HR総研:働き方改革に関するアンケート 結果報告8割以上の企業が「働き方改革」に取り組む、「働きがい」効果は3割未満に

今回は、「働き方改革に関するアンケート」の結果を報告する。
労働力人口の減少や働き方の多様化が進む日本社会において、以前から労働力不足の解消を目的として企業に求められてきた「働き方改革」。昨年4月より、「残業時間の上限規制」(中小企業は2020年4月)や「年5日間の年次有給休暇の取得」など、働き方改革関連法の一部が施行され、今年4月からは「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」(中小企業は2021年4月)も施行される。「働き方改革」は大企業だけでなく中小企業においても重要な経営課題として対応を迫られている。
本調査では、「働き方改革全体の取組み状況」、「時間外労働の是正」「年次有給休暇取得の推進」、「テレワークの導入」の4テーマを軸として、企業の取組み状況や得られた効果、取り組むにあたっての課題等について調査した。各企業の最新動向についてフリーコメントを含めて以下に紹介する。

<概要>
●8割以上の企業が働き方改革に取り組む
●「有給休暇の消化促進」「残業時間の削減」は高い実施率、効果を得る企業は6割以上
●大企業の8割が従業員の意見を「把握できている」、企業規模に比例
●大企業・中堅企業の8割が「残業時間の削減」に取り組むも、中小企業では未だ5割
●「残業時間の削減」による削減コストは「人材育成への投資」が4割
●8割以上が「年次有給休暇の取得推進」に取り組む、大企業・中堅企業では9割
●「年次有給休暇の計画的取得」は大企業・中堅企業の9割に効果あり
●年次有給休暇取得推進の課題は「人員不足」が半数、中堅・中小企業では「従業員の意識の薄さ」を懸念
●「テレワーク導入」は大企業で7割に迫るも、中小企業では2割未満
●テレワークの導入による新たな課題は「不公平感の解消」「適正な労務管理」など
●テレワーク導入企業の8割近くが「新型コロナ対策としてテレワークを活用」
●「時間と場所」に関する働き方改革の「働きがい」効果は3割未満、従業員の意見反映がカギか

8割以上の企業が働き方改革に取り組む

働き方改革全般に関する「取り組み状況」について、「積極的に取り組んでいる」が34%、「一部、取り組んでいる」が48%、「取組みを検討中・予定中」が13%、「取り組む予定はない」が4%などとなっている(図表1-1)。全体では「取り組んでいる」(「積極的に取り組んでいる」と「一部、取り組んでいる」の合計、以下同じ)は82%で、既に8割以上が何らかの取組みを実施していることが分かる。
また、企業規模別に見ると、「積極的に取り組んでいる」とする企業の割合は企業規模に比例して高くなっており、大企業では62%、中堅企業では30%、中小企業では22%となっている(図表1-2)。また、「取り組んでいる」とする企業は、大企業と中堅企業では9割を超え、中小企業でも7割を超えており、昨年調査結果と比較すると、大企業では「積極的に取り組んでいる」とする企業の割合は昨年値(42%)から20ポイント上昇しており、特に大企業における法改正に合わせた働き方改革への取組みが中小企業に先んじて加速していることがうかがえる。

【図表1-1】「働き方改革」への取り組み状況
【図表1-2】企業規模別 「働き方改革」への取組み状況

「有給休暇の消化促進」「残業時間の削減」は高い実施率、効果を得る企業は6割以上

働き方改革推進に向けて「実施している取組み」については、大企業では「有給休暇の消化促進」が95%で最多であり、次いで「残業時間の削減」が83%、「多様な勤務時間の導入」が64%などであり、中堅企業では「有給休暇の消化促進」が98%で最多であり、次いで「残業時間の削減」が93%、「女性活躍の推進」が50%と続いている。大企業と中堅企業の取組みは、時間と場所に関する働き方改革がメインであり、それに加えてダイバーシティの推進に繋がる取組みにも注力していることがうかがえる(図表2)。一方、中小企業では、「有給休暇の消化促進」が77%で最多であり、次いで「残業時間の削減」が73%などとなっている。これら2つの取組みは中小企業の7割以上で実施されているが、それ以外の取組みはすべて4割未満の実施率となっており、大企業や中堅企業との温度差が浮き彫りとなっている。

