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採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント

第62回 6月の選考開始を順守する企業は2割

ProFuture代表 HR総研所長 寺澤 康介
2016/05/24

ProFuture代表の寺澤です。

 早いもので経団連の指針による面接選考解禁まで1カ月を切りました。採用広報解禁について書いたのはつい先日のことのように思われ、あらためて今回のスケジュールの短期化を実感しています。今回は、前回に引き続き、HR総研が3月末に企業の採用担当者を対象に実施した「2017年新卒採用動向調査」の結果と併せて、同時期に楽天『みんなの就職活動日記』会員の就活生を対象に実施した「2017年卒就職活動動向調査」の結果を見てみたいと思います。

3割以上の企業でプレエントリーが前年よりも減少

  3月末時点でのプレエントリー数の状況を聞いてみたところ、全体では半数の企業が「前年並み」と回答している一方、「前年よりも多い」とする企業は16%なのに対して、「前年よりも少ない」とする企業はその倍の33%にも及びます[図表1]。「前年よりも少ない」とする企業の半数近くが「前年よりも3割以上少ない」と回答しています。プレエントリーの段階ですでに苦戦している企業の様子が浮かんできます。一方、「前年よりも多い」とする企業の内訳を見ると、そのうち4分の1の企業では「前年よりも2倍以上多い」と回答しています。
  企業規模別に見ると、「前年より少ない」とする企業の割合は、大企業では25%なのに対して、中堅・中小企業では35〜36%になるなど、規模の小さい企業での苦戦が目立ちます[図表2]。今年も依然として大手企業志向は続いているようです。ただし、大企業でも「前年よりも3割以上少ない」とする企業が2割近くあり、大企業の中でも人気・不人気の差がついています。なお、「前年よりも2倍以上多い」企業は、中堅・中小企業だけに見られ、さすがにもともとのプレエントリー数が多い大企業で「2倍以上」になるところはないようです。

8割以上の大企業がエントリーシートを活用

  エントリーシートの導入状況を見ると、全体では「webエントリーシート」32%、「紙エントリーシート」28%で、「webエントリーシート」の利用企業のほうが多くなっています[図表3]。リクルートキャリアが提供する「Open ES」の利用企業が年々増えていることも、「webエントリーシート」の増加につながっています。かつては、学生が書く「文字」を見るために、わざわざ手間のかかる「紙エントリーシート」を利用する企業のほうが多くありましたが、それよりも効率を重視する企業が増えてきたようですね。

 エントリーシートによる書類選考の有無では、エントリーシート導入企業の53%が「選考あり」としています。「紙エントリーシート」利用企業では、「選考あり」と「選考なし」は同数となっていますが、「webエントリーシート」利用企業では「選考あり」の企業のほうが多くなっています。
  企業規模別に見ると、大企業でのエントリーシート導入割合は83%に達し、「webエントリーシート」の利用が67%、「紙エントリーシート」利用企業は17%にとどまります[図表4]。エントリー数が多い企業にとっては、「紙エントリーシート」での対応よりも、「webエントリーシート」のほうが効率的ということなのでしょう。
  中堅企業でのエントリーシート導入率は65%、中小企業では48%と、企業規模が小さくなるにつれ、導入率は減少します[図表4]。エントリーシートによる書類選考を必要とするほどのエントリー数がないこと、エントリーシートによるハードルで応募者が減少することを避けたいとの思いもあるのでしょう。また、「webエントリーシート」導入企業の割合は、中堅・中小企業では23〜25%にとどまり、大企業の67%とは大きな開きがあります。

6月の選考開始を順守する企業は2割

  次に、面接選考をいつから開始するかを聞いたデータが [図表5] です。2月までに面接を開始している企業が1割以上あるのをはじめ、6月の面接選考解禁を待たずして面接選考を開始する企業が79%にも達します。中でも多いのが、「4月」に面接を開始する企業の28%、次いで「3月」が21%、「5月」が19%で続きます。面接選考解禁が8月だった昨年よりも、当然のごとく前倒しとなっています。企業の採用意欲は依然として高く、優秀人材の採用のための危機感は強く、早期化に拍車がかかっています。
  企業規模別に見ると、面接選考開始時期は大きく異なります[図表6]。大企業では「6月」とする企業も24%あり、このほか「4月」26%、「3月」と「5月」が21%と、この4カ月はほぼ均等に分かれます。開始時期が最も分散しているのが中小企業で、「6月」とする企業はわずか8%にとどまる一方、「2015年10月以前」から選考を開始する早期活動企業が8%、逆に大手の選考が落ち着く「7月」以降に選考を開始する企業が13%もあるなど、面接開始時期が分散しています。ただ、面接開始時期として最も多いのは、他の規模の企業と同様に「4月」(27%)となっています。

「面接」とは言わずに選考する大企業

  大企業では、面接選考開始は「6月」とする企業が4分の1ありましたが、あくまでも「面接」開始であり、実質的な選考はすでに始まっている企業が少なくありません。それはどういうことでしょうか? 大企業では、面接選考解禁日以前の選考には「面接」という表現を使用しないことが多いからです。学生の中には「選考」だと知らずに臨んでいるものもいるでしょう。

