総合1位は資生堂。「ジョブ型人事制度」や「女性リーダー研修」の実施で女性活躍を促す
2022年4月より「改正女性活躍推進法」が施行され、女性の活躍を促す取り組みを行う企業も増加傾向にある。日経BPが発行する女性誌「日経WOMAN」は1988年の創刊時より、企業の女性活用度を不定期に調査しており、今回で21回目を迎えたという。2023年の調査時点では、女性の活躍を推進するために各企業でどのような取り組みが行われているのだろうか。なお、本調査では「働きがい」と「働きやすさ」という2つの観点から、企業における女性社員活用の実態を「1.管理職登用度」、「2.女性活躍推進度」、「3.ワーク・ライフ・バランス度」、「4.人材多様制度」の4つの指標で測定および採点し、ランキング化している。
2023年の調査で「女性が活躍する会社」の総合ランキング1位となったのは「資生堂」で、2位が「アフラック生命保険」、3位が「高島屋」となった。
資生堂は、2022年の調査でも総合1位となっており、2年連続で首位をキープしている。同社は2021年より、美容職と生産技術職を除いた全社で「ジョブ型人事制度」を導入した。また、若手が多様なロールモデルと触れる機会を増やすために「キャリアメンタリング制度」を導入したという。その他にも、女性リーダー研修や、女性役員と女性社員のメンタリングプログラムなどリーダー育成機会を設定しており、2023年の女性管理職比率は37.6%、前年比0.3%アップだったとのことだ。
2位のアフラック生命保険では、社長自らが「ダイバーシティ推進委員会」を率いて、女性管理職の道すじを作っている。2022年より、女性管理職候補のキャリア形成を役員が直接支援することで早期昇進を目指す、「スポンサーシップ制度」も導入した。2022年の女性管理職比率は25.3%で、8年連続で上昇しているとのことだ。
3位の高島屋は、女性の平均勤続年数が26年3ヵ月と、男性の23年5ヵ月を上回っている。さらに、男女問わず仕事と育児の両立支援を展開し、育児中のキャリア醸成にも注力してきた。女性管理職比率は近年30%前後を維持し、男性育休取得率は3年連続で100%を達成したという。
「女性管理職登用度」の高い企業では、積極的な研修や育成プログラム等を実施
同調査では、総合ランキングに加え、「管理職登用度」、「女性活躍推進度」、「ワーク・ライフ・バランス度」、「人材多様性度」の4つの部門に分けてランキング化している。このうち「管理職登用度部門」では、女性役員数や管理職に占める女性の割合を評価した。同部門の1位は、総合ランキングと同様に資生堂だった。同社では、2017年より部門長や管理職の候補者などを選抜し、「女性リーダー育成塾」を開講している。2021年には「次期役員候補者向けの選抜研修」も新設し、これまでに累計90名が昇格しているとのことだ。
2位にはメットライフ生命保険がランクインした。同社では、役員や管理職の採用選考や後継者育成計画にて、公平な数の女性候補を含めるよう社内ガイドラインを制定。グローバルで実践的な研修を提供しているという。
3位は高島屋とパソナグループが並ぶ結果となった。高島屋は、グループ会社を含め生え抜きの女性取締役が6名いるという。一方のパソナグループは、「女性幹部候補の育成プログラム」を2014年に導入し、修了生67名のうちグループ会社社長2名、執行役員22名を輩出しているとのことだ。
「女性活躍推進度」部門1位の企業では、育成プログラムやキャリア研修を取り入れる
続いて、「女性活躍推進度部門」では、女性活躍における専任組織の有無、女性社員向けの研修制度などを評価している。同部門の1位は、イオンと大和証券グループだった。イオンでは、2022年に「女性経営者育成プログラム」を新設し、グループ各社から選抜された約20名が、社内外の女性経営者による講話や役員とのメンタリングを約10ヵ月間学んでいる。女性管理職比率は、近年30%前後を維持しているという。
同率1位の大和証券グループは、4ヵ月間にわたるキャリア研修と社内SNSにより、ネットワーキングやロールモデルとの出会いなどによるキャリア形成をサポートしている。これにより、職制転向する女性社員が増えたことで活躍の場が拡大し、2022年度の女性管理職比率は大和証券単体で19.9%、グループ全体で16.9%となり、いずれも前年比を超えたとのことだ。
「ワーク・ライフ・バランス部門」上位の企業では男女ともに育休取得率が高く
続く「ワーク・ライフ・バランス度部門」では、年間総労働時間や有給休暇取得率、男女社員の育休取得率などを採点している。1位は「日本生命保険」で、2013年から10年連続で男性の育休取得率が100%を達成しているという。取り組みの強化により、産後早期(8週以内)の育休取得は、2019年の約6%から、2022年には約30%まで上昇したとのことだ。
2位は明治安田生命保険だった。同社は、地方にいながら東京本社の業務を行える「リモートワーク制度」を導入し、全国で42名の社員が活用している。また、3年連続で男性の育休取得率は100%を達成したようだ。
3位は住友生命保険と第一生命ホールディングスが並んだ。住友生命保険は、2022年度入社の総合職から、社員が希望する勤務地に沿って配属や育成を行う、「メンバーシップ型」に「ジョブ型」の要素を絡めたハイブリッドな制度に転換したという。
一方の第一生命ホールディングスでは、2022年度から男性育休取得社に最大20日間の有給を付与するなど長期取得を推進している。2022年度の男性育休取得率は100%、平均育休取得日数は22日だったとのことだ。
「人材多様性度部門」上位の企業では、結婚・出産を経ても社員が定着
最後の「人材多様性度部門」では、女性社員の比率や勤続年数など定着率を評価しており、あわせて障がい者雇用率やLGBT理解促進の施策もチェックしている。1位はアフラック生命保険で、正社員の平均勤続年数に男女差がほぼないという。女性正社員の56%が既婚者で、ワーキングマザーは約41%となっている。
2位は東京海上日動火災保険で、女性正社員の50%が既婚者、ワーキングマザーは36%とのことだ。あわせて、新卒入社3年後の在籍率も90%と高い水準となっている。
3位は資生堂と三井住友銀行が並んだ。資生堂は、女性正社員の54%が既婚者で、47%がワーキングマザーだという。また、障がい者雇用率は2022年にグループで2.65%、資生堂で4.18%と、法定雇用率の2.3%を上回ったとのことだ。
一方の三井住友銀行では、女性正社員の55%が既婚者で、41%がワーキングマザーだ。啓発イベントを行うなど、LGBTに関わる取り組みも積極的とのことだ。
同部門の上位には、性別や年齢、障がいの有無に関わらず、誰もが長く活躍できるよう、ワーク・ライフ・バランス施策や両立支援制度拡充などのサポート体制を充実させている企業がランクインした。