「ギャップイヤー(gap year)」とは、学生が大学への入学前、在学中、卒業後に就職するまでなどの時期に、留学やインターンシップ、ボランティアなどの社会体験活動を行うため、大学が猶予期間を与える制度です。

gapは「隙間」を意味する英語で、学生が社会に出るまでの間に、いわば人生のインターバル期間となる隙間をつくり、高い教育的効果が期待できる留学や社会体験活動を行えるようにするものです。イギリスで始まった制度ですが、欧米では習慣として根付いており、最近ではアメリカのオバマ前大統領の長女、マリアさんが、ハーバード大学への入学前に1年間のギャップイヤーを取るというニュースが日本でも話題になりました。

諸外国で行われているギャップイヤーの形態はさまざまです。イギリスのように、大学は関与せず、学生が自主的に資金調達や留学やインターンシップなどを企画する「大学非関与型」もあれば、アメリカなどの一部の大学のように、学生の自主性を尊重しながらも大学が活動プログラムの提供を行う「大学プログラム型」も見られます。

2014年6月に文部科学省が公表した「学事暦の多様化とギャップイヤーを活用した学外学修プログラムの推進に向けて(意見のまとめ)」によると、イギリスでは全学生の6%がギャップイヤーを利用し、自主的に3~24ヵ月間、留学やインターンシップなどの社会体験活動を行っています。また、ギャップイヤーを経験した学生は、未経験の学生に比べて、就学後のモチベーション、企画力、忍耐力、適応能力、時間管理能力がいずれも高くなっているなど、高い教育的効果が上がっていると報告されています。

日本では、これまでなじみのなかった制度ですが、現在では、いくつかの大学で、入学前・直後に数ヵ月から1年間、自主的な体験活動の期間を設けて学生を支援する日本版ギャップイヤーの試みが始まっています。とはいえ、なかなか利用が広がらないのが現状であり、学生の「就職活動で不利になるのではないか」という恐れが一因だとの指摘もあります。

一般的に留年・休学はネガティブなイメージを持たれがちですが、ギャップイヤーは空白期間ではなく成長の機会と捉え、社会全体で評価し、ポジティブなイメージに転換していくことが、今後の日本版ギャップイヤーの拡大につながると考えられます。