「科学的管理法(Scientific Management)」とは、20世紀初頭にテイラーが提唱した管理手法の一つです。テイラーの主張した科学的管理法の原理は、

1.課業管理、
2.作業の標準化、
3.作業管理のために最適な組織形態

の3つからなります。作業に関する基準作業量と、基本的な手順を合理的・科学的な方法で定め、管理者の下で計画的に遂行されることによって、生産性を最大化し、能率的に作業をすることによって、コストの削減に繋がります。

当時のアメリカはその場しのぎの成り行き経営や組織的怠業などから、労使の対立や互いの不信感などが発生し、問題となっていました。

そこで、テイラーとその仲間たちは、作業についての客観的な基準を作り、管理体制を構築し、生産性を増強、労働賃金の上昇に繋がり、お互いの信頼関係の構築に繋げ、さらなる生産性の向上へと繋がっていくのではないかと考えました。

この手法の中核となるのは、課業の設定で、テイラーは、一日に作業完了な仕事量をノルマとして設定するという概念を導入しました。

ノルマを達成した者には、賃金を割り増しして支払い、そうでない場合は、規定の最低賃金のみを支払うというシステムで、労働意欲を高めることにより、組織的怠業の根絶を図りました。

さらにテイラーは、この課業を客観的に設定するため、作業工程を細分化し、各動作にかかる時間をストップウォッチで計測し、標準的な時間を割り出す、「時間研究」という技法を考案し、課業管理を行いました。

また、生産管理における指揮・監督を工場内の職長、いわゆる現場に任せていましたが、これを「計画」と「執行」に分離し、新たに計画管理の部署を作り、職能別組織の原型を構築しました。

この科学的管理法は、当時、能率増進運動の中で、さまざまなエンジニアが、作業能率の向上を研究していましたが、その中で最も体系化されていたのがテイラー考案の技法で、テイラーシステムとも呼ばれています。

またこの指導理念をテイラーイズムということもあり、現代のマネジメントの原点で、経営学や経営管理論、生産管理論の基礎のひとつにもなっています。

テイラーの科学的管理法が広く知られるようになったきっかけは、1910年のアメリカで起きた鉄道運賃率事件で、さまざまな議論が飛び交う中、テイラーの技法が注目されました。そこで、この技法について、アピールするための名称がないことに気付いたテイラーの弟子たちは、テイラーがよく「科学的」という言葉を使用していたため、「scientific management」と呼ぶことになったと言われています。

また、この技法は、労働者を命令を受けて作業するだけの機械のように扱っているとされ、心理学や社会学の見地からの考察が無く、人権侵害に繋がるとして、多くの人に批判を受けました。こうした批判は、後の学者や経営者の努力で改善がみられ、現在の経営学の発展に繋がっています。