HR総合調査研究所が、正式内定日の10月1日を前に、2013年9月17日~30日にかけて実施した「インターンシップに関するアンケート調査」の結果をもとに、各企業の実施状況について報告する。有効回答は210社。

インターンシップを実施した中小企業が倍増

「インターンシップに関するアンケート調査」結果報告

まずは2015年卒採用を視野に入れたインターンシップの実施状況について見てみる。
 企業規模により実施状況はかなり異なる。大手企業(1001名以上)では6割近い企業がインターンシップを実施しているのに対して、中堅企業(301~1000名)では31%、中小企業(300名以下)では24%にすぎない。ただし、注目すべきは中小企業における実施企業の増え方だ。昨年実施企業は13%(今年は取りやめた2%を含む)だったのに対して、今年から実施した企業が13%と倍増している。インターンシップの実施にはそれなりの労力や時間を要するため、これまでは大手企業主体でしたが、中堅企業はもとより中小企業にまですそ野が広がってきていることが分かる。これまでのように、インターンシップは学生のキャリア支援のための協力といった側面だけではここまでの広がりはあり得ない。明らかに採用を念頭に置いてのインターンシップになるだろう。入社後のミスマッチ防止はもちろんのこと、とにかく学生に自社のことを少しでも知ってもらう機会を創り出そうとしているものと推測される。

図表1:2015年新卒採用を視野に入れたインターンシップの実施状況

中堅企業では1Dayインターンシップが3割も

「インターンシップに関するアンケート調査」結果報告

ではインターンシップの形態はどんな特徴があるのだろうか。
 インターンシップの期間を中心に複数のタイプから選んでもらったところ、最も多かったのは正課の単位認定の対象となる条件になることが多い「2週間」で38%、次いで経団連が倫理憲章賛同企業に求めている「1週間(5日間以上)」の31%だ。この傾向はこれまでの調査ともさほどの変化はない。
 注目すべきは「1日」、いわゆる1Dayインターンシップの実施状況である。全体では19%にとどまっているが、企業規模別に比較してみると、中堅企業では30%、特に非メーカーでは38%にも達している。ちなみに大手企業でにおける1Dayインターンシップの実施状況は7%にとどまる。倫理憲章に配慮したものといえる。

図表2:実施したインターンシップのタイプ

メーカー、非メーカーで異なるプログラム内容

「インターンシップに関するアンケート調査」結果報告

インターンシップの中で実施されているプログラム内容を比較してみると、企業規模による差よりも、メーカー・非メーカーによる差が大きくなっています。メーカーで最も多いのは「社員の補助的な業務の体験」で57%に上るのに対して、非メーカーでは21%に過ぎません。一方、非メーカーで最も多いのは「課題を与えてのグループワーク」で実に67%に上るのに対して、メーカーでは17%に過ぎず、実施しているプログラムとしては最下位です。メーカーの場合、技術系の受け入れ割合が多く、専攻と関係している業務であればゼロから教える必要もなく、補助的な業務を任せられるということでしょう。

図表3:インターンシッププログラムの内容

受け入れ人数は20人未満が7割

「インターンシップに関するアンケート調査」結果報告

インターンシップに受け入れている学生の人数はどうだろうか。大企業、中堅企業でも20人以下という企業が6割以上、中小企業にいたっては8割以上に及ぶ。1~2週間にわたって職場に学生を入れるとなると、そんなに多くの学生を受け入れることは難しいことは容易に想像がつく。
 一方、中堅企業の1割は100人以上の学生を受け入れ、大企業にいたっては4%とはいえ1000人以上の学生を受け入れている企業がある。明らかに半日~1日の1Dayタイプでしか到底無理な数字である。2016年卒採用から採用スケジュールが後ろ倒しになることを考えると、学生との早期接触機会の創造を目的に、「インターンシップ」とは名ばかりのこの手のものが増えてきそうである。

図表4:インターンシップ受け入れ人数

募集ルートの主体はキャリアセンターと就職ナビ

「インターンシップに関するアンケート調査」結果報告

インターンシップの募集方法を聞いたところ、「大学キャリアセンター」(45%)、「就職ナビ」(41%)の2つが他を引き離している。「大学キャリアセンター」経由の場合には、キャリアセンターによるマッチング後に紹介してもらう場合と、直接応募してもらう場合がある。大学によっては、経団連が規定する「5日以上」「採用と関係しないこと」を条件にする場合もあるが、特に制約を設けずに情報を募集している大学も多いので、ぜひ問い合わせをしてみてほしい。
 企業規模別で見た場合、大学との関係が希薄な中小企業は「大学キャリアセンター」(38%)よりも「就職ナビ」(45%)を利用する割合が高くなっている。
 これまで採用情報の基本掲載契約企業に対して、無料サービスとして提供されてきたインターンシップ募集情報の掲載であるが、今後は有料化されることもありえそうだ。2016年卒からの採用スケジュール後ろ倒しに伴い、これまで12月1日に公開されてきた就職ナビの公開も3月に変更となる。就職ナビ運営企業からすれば、3月まで売り上げが立たないことになってしまい、この間に新たなサービスによる収益構造を考えざるを得ない。「就職ナビ」による募集に依存している企業は、予算化も予定しておいた方がよいだろう。

