平成の30年間には、リーマンショックを筆頭に大小さまざまな事象が起こり、採用・雇用や労働のあり方が変化した。本講演では、人事領域の各種研究に取り組む日本人材マネジメント協会の活動をもとに平成を振り返り、いまなお残されている問題や、わが国の人材マネジメントをより良くしていくためのヒントを探る。
リーマンショックの影響から考える「令和の人事」―平成の“失われた30年”に起こった変化と残された問題は何か

日本人材マネジメント協会・雇用システム研究会と『雇用・労働の平成史』

(独)労働政策研究・研修機構 主任研究員 藤本 真氏

日本人材マネジメント協会は、人材マネジメント世界連盟の日本における代表団体として、20年以上に渡って活動しています。多彩なメンバーが研究活動に取り組んでおり、研究会の数は16個(2022年8月時点)に及びます。

そのうちの1つである「雇用システム研究会」では、日本の雇用システムの成り立ちや歴史に関する書籍・論文などを通じて、実務家と研究者が月1回程度のペースで議論・意見交換を実施しています。2022年9月の研究会発足時に取り上げた書籍は、草野隆彦氏の『雇用システムの生成と変貌─政策との関連で─』(2021年/労働政策研究・研修機構)で、同書では1991年までの事象が取り上げられています。

今回解説する『雇用・労働の平成史』は、私が『WEB労政時報』に連載(2019年6月~12月/計12回)したもので、『雇用システムの生成と変貌』以降にあたる1989年~2019年の、まさに平成における雇用・労働の歴史をまとめたものとなっています。雇用システム研究会では2023年3月~6月に、全5回に渡って取り上げました。

平成の30年間は、バブルの崩壊後、経済停滞が続いた時代です。日本では、明治後半以降に100年近くかけて、企業コミュニティを中核とする経済・社会の運営体制、日本型雇用システム・雇用慣行などが形成されてきました。しかし、このシステムに対しては、「男性の成年・壮年社員が中心であり、それ以外の人たちが活躍する余地は少ない」、「ワークライフバランスに対する配慮にも欠ける」といった疑問が平成期に呈されるようになりました。

企業や政府は、平成期にこうした綻び・不備を繕うために様々な取り組みを模索し、実施しました。「大きな変化へとつながる可能性が随所で見られた時期」といえます。とりわけ「雇用・労働」は、「平成」という時期の特徴が最も顕著であった領域の1つで、また当協会の多くのメンバーが深くコミットメントしている領域でもあります。さらにこの先の日本社会のあり方について考える材料が豊富にある領域です。

その研究の成果の一端をご報告するのが今回のテーマです。

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