秋から冬にかけて増えてくる“冬季うつ”。貴重な人材を手放さないために、職場での対応はどうすべきか、「キャリア・ビオトープ」の観点から考えてみたい。
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“冬季うつ”とは?

社員のメンタルヘルス対策に苦慮する企業は多いが、“冬季うつ”というものがあるのをご存知だろうか。

“冬季うつ”は正確には、「季節性感情障害」と言われる、季節性のうつ病で、秋から冬にかけて、「倦怠感」や「意欲の減退」、「集中力の低下」などの“うつ症状”が見られるものである。

これは日照時間が短くなることにより、自律神経のコントロール不調や、脳内における「セロトニン トランスポーター」というタンパク質の量が著しく変動することが、大きな原因であると考えられている。

しかし私の経験上、“冬季うつ”は、職場や社会環境にも原因があると思われる。

10月、11月頃になると年末へ向けて、職場にも何かと慌ただしさが出てくるし、退職者や、入社者もしくは入社予定者が多くなる時季でもある。さらには、翌4月からの次年度へ向けての準備も始まる。

世間的には、ハロウィーンやクリスマス、忘年会、そして正月、新年会などのイベントも多くなる。これらを当然楽しみにしている人もいるが、個人によっては、素直に楽しめなかったり、参加への強迫観念に駆られたりするものである。

そういった中、職場への悪影響も出てくる。秋口までは普通に元気そうだったのに、秋が深まるにつれ、そして冬になるにつれ、元気のなくなる社員、意欲の減退する社員、ミスが多くなる社員、休みがちになる社員はいないだろうか。

“冬季うつ”は、一般的な「うつ病」ほど、顕著に症状が現れず、周りが気づくことも少なければ、本人にもその自覚がないことも多い。また、春が近づくにつれて、自然と治ってしまうため、より一層気づきにくい。

ところが、毎年周期的に起こるため、年々、症状が悪化していくケースも少なくない。

毎年、冬になると、“何となく“疲れているだけではないかと感じながらも、徐々に症状が重くなっていき、そのうち業務に支障をきたしたり、最終的には、長期欠勤や退職という事態まで起こりかねないのである。

“冬季うつ”の対処法

“冬季うつ”の具体的な対策としては、以下のようなものがある。

(1)日光に当たる時間を多くする
日照時間の減少が原因の一つであるから、出来るだけ日光の当たる場所で過ごす時間を多くする。職場の照明を明るくすることも一つである。

(2)軽い運動を行う
日光の当たる屋外で、ウォーキングなどの軽い運動を行う。または、明るい屋内で軽いストレッチなどを習慣化する。これらによりドーパミン(感情をコントロールする神経伝達物質)を分泌し、脳を活性化させることができる。

(3)“冬季うつ”に強い食事を摂る
セロトニン(感情のコントロールや精神を安定させる神経伝達物質)の生成に必要な「トリプトファン」が多く含まれる食品(肉、魚、大豆などのタンパク質)を過不足なる摂取できるようにする。

以上、ここまでは個人的に行えることだが、職場全体として、以下のようなことにも気をつけるとよい。

(4)職場内メンバーのスケジュールや職務内容、進捗状況を、より一層共有していく
一人で仕事や悩みを抱え込むと、どうしても“季節うつ”になりがちである。秋から冬にかけては、より一層、職場内メンバーのスケジュールや、職務内容、進捗状況を、お互いに把握し、共有し合うようにする。

(5)職場でのイベントへの参加を強制しない
以前と違い、多様な価値観を持った社員が多く存在するようになった。そのため、職場での忘年会や新年会、またクリスマスパーティーなどのイベント参加を強制しない、あるいは、参加を強制されていると感じさせない配慮が大切だ。参加して楽しみたい社員には楽しんでもらい、“冬季うつ”傾向のある社員には、その時間を自分の時間に使ったり、休養してもらうほうが、職場全体にとってはよい。

当シリーズのテーマである「ビオトープ」の重要な点の一つは、「多孔質な空間」である。秋から冬の間にも、積極的に「多孔質な空間」を設けることで、“冬季うつ”を招く原因を排除し、快適な職場環境を形成したい。


オフィス・ライフワークコンサルティング
社会保険労務士・CDA 飯塚篤司