自然の移ろいは途切れることがない。花が咲くことも散ることも、すべてがプログラミングされている。 
人の世界も卒業の涙から新学期、新入社員の笑顔へと、季節が巡っている。

芽吹く季節に誘われて、こちらも何か始めたくなる。しかし、決心をしたものの、決心したことも忘れていつの間にやら立ち消え。これを何度繰り返してきたことか。
 
振り返れば、3日坊主が団体になってこちらを向いてニンマリしている。英会話の勉強のために買ったテキスト、テープ。たくさん捨ててきた。教材を変えたところで、上達するわけでもないのに。
継続がもたらすもの

継続できないワケ

それでもなんとか残っているのは水泳だ。 
「クロールをノンストップで1000m、週2回」のワンパターンだが、長年続けてきた。一度3年間中断したことがある。再開した時は、手足は自分のもののようではなく、25m泳いだだけで息が切れた。ワンパターンでも続ける威力を身に浸みて感じた。

 人間の決心の継続は自動的にはプログラミングされていないらしい。継続しているものもあれば、やめてしまうものもある。その決め手は何だろうか。


 ひとつは、やり方を知らないことである。泳ぎは息継ぎの仕方が分かるとグーンと進歩する。水中ウオーキングを繰り返しても泳げるようにはならない。正しいやり方を知ることである。

 もうひとつは、継続する方法がわからないことである。
子供の頃は試験勉強を始めようとすると、爪を切りたくなったり、掃除をしたくなる。そのため時間が押して、「明日まとめて集中だあ」などとやっていた。 
いまだに、間々本題に入る前に道草の誘いがかかる。しかし、今はその行動に自覚症状がある。


 行動科学の世界では、ある目標を達成しようというターゲット行動に対し、この誘惑をライバル行動という。試験勉強や英会話の勉強にしても、習慣になっていないものは、スタートにエネルギーがいる。

 継続したいと思う行動には2つのパターンがある。
それは、不足している行動を増やすパターンと過剰になっている行動を減らすパターンである。英会話の勉強は、不足行動の典型である。勉強時間の不足を増やそうとする行動だ。休肝日を作って過剰になっているアルコールを減らそうとする行動は過剰行動である。

 継続することで何を得たいのかという目標、つまりターゲットを明確にし、その目標達成にはいずれの行動が必要かを明らかにする。継続しようとする2つの行動を阻むものが、前述した誘惑というライバル行動である。ライバル行動の特徴は、簡単に願いが叶うことだ。

例えば「勉強の前に爪を切る」はすぐ目標が達成でき快感が得られる。何時その効果がでるのが分からない英会話の勉強に比べたら、楽である。
過剰行動においても、ライバルはいる。休肝日に、親友からの誘いが入り一杯やってしまう。もともと好きなアルコール。友とアルコールという2倍の快感を得られる。

継続の決め手

行動科学では、継続の決め手を強い意志ではなく、行動に着目する。不足か過剰になっている行動を増やす、減らすということでコントロールする手法だ。

 英会話の勉強を例にとれば、「不足している勉強時間に対し、どのように学習を行うか」となる。様々なライバル行動に対して、勉強時間を増やす工夫が必要だ。
車の中にテープを常備して運転しながら聴く。フレーズのカードを持ち歩き、隙間時間で呟く、など“スグデキル”、“タノシイ”または“ヤラザルヲエナイ”環境にする。
自分の行動パターンをよく分析した上で対策をたてることが肝要だ。

 何かを継続しようと思ったとき、不足行動・過剰行動・ターゲット行動・ライバル行動という4つの視点で行動を整理するだけで、希望が見えてくる。是非とも知っていたい。


 3年前からコアトレーニングを始めた。当初は体がグラグラとして情けなかった。週1回30分という僅かなレッスン時間でも、徐々にできなかった事ができるようになる。他人には見えないだろうが、確実に自分の中に蓄積するものを感じる。
 中古の筋肉だって、変わる。繰り返し、体に浸み込ませることで自分をコントロールできるようになる。 

 思考にも同じことが起こる。とオグ・マンディーノ氏は言っている。
人間の成功は、知識の多さや努力の積み重ねによるものではない。では、何か。それは習慣であるという。 

 氏の“地上最強の商人”は“続けること、くり返す思念”を体感する1冊である。
始まりの季節にお薦めする。

繰り返し読むという行為がもたらすものが、何か。読み終わったあなただけが、その答えを感じることができる。
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