労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」が、平成27年12月1日に施行された。労働者数が50人以上の事業場に対して、常時使用する労働者に対して心理的負担の程度を把握するためのストレスチェックを実施しなければならない。
この法改正はもとより、「健康経営」なる言葉も生まれている現在においては、労働者の健康状態について企業はより一層の注意を払う必要がある。以下、年々増加していると言われている精神疾患による休職者に対する企業の対応等について解説する。
精神疾患による休職者への対応について

休職の意義
まず、休職制度の意義について労使ともに理解が必要だ。
休職とは一般に「就業規則などの社内ルールに基づき、何らかの理由(私傷病や精神疾患等)により就業が不能になった際、会社の命令により、職場に在籍したまま一定期間の労働義務の免除をする制度」である。

本来、労働契約とは「労働に対する正当な対価を払う」ことであるので、労働者には健康な状態で働く義務がある。
「休職」とは、労働者の病気などの理由を考慮して「ゆっくり休んで元気になって戻ってこい」と会社が命令しているにすぎないことを、就業規則などで規定して休職者によく理解してもらう。
つまりは、会社の命令により休職となるから「精神疾患等により働けない」と労働者が主張しても、会社は休職を「させなければならない」ことはなく、あくまでも会社の恩恵的な処置であることを従業員には説明する必要がある。

休職開始の際の注意点
休職を希望する者は、所定の様式にて休職を希望する旨等を会社に申し出るとともに、私傷病の状態が休職事由に該当することを証明する(=医師の診断書等)ことが求められる。また、提出された書類をもとに会社が休職を命じたあと、休職者は治療に専念しなければならない。

原因の調査
就業規則上の休職命令とは他に、(精神疾患が休職の原因であれば)精神疾患の原因調査を可能な限り行うことも重要だ。休職前に大きな心理的ストレスを受ける業務上の出来事(納期切迫による強い心理的負荷、パワハラやセクハラ等)がなかったか、残業時間はどのくらいだったか、職場での人間関係に関してトラブルはなかったかなど、上司・部下・同僚等の関係者から事情をヒアリングする。原因調査は復職のタイミング・業務、配置転換、退職などの判断の際に有効となるし、なにより今後の対策には欠かせない。

休職中である休職者へのコンタクト
休職者の病状はどうか、治療に専念しているか等を報告させることもできるが、その報告がかえって心理的プレッシャーとなるケースもある。(特に、職場に対するストレスが休職の原因の場合等)病気の状態を踏まえて会社からのコンタクトは慎重に行う必要がある。休職者に無断で医師へ病状を照会するなど、独断的な行動は慎重を期す必要がある。

復職の判断
精神疾患による休職は、復職の可否をめぐってトラブルになることも多い。主治医のほか、会社が選んだ別の医師からもセカンドオピニオンを求めるなどして、復帰の可否を慎重に検討しなければならない。復帰できるほど病状が回復しない場合や本来の業務を行うことが出来ない状態であれば、労働契約の本来の趣旨からすると「健全に労務を提供できない=債務不履行」であり、契約解除(退職)の理由になりえる。しかし、精神疾患の休職の場合には感情的な対立をも招きやすいため、主治医等の意見をよく聞いて判断しなければならない。

この記事にリアクションをお願いします!