※実施率:取組みを実施している企業の割合 [%]

次に、実施している取組みの中で「効果の出ている取組み」については、いずれの企業規模の企業においても実施率が上位2つに入る「有給休暇の消化推進」「残業時間の削減」は、効果が出ている企業の割合も企業規模に関わらず高くなっており、6割以上で効果が出ていることが分かる。そのほかの効果が出ている取組みについては、大企業では「女性活躍の推進」(実施率43%)が67%であり、中堅企業では「高齢者雇用の促進」(実施率26%)が73%、中小企業では「高齢者雇用の促進」(実施率13%)が70%となっており、決して実施率が高いとは言えない取組みについても、実施している企業の中では効果を得られている企業の割合が高いことが分かる。これらの取組みについては、今後、効果を得ている企業の事例を生かした形で取組みを実施する企業が増加することが期待される。

【図表2】企業規模別 働き方改革に関して「実施している取組み」と「効果の出ている取組み」

中堅・中小企業では「管理職の強いコミットメント」「経営層の理解と強い推進力」に強い課題感

「働き方改革の推進における課題」については、大企業では「業務量に対する適正要員の不足」が50%で最も多く、次いで「目指すゴール・方針・指標の明確化」と「管理職の強いコミットメント」がともに41%などとなっている。中堅・中小企業ではこの傾向と異なり、中堅企業では「管理職の強いコミットメント」と「経営層の理解と強い推進力」がともに52%で最多であり、次いで「一般社員の強いコミットメント」が45%などとなっており、中小企業では「管理職の強いコミットメント」が49%で最多であり、「経営層の理解と強い推進力」が47%、「一般社員の強いコミットメント」が44%などとなっている。これらより、中堅・中小企業では、「働き方改革推進」に対する経営層や管理職によるリーダーシップの発揮と一般社員まで含めた全社員の意識改革に対して、大企業より強い課題感を持っていることがうかがえる(図表3)。

【図表3】企業規模別 働き方改革の推進における課題

大企業の8割が従業員の意見を「把握できている」、企業規模に比例

「働き方改革に対する従業員の意見の把握」については、「十分把握できている」とする企業は大企業と中堅企業では見られず、「ある程度把握できている」については大企業では77%、中堅企業では62%となっている。また、中小企業では「十分把握できている」が8%で、「ある程度把握できている」は49%となっている(図表4-1)。これらより、企業規模に比例して「把握できている」(「十分把握できている」と「ある程度把握できている」の合計、以下同じ)は高く、大企業では8割、中堅・中小企業では6割前後となっており、従業員が多い大企業の方が中堅・中小企業より従業員の意見の把握ができているという傾向が見られる。一方で、わずかではあるが、中小企業では「十分把握できている」とする企業が8%存在しており、従業員が少ないという中小企業のメリットを生かして従業員の意見を把握している企業もあることがうかがえる。

【図表4-1】働き方改革の推進に対する従業員の意見の把握
では、把握した意見を働き方改革の推進に上手く反映することができているのだろうか。
「(従業員の意見を)把握できている」とする企業に対して「働き方改革に対する従業員の意見の反映」について聞いたところ、大企業では「反映できている」(「効果的に反映できている」と「まあまあ反映できている」の合計)は65%で、中堅企業では55%、中小企業では57%などとなっており、企業規模による大きな差異はなく、5〜6割が従業員の意見を反映できていると認識していることが分かる。(図表4-2)。

【図表4-2】働き方改革の推進に対する従業員の意見の反映

大企業・中堅企業の8割が「残業時間の削減」に取り組むも、中小企業では未だ5割

次は、「労働時間短縮のための取組み」をテーマとして、取組みの有無を聞いたところ、全体では「(労働時間短縮のための取組みが)ある」が66%で、「ない」が34%となっている(図表5-1)。
企業規模別に見ると、「(取組みが)ある」とする企業の割合は、大企業では77%、中堅企業では87%、中小企業では52%となっており、大企業と中堅企業では8割前後の高い割合で取り組まれていることが分かる。この傾向の背景には、昨年4月から働き方改革関連法の一部が施行され、中小企業以外の企業に対して「残業時間に罰則付きの上限規制」の適用されたことが影響していると推測される。ただし、今年の4月からは中小企業にも同様に「残業時間に罰則付きの上限規制」が適用されることから、今後は、企業規模に関係なく積極的な取組みが広がっていくことが期待される(図表5-2)。

