業務改善による長時間労働の削減を

先日、「政府は2016年4月をめどに、月60時間を超える残業に対する割増率について、中小企業においても引き上げる検討に入った」と報道された。
これは、割増率の引き上げにより、企業に長時間労働の削減を促し、労働者の健康障害防止や、ワークライフバランスの実現を目指すものである。
 中小企業においては、これを表面的な対策ではなく、自社の業務を改善する機会としていただきたい。業務改善は、単に残業代の問題だけではなく、企業の存続に関わる事項だからである。

 現代のように、顧客の要望が変化する時代においては、昨日価値のあったものは、今日には既に陳腐化へと向かっており、企業は変化に対応し続けなければならない。よって、企業に属する従業員ひとりひとりが、問題意識を持って自らの業務を常に見直す責任があるといえる。自らの業務に何の疑問も持たなかったり、ましてや生活残業によりムダな時間を費やしたりすることは、顧客の変わりゆく要望に背を向け、企業の存続を危うくする行為なのである。

 しかし、実際の職場においては、旧来のやり方をそのまま引き継ぎ、非効率なまま行われている業務も多い。顧客が変化しているにもかかわらず、日常の業務はそのままで良いとしている意識こそが問題なのである。

 さて、このような理由から業務改善による生産性の向上を進める必要があるが、中小企業においては、定期的な異動が難しく、人に仕事が張り付いてしまうことから、およそ効率的とはいえない方法を何年にも渡って実施している場合がある。そのような企業においては、次の手順で業務を改善することをお勧めする。

(1)実態の把握
 残業時間が多い企業においては、各人がどのような業務をどれくらいの時間で行っているか、把握が不充分であることが多いのではないだろうか。
 よって、まずは一定期間、日常的に行っている業務について、時間の流れに沿って書き上げる必要がある。
 次に、書き上げた業務について「何故、それを行っているか」と業務の目的を記入する。「今までやってきたことだから」という理由で、疑問を持たず継続している仕事も少なくないことに気づくはずである。

(2) 「捨てる」業務の明確化
 さらに、書き上げた業務について「この業務をやめればどうなるのか」を追加記入する。
 書くという行為は、客観的な視点を持たせる効果が期待できるため、今まで必要不可欠と思っていた業務が、その目的から見れば不要と判断できる場合がある。また、代替の手段により解決する場合もある。ここでの注意点は、あらゆる業務(会議、ミーティングを含む)を「今新たに事業をすれば」というゼロベースで見直すことである。
 加えて、外注により、目的を達成できる可能性も検討しておきたい。
 生産性を向上させるためには、必要性の薄い業務を「やらない」と決めることが、最も効果的なのである。

(3)代替策の検討
 必要な業務と判断した場合であっても、より効率的に行うことができないか検討する。
 その業務を行う目的や得るべき成果を中心に考えていくことにより、効率的なやり方に改善していく。必要な道具や機械があれば、積極的に検討していきたい。

 管理職の立場にある方は、これらの改善指導を日常的に行うとともに、各従業員にフィードバックしていただきたい。事前に業務改善の目的を事前に充分に説明しておくことも重要である。
 長時間労働の削減は、表面的な対策だけでは解決しない場合も多い。顧客に軸足を置いた業務改善の結果として、削減されることが望ましいであろう。


山本社会保険労務士事務所 山本武志

著者プロフィール

HRプロ編集部

「採用」「教育・研修」「労務」「人事戦略」など、人事がイマ知りたい情報をご提供します。 押さえておきたい基本知識から、最先端のニュース関連情報、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届け。

HRサミット2018 アフターレポート公開中