーション”だ。具体的には手順教育とリスクアセスメントになるが、個々の危険感受性、危険敢行性に違いがあると認識しておくことだ。

車の運転、習い事、ゴルフの習得と、上達には正しい手順や型を身につけることが基本。手抜きをしない行動を自分の手足に“課する”ことが訓練になる。コツとは特別なことではなく、“正しい”ことだ。正しさは本質から出ている。

正しい手順を身に付けると“普通とは違う”ことに気づくようになる。普通との違いに気づくことは危険の芽を見つけること。同時に、安全や健康といった幸せの芽を見つける感度も高まっていると考えれば、面倒なリスクアセスもちょっと楽しいではないか。③④のタイプは奥さんの髪型が変ったこと、部下の顔色の悪さに気づくだろうか。

メンタルヘルスの義務化等、企業の安全配慮への責任は増すばかりである。戦後の家族制度の崩壊、雇用社会化の現実。人の支え方が変ってきた。東北の自然災害においてさえ、企業の安全配慮義務を問われるケースもある世の中だ。企業はますます義務を尽くしたことの証明を求められる。

あなたの部下に、プライベートの車のガソリンの給油基準を聞いてみよう。組織の恐るべきリスク感度マップができるかもしれない。
気づく人間になること、気づこうと努力すること。気づかないばかりに生死を分けることもある。日々の生活の中に“New!”を見つけ、感度をあげよう。そして、正しく。

奥さんの髪型が変わったのに気づきましたが? NOという方、危険の芽でないことを祈る。
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