企業側から働きかけるメンタリティマネジメントの実践ポイント

メンタリティマネジメントのポイントは、企業側から従業員に働きかけ、積極的にメンタルヘルスやモチベーションを管理していく姿勢だ。たとえば、「メンタルに不調をきたした従業員のために休職制度をととのえる」といった対策の取り方は、受動的な姿勢にとどまっていると言える。これに対して、たとえば、2015年12月の労働安全衛生法改正により50名以上の事業場において全従業員に行うことが義務化されたストレスチェックなどは、積極的なメンタリティマネジメントのひとつだ。

また、「働き方改革」の実践として注目を集めている「長時間労働の是正」もメンタリティマネジメントにつながってくる。長時間労働とストレスに関する研究(Virtanen 2012)によると、長時間労働は、収入などに関係なく、うつ病をはじめとした精神疾患のリスクを高めるとされている。長時間労働の是正は、「働き方改革」の観点からも、第一に実践すべき事項だと言えるだろう。

そのほか制度面では、福利厚生制度の充実も有効な方法のひとつだ。従業員のモチベーションを向上させる観点から、記念日休暇や1カ月以上のサバティカル休暇(一定期間の勤務をした労働者に付与される長期休暇)を設ける企業も増えてきている。

制度以外の面としては、管理職の対応方法も重要になる。まずは問題を捉える際に、「こういう症状があるからうつ病だ」「統合失調症だ」などと判断を下すのではなく、「勤務状況が不規則で周りに迷惑をかけている」「仕事に集中できていない」など、具体的に職場にどのような問題が生じているかといった視点で考えることが大切だ。この際、「勤怠状況」「事故やミス」に着目すると、問題が見えやすくなるとされている。
さらに、メンタルヘルスに問題を抱えた従業員の話を聞くことにもテクニックが必要だ。管理職側から尋問するだけでなく、相手によく話してもらい、時にはうまく聞き流して相手に安心感を持たせながら、情報を得ていくことが重要になる。管理職対応については、メンタルヘルスケアに関する研修を行うことで、知識や技術を身につけていくことが必要になるだろう。

企業の人事担当者は、制度面をととのえるとともに、従業員への対応面でも対策を取ることで、メンタルヘルスやモチベーション管理を行っていく必要がある。現場の状況を正しく把握しながら、具体的な実践を積極的に行っていくことが期待されるだろう。
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