毎年夏になると熱中症のニュースが報じられる。
熱中症発生のピークは7月、8月であるが、約15%は5月、6月に発生している。体がまだ暑さに慣れていない時に、屋外の高温多湿な環境で作業をしていたり、屋内であっても火を使う作業をしていたりする場合は特に注意が必要である。
熱中症防止は早期の対策が肝心!

 職場での熱中症により、ここ近年ほとんどの年で10件以上の死亡災害が発生している。特に猛暑であった平成22年においては47件の死亡災害が発生しているのである。死亡災害が発生した業種をみると、最も多いのが建設業であり、製造業、農業、警備業が続く。特に高温多湿となる作業環境である場合は、次の点に留意した対策を実施する必要がある。

1.設備の導入、点検
 まず、暑さ自体を和らげる設備の導入を検討する。「屋根の設置」や「扇風機・冷房設備の導入」等が考えられる。休憩場所の確保や身体を冷やすことのできる設備も検討しておきたい。
 設備は設置までに時間がかかるため、余裕を持って検討しておくことが重要である。また、設置済みの冷房設備は試運転する等して、突然暑くなった場合に備えて点検しておきたい。

2.作業時間、順化時間の検討
 暑くなった場合の作業時間について検討しておきたい。高温多湿の作業場で、長時間継続して作業することは、身体に大きな負担となることから、こまめに休憩時間を設定したり、勤務時間を繰り上げたりする対策が考えられる。また、徐々に暑さに慣れるための順化期間を設けることも検討が必要だ。
 これらの対策は、労働組合や従業員代表との協議が必要となる場合も考えられる。また、就業規則の変更が必要となる可能性にも留意したい。

3.服装・水分補給
 現場においては、帽子の着用や通気性の良い服装、水分・塩分の摂取方法を指導する。水分補給については、自覚症状が出てからでは遅いため、こまめに行うことを指導する必要がある。スポーツドリンクや塩タブレットなども効果的であり、可能であれば、これらの備え付けを行っておきたい。

4.健康管理の徹底
 夏場においては普段以上に、健康管理を徹底する必要がある。健康診断での有所見者について、必要に応じて医師の意見を聴く等の対策を講じておく。
 また、睡眠不足や過度の飲酒、朝食の未摂取等も発症に影響を与えるため、日常の健康管理指導も重要だ。作業開始前に健康状態を申告させたり、顔色を確認したりすることで、体調がすぐれないままに勤務してしまわないよう、注意する。作業場の巡視も通常より頻繁に行い、発症の早期発見に努めることにも留意したい。

5.安全教育
 熱中症の症状や予防方法、救急処置等を、あらかじめ教育しておく。熱中症が発生してしまった場合でも、現場で初期に発見し、適切な対応を取れば重大事故を防げることも多い。正しい知識を身につけておくことは緊急時に大いに役立つであろう。

 熱中症の重症度が小さいうちは、めまいや立ちくらみ、こむら返り、大量発汗等の症状が現れる。重症度が大きくなると、頭痛、吐き気、嘔吐や倦怠感・虚脱感が現れる。「体に力が入らない」といった症状がある場合も要注意である。
 さらに大きな重症度になると、呼びかけや刺激への反応がおかしくなる、引きつけがある、真直ぐに歩けない等の症状が現れる。意識がないようであれば、すぐに救急隊を要請することが必要である。万が一に備えて病院・診療所の所在地・連絡先の把握や緊急連絡網の作成・周知が必要となろう。

 公的機関も5月から熱中症予防のための研修を予定しており、積極的に受講する等して事故の未然防止を図っていただきたい。
      

山本社会保険労務士事務所 山本武志

この記事にリアクションをお願いします!