図表5:インターンシップの募集方法

学生募集に苦戦する中小企業

「インターンシップに関するアンケート調査」結果報告

では、学生の応募状況はどうか。大手企業と中堅企業では学生は「集まっている」とする企業がともに8割以上になっているが、中小企業では「集まっている」企業は6割超にとどまっている。また、中小企業では「大いに苦戦している」とする企業も1割ある。インターンシップを新しく始めた企業が多く、募集方法が手探りの面もあるだろうが、採用募集と同じくインターンシップ募集においても、学生の大手企業志向は強くなっているようだ。大学キャリアセンターに寄せられるインターンシップ募集情報でも、学生の関心度には明らかな差が出ている。中小企業は、他にはないユニークなインターンシッププログラムを打ち出していく必要がありそうだ。

図表6:インターンシップへの学生応募状況

「選考とは一切関係ない」は本当か?

「インターンシップに関するアンケート調査」結果報告

インターンシップと選考の関係を聞いたみた。学生に選考と関係あることを明示して募集している企業は、大企業で10%、中堅企業で5%、中小企業で13%とまだまだ少数派である。ただ今後、選考直結を謳うインターンシップは増えることはあっても、減ることはないだろう。大企業では皆無だったものの、選考と関係があることを明示せずに募集している例が、中堅・中小企業では複数見られた。中堅で19%、中小企業で17%と無視できない数字である。
 「選考とは関係がないが、結果として応募者が採用に結びつく割合が高い」とする企業は、大企業では45%と突出して高くなっている。この中には、インターンシップで優秀だと判断された場合には、採用募集段階、あるいは選考段階で特別な対応をした結果ということが多く含まれていそうである。優秀と判断された学生だけを集めた別のインターンシップやセミナーなどを実施する企業は多いと聞く。
 「選考とは一切関係がない」とする企業が4~5割程度あるが、果たして本当だろうか。経団連のインターンシップの規定によれば、採用とは完全に切り離し、インターンシップを通じて入手したデータを採用活動で利用することは禁じられている。セミナー告知にすら利用してはいけないのである。そんな企業はどれだけあるのだろうか。

図表7:インターンシップと選考の関係

受け入れ態勢とプログラムがハードルに

「インターンシップに関するアンケート調査」結果報告

インターンシップを実施していない企業に対して、インターンシップ実施にあたって懸念される点について聞いてみた。
 多かった意見は「現場での受け入れ態勢」(66%)、「学生にさせるべき仕事内容」(63%)、「学生に対応する人手不足」(57%)などである。「採用に役立つのか疑問」の23%を大きく上回る。採用にはきっと役立つのだろうが、態勢づくりやプログラムが問題だということなのである。今後、採用支援会社によるサービス内容によっては、インターンシップは一気に広がる可能性を持っているといえる。

図表8:インターンシップ実施に向けての懸念点

まだまだ開発余地のあるインターンシッププログラム

次に、インターンシップの具体的な内容について見てみよう。

・技術者を中心に受け入れているが、テストや分析等を体験し、ものづくりの楽しさ、厳しさを学んでもらっている(機械)
・技術系は施工管理職体験(10日間)、事務系は事務系職種の体験(5日間)(建築・土木・設計)
・実際の業務を経験してもらっている。社内の雰囲気や仕事の内容について理解を深めてもらった方が採用につながった場合に入社後のアンマッチが少なくて済むため(電機)
・開発技術系は、社内のメカ・制御・ソフト・販売技術をすべて浅く広く5日間と、専門分野で担当と3日間にわたり一緒に仕事をしてもらう(機械)
・1週間で完結できる程度の課題を与え、社員のアドバイスの下で、学生に取り組んでもらった(輸送機器・自動車)
・CADを用いての設計業務。工場においての加工や組立業務体験(鉄鋼・金属製品・非鉄金属)
・部品の製図から実際の加工、加工後の部品の検査、検査データの分析、品質管理までの一連の流れ、実作業(精密機器)
・都内店舗見学、新店舗立ち上げ業務の理解、新業態開発業務体験、先輩社員との交流(フードサービス)
・8日間のうち、6日間の講義・グループワークと2日間の現場経験(現場実習・営業同行)(旅行・ホテル)
・デイサービスでのレクリエーション実施、夏祭り参加(医療・福祉関連)
・社内の主要職場の仕事内容、実現できること、社員が実際にやってきたことなどを説明。商品(番組)の制作現場の見学・説明など(マスコミ関連)
・1日目:会社説明、管理部門業務の説明、2~5日目:営業同行研修(夕方は報告書作成とグループワークの取り組み)、6日目:午前中はグループワークのまとめ、午後は社員を前にグループワークの発表会(商社)
・営業社員との同行、提案書作成、システムへの入力業務等(情報処理・ソフトウェア)
・レジ補助、商品出し、清掃他(百貨店・ストア・専門店)
・音楽教室の認定講師対象に実施している研修会の見学と、生徒募集用折り込みチラシの作成体験(教育)

施工現場や店舗のある企業でのインターンシップはイメージしやすいが、セキュリティが厳しくなってきている現在、職場におけるインターンシップはいろいろな制約が多い。社外でも可能な課題解決型プログラムなど、いろいろと知恵を絞る必要がありそうだ。

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年9月17日~30日
有効回答:210社

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