【図表5-1】労働時間短縮のための取組みの有無
【図表5-2】企業規模別 労働時間短縮のための取組みの有無

大企業・中堅企業では「ノー残業デーの設定」「残業の事前届出制、許可制」の実施率が5割以上、効果は企業規模によりばらつく

時間外労働(残業)削減に向けて取り組んでいる企業が「実施している施策」は、大企業では「ノー残業デーの設定」が56%で最も多く、次いで「フレックス・スライド出勤制度」が53%、「残業の事前届出制、許可制」が50%などとなっており、これら上位3項目は中堅企業でも同様に実施率が高く、特に「残業の事前届出制、許可制」(68%)、「ノー残業デーの設定」(63%)に取り組む中堅企業が多いことが分かる。また、中小企業では「残業の事前届出制、許可制」が47%で最多であり、次いで「管理職の意識変革」が38%、「フレックス・スライド出勤制度」が34%などとなっている(図表6)。
各企業規模において比較的実施率の高い施策の中で「効果の出ている施策」を見てみると、大企業では「フレックス・スライド出勤制度」が63%であり、「残業の事前届出制、許可制」が61%、「ノー残業デーの設定」が60%となっており、いずれも6割の企業が効果を得ていることが分かる。中堅企業では「フレックス・スライド出勤制度」が78%、「残業の事前届出制、許可制」が67%、「ノー残業デーの設定」が52%となっており、中小企業では「フレックス・スライド出勤制度」が67%、「残業の事前届出制、許可制」が44%、「管理職の意識変革」が10%となっている。前述したように、中小企業の働き方改革推進における課題として「管理職の強いコミットメント」を挙げる企業が最も多い中、やはり時間外労働の削減においても、まずは管理職の意識を高めることが必要と考える企業が多いものの、人手不足感が強く、「残業が当たり前」としてきた世代が多いであろう中小企業の管理職層の意識を変えることは容易ではなく、管理職層の意識変革に苦戦している企業が多いことがうかがえる。
一方で、「ICTによる業務削減」に取り組んでいる中小企業の割合は低いものの、取り組んでいる全ての企業で効果を得られているという結果も出ている。このように中小企業だからこそ取り組めば効果を得やすい施策もあり、ICTを活用して働き方改革を推進するとともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の波に乗るきっかけを作ることもできるのではないだろうか。

【図表6】時間外労働削減に向けて「実施している施策」と「効果の出ている施策」

「残業時間の削減」による削減コストは「人材育成への投資」が4割

このように「残業時間の削減」に関して効果を得ている企業は、削減されたコストをどのように活用しているのだろうか。
最も多い活用方法は「人材育成への投資」で38%となり、次いで「従業員への直接的な還元」が29%、「内部留保」が27%などとなっている(図表7)。
「残業時間の削減」により、従業員にとってはプライベートな時間が増える反面、企業の業績を維持拡大するためには、短時間で効率的かつ効果的に業務を行うことが従業員に求められている。したがって、企業は従業員の労働生産性を上げるために「人材育成への投資」を行うことが自然な流れであると推測される。一方、「従業員への直接的な還元」は、残業代が得られなくなった従業員により生まれ得るハレーションを抑えるための一時的な対応としては理解できるが、企業の成長に繋がる対応とは言えない。「残業時間の削減」の効果を有効活用し、いかに企業のさらなる成長に繋げるのか、今後、従業員も一緒になって真剣に考えていく必要があるのではないだろうか。

