HR総合調査研究所(HRプロ)が6月末から7月はじめにかけて行った調査で、入社前教育の実施状況と目的を聞いてみた。大雑把に言うと、約7割の企業が入社前教育(内定者研修)を実施している。入社前教育が常識化しているようだ。
入社前教育から見る「教え」の傾向

インターネット・携帯電話の普及と入社前教育

ただ過去において入社前教育は常識ではなかった。1980年代では「入社する4月1日まで悔いのないように遊べばいい」と話す人事担当者が多かった。その趣旨は「入社したらみっちり鍛えるから遊ぶ暇はない。遊びは学生のうちに済ませておけ」というものだったと思う。
 入社前教育が常識化していく背景に、インターネットや携帯電話の普及があったはずだ。1990年代末まで学生への連絡は郵便物が主流だったし、すべての学生が携帯電話を持っていたわけではない。そういう時代の連絡は手間がかかり、即時性にも欠けていた。2000年代に入り、インターネットと携帯電話が普及すると、連絡がきわめて簡単になった。その頃から入社前教育が増えてきたように感じる。

マナーから逸脱している過剰なビジネス用語

入社前教育の形式は、集合研修と課題・レポート提出がともに約5割で多い。集合研修を実施した上で、その成果や感想を提出させる企業が多いのだろう。
 内容を見ると、もっとも多いのはビジネスマナーだ。マナーは型であり、振る舞い方。言葉の使い方もビジネスマナーに含まれる。就活でも敬語の使い方を重視しており、入社前教育でも教えているのだろう。
 新入社員や若手社員からもらうメールの文章を読むと、頭が痛くなることが多い。「いつもたいへんにお世話になっております」などの実態を反映していない無駄な言葉が多く、「確認させていただきました」と過剰敬語が目立つ。
 たぶん就活や入社前教育での教え方が悪い。マナーは適切に使うものであり、過剰であればマナーから逸脱する。ところが形式的にマナーを教えるので、過剰に丁寧にすることがマナーだと勘違いする。
 教育担当者はビジネスマナーの内容を吟味して欲しいと思う。

この記事にリアクションをお願いします!