経済的支援のほか、“働く時間の自由度”が高い制度を継続的に運用
ナリス化粧品は、働きやすい環境の整備に関して「経済的支援と空気感の醸成の両方が大切」と考えており、社員一人ひとりの声に耳を傾け、制度改定の材料として継続的に制度更新を行っているという。1996年に「全社禁煙」、1999年に「婚姻後の旧姓使用の許可」などの制度を取り入れるなど、社員の細かな困りごとを解決する施策も実施してきている。中でも、社員の困りごとや希望を、上司を通さず人事部門に直接申告できる「自己申告制度」の活用を30年以上継続しているという。また、同社ではこうした取り組みに加え、両立支援に関する取り組みも行っているが、中でも2012年4月に実施した施策は大きな改革となったという。具体的には、3ヵ月以上の育休を取得した社員が復職する際に、就学前の子ども1人に対し月額2万円を支給する「復職支援金」制度を開始。さらに同社は、「時短勤務」の期間を子どもが小学校を卒業するまでに延長するなど、複数の取り組みを開始した。特に、法定(3歳まで)を大きく上回り小学校卒業時まで利用できる時短勤務制度は、社員から最も支持される制度となっているという。
こうした制度運用の結果、制度改革前の2012年3月末と比較すると、2023年3月末時点で社員の女性比率が38%から57%、女性管理職比率は19%から38%に。また、女性管理職のうちの“ママ社員比率”は21%から48%と大きく伸長し、それぞれ約2倍に増加したという。
人的資本経営に関心が高まる中、女性管理職比率などを可視化し公表する企業も増えている。ナリス化粧品では30年以上前から両立支援の取り組みを実施し、社員の声を反映し更新を重ねてきたというが、今回取り組みの成果が数値として反映されたことで、社内外に与えるインパクトも大きいだろう。今後、従業員の両立支援施策に注力していきたい企業は、こうした先行事例を参考にしてみてはいかがだろうか。