HR総研人事白書によると、企業規模1001名以上の大企業ではグローバル化が課題だと約半数の企業が言っている。そして人事面での課題のトップは、「グローバル人材の育成」だ。

グローバル戦略に連動した人材戦略の明確化が第一歩

グローバル化を推進している場合の人事面での課題(青)と すでに具体的な対策が計画されているもの(オレンジ)

グローバル化を推進している場合の人事面での課題を選択してもらったところ、トップ3は「グローバル人材の育成」(40%)、「グローバル戦略に連動した人材戦略の明確化」(35%)、「グローバル人材戦略に連動した人材開発の実施」(33%)であった。 しかし、対策は進んでいるだろうか。選択した課題のうち、すでに具体的な対策が計画されているものについて聞くと、「グローバル人材の育成」は40%が17%へ、「グローバル戦略に連動した人材戦略の明確化」は35%が10%へ、「グローバル人材戦略に連動した人材開発の実施」は33%が13%へとそれぞれ大幅に下がっている。このあたりの取り組みはこれからという企業が多いのだろう。

人事担当者のフリーコメントを見ると、グローバル化対応に関してはさまざまな悩みがあるようだ。中でも目立つのは、「グローバル戦略と、連動する人材戦略が不明確」、「グローバル戦略における人材要件、ビジネス要件が不明確」、「急速に海外進出を図っているため、グローバル人材の定義が語学力優先になっている」といった定義付けの部分ができていないという問題意識である。差し迫った対応として「海外工場を設立する際の現地の労働法令に則した人事制度の構築、現地採用の強化」を急がなければならないという声もある。制度も採用も育成も、すべてを急速に行わなければならないという人事の悲鳴が聞こえてくるようだ。

ビジネスでの突破力を鍛える、海外での課題挑戦型研修

グローバル化を推進している場合の人事面での課題(青)と すでに具体的な対策が計画されているもの(オレンジ)

グローバル人材育成に関して、より包括的な「グローバルスキル研修」を実施している企業も多い。実施している企業にその内容を聞くと、「語学」(63%)が最も多く、「異文化理解」(44%)、「プレゼンテーション」(25%)、「リーダーシップ」(19%)がそれに続く。では、その効果はどうか。グローバルスキル研修実施後にスキルが向上したという実感があるかと聞いたところ、「確かに向上した」(18%)と「まあまあ向上した」(47%)を合わせると65%となり、かなり高いスコアである。ただし、「あまり変わらなかった」(23%)と「向上した実感はなかった」(12%)も合わせて3分の1以上を占めている。 人事担当者のフリーコメントを見ると、「新入社員を1カ月間、フィリピンの英語学校に派遣している」企業、「進出国・地域での現地研修」を実施している企業もある。コストはかかるが、現地研修は「使える外国語」を身に付ける近道である。

研修を実施しても大きな効果が感じられない場合は、違った角度からのプログラムも検討してみるとよいのではないだろうか。たとえば、最近、話題を集めているグローバル人材育成プログラムには、ベトナムなどの新興国でビジネス上のミッションに挑むというユニークなものがある。参加者は見知らぬ土地でいろいろな人に自分の言いたいことを伝えようと必死になり、知恵を絞りながら臨機応変に行動していく。グローバルでビジネスができるために必要な本物の力が付くという仕掛けである。ビジネスで本当に使えるスキルを磨くという観点から研修を企画したい。

短期間で見違えるほど海外に適応するという成果重視の研修とは?

新興国でビジネスを疑似体験する「ミッションコンプリートR」

「海外赴任のチャンスがあるのに、積極的に行こうとしない」、「内向き志向な社員が多い…」。昨今そんな人事担当者の嘆きが増えている。ますますグローバル化が加速する中、それに適応できる人材を育てることは、多くの企業が抱える共通の課題だ。… 続きを読む