企業もこのような傾向を受けて「働きやすさ」を前面に出した制度や仕組みを整えつつあります。
残業をしない商社の話や男性の社長自ら育児休暇を取った会社の話をマスコミで聞いたことがある人も多いと思います。
トップが率先垂範で、それらの制度を活用し、「働きやすさ」を実現している企業ばかりなら良いのですが、現実には、

 ・有休の取得率が低い。簡単には休めない。
 ・夜遅くまで頑張る人が優秀だと思われている。
 ・上司が帰っていないのに、帰ることはできない。

等、「人事がやっている施策なんか、画に描いた餅」だと思われている会社が多いのも事実です。
これでは、優秀な人材を引き留めることはできません。

従業員の仲が良く、業績に向かって一体感もあり、コンプライアンスも守られ、社会的にも貢献している実感を持つことができている・・・
それが働きやすい組織のイメージではないでしょうか。
組織文化を測定する項目として、弊社では次のような価値観を置いています。

 ・協調の価値観(コミュニケーションのこと。一致団結して何かに取り組む等)
 ・挑戦の価値観(チャレンジのこと。改革のような大きなものから日々の創意工夫など小さなものまで)
 ・貢献の価値観(社会貢献、お客様貢献、上司・仲間への貢献など)
 ・共通基盤(会社の体制や仕組み、働く環境の良し悪しなど)

つまり、「健全な組織文化」の醸成が「働きやすさ」も作っていくのではないでしょうか。

また、ILO(国際労働機関)では、「ディーセント・ワーク」(日本語では「働きがいのある人間らしい仕事」と訳されている)を活動の主目的においています。
その戦略目標としては、

 1.仕事の創出 - 必要な技能を身につけ、働いて生計が立てられるように、国や企業が仕事を作り出すことを支援。
 2.社会的保護の拡充 - 安全で健康的に働ける職場を確保し、生産性も向上するような環境の整備。社会保障の充実。
 3.社会対話の推進 - 職場での問題や紛争を平和的に解決できるように、政・労・使の話し合いの促進。
 4.仕事における権利の保障 - 不利な立場に置かれて働く人々をなくすため、労働者の権利の保障、尊重。

の4つがあります。これらは、働きやすさを実現する土台のようなものではないでしょうか。
みずほ総研の調査では、ディーセントワークに対する取り組みと正社員の平均勤続年数に相関があったそうですが、非上場企業を対象にした同様の調査では、相関がみられなかったそうです。
(みずほ総研「ディーセントワークと企業経営に関する調査研究事業報告書」)

ディーセントワークの考え方は、弊社の分類でいえば、共通基盤に相当します。
その上にある協調、挑戦、貢献の価値観が高い組織ほど働きがいのある、長く働ける組織になるのではないでしょうか。
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