アルバイト従業員による不適切な動画投稿が社会問題化している。「バイトテロ」などと称されるこのような行為の影響で、店舗が休業に追い込まれるケースも発生しているようである。なぜ、このような問題が発生するのだろうか。
なぜ、アルバイト従業員は不適切な動画を投稿するのか

繰り返されるアルバイト従業員の不祥事

「バイトテロ」とは、大手飲食店やコンビニエンスストアで働くアルバイト従業員が店内で不適切な行為を行い、その様子を撮影してSNS上に投稿して炎上する現象を指す造語である。実は今から6年ほど前の2013年頃にも、同様のトラブルが社会問題化したことがあった。

当時も結果的に多くの店舗が、休業、廃業に追い込まれ、不適切な投稿をした従業員に対し、損害賠償を求めるケースまで発生した。数年の時を経て再び、飲食店や小売店で同様の問題行動が発生し始めたというわけだ。

ただし、大きく異なる点が一つある。それは、数年前は多くが「静止画像」の投稿であったのに対し、今回は「動画」が投稿されている点である。そのため、不適切な行動の一部始終が、よりリアルに社会に拡散される結果を招いている。

“社会に出た自覚”がない若者たち

こうした事態が繰り返される大きな原因の一つとして考えられるのは、アルバイト従業員本人に“社会に出た自覚”が欠如していることであろう。

一般的に、アルバイトとは社会経験の未熟な学生などの若者が、社会に出て「職業生活」を営む行為である。従って、学生でありながら“社会人”という立場をも併せ持つことになるのが、アルバイト従業員の特徴のである。

社会人の行動には大きな責任が伴う。この点はアルバイト従業員であっても変わりがない。そのため、学生同士であれば笑い話で済むような悪ふざけも、社会人のとった行動として見た場合には、悪質極まりない、決して許されない行為となる。そこには、倫理上はもちろんのこと、司法上の責任さえ問われる、大きな社会的責任が存在するのである。

そのためアルバイトをする若者には、「学生生活や私生活」と「職業生活」を明確に区別して行動することが求められる。つまり、本来論で言えば、アルバイトとは、決して“学生気分”で行ってはいけない社会活動なのである。

にも関わらず、アルバイトをする若者がこの点を正しく認識しないまま仕事に就くと、“学生気分”で友達同士で行うような悪ふざけに及んでしまい、結果、今回のような“幼稚な不祥事”が行われるわけである。

では次に、この問題を解決する具体的方法について考えてみよう。

アルバイト従業員に対する「ビジネスマインド」の教育を

まず前提として、従業員教育には、“知識”教育と“意識”教育の2種類がある。

前者は、「仕事に必要な知識やスキル」を身につけるための教育のこと。これに対し後者は、「仕事に対する好ましい考え方」を身に付けるための教育である。

たとえば、スーパーやコンビニエンスストア等の小売業であれば、「商品の種類を教える」、「レジの打ち方を教える」、「清掃の仕方を教える」などの行為は、“知識”教育に当たる。対して“意識”教育に該当するのは、「社会人に求められる“責任感”を教える」、「“コンプライアンス”を教える」、「職場での“協調性”を教える」などといった行為だ。

社会人に必要な「仕事に対する好ましい考え方」のことを「ビジネスマインド」と言うが、社会経験の未熟な若者がアルバイト生活を営もうとする場合、この「ビジネスマインド」の教育、つまり“意識”教育が必要不可欠になるわけである。

しかしながら、現実におけるアルバイト従業員に対する教育は、“知識”教育偏重の傾向が強いようである。つまり、「レジの打ち方」は教えるが、「社会人に求められる責任感」は十分には教えられていないのである。そのため、若者が「仕事に対する好ましい考え方」を身につける前に、現場へ投入されてしまうこととなる。

「レジは打てるけれど、考え方は子供のまま」というような人材を職場へ配置するのだから、問題が起きても不思議ではない。

もちろん、だからといって現在、多発しているアルバイト従業員の不適切な行動は決して容認されるものではない。問題行動を起こした本人たちが厳しく責められるべきであることは、言うまでもない。

再三、述べるが、アルバイト従業員に対しては採用時にはもちろんのこと、採用後も継続的に「ビジネスマインド」を指導する“意識”教育を実施する必要がある。

若者の吸収力は大きく、適応力も高い。もしもアルバイトの現場に「ビジネスマインド」の教育がしっかりと定着すれば、アルバイト学生が、今よりもさらに思いもよらぬ強力な戦力へと化けるかもしれない。
コンサルティングハウス プライオ
代表 大須賀信敬
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)

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