コラム・対談・講演録
『あの若手はどうして辞めないのか 変わる社会と変わらない若者の本音』古屋 星斗 (著) (朝日新書)
書籍・本 紹介/レビュー
「うちの若手は何を考えているかわからない」「静かな退職という言葉が気になるが、実際どう向き合えばいいのか」。そうしたモヤモヤを抱える人事担当者やマネジャーは多いのではないか。本書は、この問いを鮮やかに反転させる。「なぜ辞めるのか」ではなく「なぜ辞めないのか」を問うのである。
著者は本書のまえがきで「離職に不思議の離職あり。定着に不思議の定着なし。」と述べている。会社に残っている人には、これまで理由を聞く必要がないとされてきた。しかし在職と納得は同じではない。著者が目を向けさせたいのは、離職の理由ではなく「定着の理由」である。
そこで問われるのが、「Z世代」というくくりで若者を語ることの危うさだ。多様化・多極化が進んだ職場では、平均値で語られる若者論はもはや実態を捉えきれない。「今どきの若者は」という嘆きは古代から繰り返されてきたが、安定を求める本音そのものは、実はさほど変わっていないのではないか。著者はこの「変わらない若者」と「変わる社会」のギャップに、いまの職場の摩擦の根源を見出す。
統計データと現場ヒアリングをもとに、「静かな定着」(約35%の若手が該当し、納得しつつも積極的に理由を語らない層)という新たな概念を提示し、離職防止の議論に一石を投じている。全世代のマネジメントに応用できる「12の辞めない理由」を示している点も見逃せない。
【書籍基本情報】
『あの若手はどうして辞めないのか 変わる社会と変わらない若者の本音』
著者:古屋 星斗
発行:朝日新聞出版
発売日:2026年7月13日