【図表7】「残業時間の削減」で浮いたコストの活用方法

昨年度の従業員の平均年次有給休暇の取得率50%以上は半数未満

つづいてのテーマは「年次有給休暇の取得推進」である。
まずは実態を把握するため、「昨年度の従業員の平均有給休暇取得率」を聞いてみると、「50〜70%未満」と「30〜50%未満」がともに26%で最も多く、次いで「70〜100%」(18%)などとなっており、有給休暇を50%以上取得している企業の割合は、46%と半数未満にとどまる現状にあることが分かる(図表8-1)。
また、企業規模別に「有給休暇を50%以上取得している企業の割合」を見ると、大企業では41%、中堅企業と中小企業では48%となっており、いずれも半数未満となっている(図表8-2)。大企業においては「不明」が26%あるが、大企業の場合には、HRビジネスパートナーとして事業部担当の人事の割合が高く、企業全体の数値を把握できていないことも少なくない。

【図表8-1】昨年度の従業員の平均年次有給休暇取得率(概算)
【図表8-2】企業規模別 昨年度の従業員の平均年次有給休暇取得率(概算)

8割以上が「年次有給休暇の取得推進」に取り組む、大企業・中堅企業では9割

年次有給休暇の取得推進のための取組みが「ある」とする企業の割合は85%で、残業時間の削減より多くの企業が取り組んでおり、昨年調査時(77%)より8ポイント増加している(図表9-1)。
また、企業規模別に見ると、大企業と中堅企業では9割以上が取り組んでおり、中小企業でも8割近くが取り組んでいる状況にある(図表9-2)。これもやはり、昨年4月からすべての企業に対して、従業員の年間5日間の有給休暇取得が義務化されたことによる影響が大きいのではないだろうか。
このように、年次有給休暇の取得推に取り組む企業では、どのような施策が実施され、どのような施策が効果を得られる傾向にあるのだろうか。

【図表9-1】年次有給休暇の取得推進のための取組みの有無
【図表9-2】企業規模別 年次有給休暇の取得推進のための取組みの有無

「年次有給休暇の計画的取得」は大企業・中堅企業の9割に効果あり

年次有給休暇取得を推進している企業の取組みについては、大企業では「年次有給休暇の計画的取得」が70%で最多であり、「年次有給休暇の計画的取得率の目標設定」が49%などとなっており、中堅企業でも上位2項目は同じで、「年次有給休暇の計画的取得」が82%「年次有給休暇の計画的取得率の目標設定」が27%となっている。一方、中小企業では「年次有給休暇の計画的取得」(65%)が最も多いのは大企業と中堅企業と同じであるが、それ以外の取組みは、いずれもさほど多く取り組まれていないことがうかがえる(図表10)。

最も多く取り組まれている「年次有給休暇の計画的取得」について、その効果を得ている企業の割合は、大企業では90%、中堅企業では89%といずれも9割に上り、中小企業でも72%となっており、非常に高い効果が得られていることが分かる。また、大企業と中堅企業で実施している取組みとして2番目に多い「年次有給休暇の計画的取得率の目標設定」については、大企業では57%、中堅企業では67%と6割前後の企業が効果を得ているようである。

【図表10】年次有給休暇取得推進のために「実施している施策」と「効果の出ている施策」

年次有給休暇取得推進における課題は「人員不足」が半数、中堅・中小企業では「従業員の意識の薄さ」を懸念

年次有給休暇取得を推進する中で見えてくる課題について、全体では「業務量が多く人員が不足している」が50%で最多であり、次いで「休んだ人の業務をカバーする体制がない」が37%、「従業員の計画的な年休取得に対する意識が薄い」が28%などとなっている(図表11-1)。
企業規模別に見ると、いずれの企業規模においても「業務量が多く人員が不足している」が最も多く、大企業では53%、中堅企業では50%、中小企業では48%などとなっており、半数の企業の従業員が「休みたくても休んでいる暇がない」という状態にあることが分かる(図表11-2)。また、「休んだ人の業務をカバーする体制がない」がすべての企業規模において3割程度あり、2番目に多い課題となっている。加えて、中堅・中小企業では「従業員の計画的な年休取得に対する意識が薄い」も3割程度となっており、大企業より従業員の意識改革が進んでいないことがうかがえる。

【図表11-1】年次有給休暇取得推進における課題

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:HR総研:「働き方改革」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2020年2月28日〜3月6日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者、採用担当者、人事全般担当者
有効回答:194件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
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