 大企業が「面接」の代わりに使用している表現を挙げてみると、多くの企業で使用されているのは、「面談」「模擬面接」「ジョブマッチング」「質問会」ですが、これ以外にも、

・アドバイス会 ・エントリーシート提出会 ・キャリアディスカッション
・キャリアデザイン面談 ・グループディスカッション ・プレミアムセミナー
・マッチング面談 ・リクルーター面談 ・ワールドカフェ ・学生意見交換会
・学校推薦相談会 ・技術討論会 ・交流会 ・個別説明会 ・座談会 ・社員懇談会
・就職相談会 ・討論会 ・特別面談

――など、さまざまな表現が使用されています。中には「お話会」という例もあります。企業がネーミングで苦労していることがうかがえますね。

 私が面白いと感じるのはこれらの表現だけでなく、大企業はこれらの表現を使用することで、実質的な面接行為をコソコソと実施するのではなく、「面談会場はこちら」と本社受付に堂々と表示してオープンに実施していることです。一部のメガベンチャーのように、「指針を順守しません。4月から選考開始します」と宣言して、正々堂々と「面接」を実施すればいいのにと思わずにはいられませんが、経団連の手前、そう簡単なことではないのでしょうね。

過半数の企業が5月までに内々定出し

  内々定出しをいつから開始するのかを聞いたところ、全体でも最も多いのは「6月」の30%で、次いで「5月」22%、「4月」20%と続きます[図表7]。「3月」は4%と少ないですが、「2月」以前に内々定を出し始めた企業を合計すると9%と1割近くになります。「2015年10月以前」とする企業が5%もあるのには驚きます。インターンシップからそのまま選考につなげてしまう例だと思われます。面接選考解禁の6月前に内々定を出し始める企業の合計は55%と過半数となります。
  内々定出しの開始時期を企業規模別に見てみましょう[図表8]。経団連加盟企業が多い大企業では、「6月」とする企業が43%、「7月以降」とする企業の7%と合わせれば、半数の企業が内々定出しは「6月」以降と回答しています。ただし、上述したように実質的な面接選考は進行しており、6月になると同時に内々定出しのラッシュとなることが予想されます。
  中堅企業で内々定出しを「6月」以降とする企業は46%、中小企業では41%となっており、大企業の選考結果を待たずに内々定出しを始める企業が過半数となっています。特に中小企業では、「2月」までに内々定出しを始めた企業が18%と2割近くなっています。「7月以降」とする割合も中小企業が20%で最も多くなっています。[図表6]で見たように中小企業では面接選考開始時期が分散していたことに連動しているとみられます。

プレエントリー数が減少している文系学生

  ここからは、学生側の調査結果を見ていきましょう。まずは文系のプレエントリー社数の状況です[図表9]。グラフは、昨年のデータと比べられるようにしてあります。最多区分は「21〜40社」であることは昨年と変わりありませんが、その割合は昨年の26%から32%へと6ポイント増えています。このほか、「41〜60社」が昨年19%→23%、「1〜20社」が同23%→25%へと、比較的少ない社数区分の割合がいずれも増えている一方、「61〜80社」は同15%→8%とほぼ半減しているのをはじめ、「81〜100社」「101社以上」の区分もともに減少しています。
  昨年の調査時期は4月第2週でしたので、調査時期に2週間ほどのズレがあるとはいえ、4月の上旬に大量のプレエントリーをすることは考えにくく、今年の文系学生のプレエントリー数は昨年と比較すると減少していると考えて間違いなさそうです。企業側の調査でも([図表1]参照)、昨年対比でプレエントリー数が減少している企業が3割以上あったことと合致しています。

 理系は文系と異なり、昨年データとの差異は小さくなっています[図表10]。最多区分は文系よりも少ない「1〜20社」となっており、昨年の43%から46%へと3ポイント増えています。「0社」とする学生も同1%から3%へと微増しており、その分「21社」以上の区分の割合が減少しています。理系においてもプレエントリー社数はやや減少傾向にあるようですが、文系ほどの差はないようです。

「マイナビ」と「リクナビ」の競争激化

  就職ナビの活用状況についても、文系・理系別に確認しておきます。まずは文系学生です[図表11]。活用している就職ナビ(逆求人型含む)を複数選択で回答してもらったところ、「マイナビ」95%、「リクナビ」93%と、今年も2強の状態が続いています。
  昨年までの「日経就職ナビ」から新しくなったディスコの「キャリタス就活」が、土屋太鳳さんをイメージキャラクターとして展開した広報活動のかいもあって、活用度62%と初年度としてはかなり健闘しています。昨年「日経就職ナビ」が73%だったことを考えると、「日経」ブランドが強かったことは否定できないものの、サイト名が学生にもっと浸透していけば、来年以降さらに活用学生は増えるものと推測されます。

 また、「JOBRASS」(20%)、「Offer Box」(12%)といった逆求人型サイトが、「ブンナビ!」など一部の就職ナビ以上に活用されている点も注目したいところです。これまでの就職ナビとは別の就職活動ツールとして、逆求人型サイトは今後ますます伸びていくものと思われます。
次に「最も活用している就職ナビ」を単一選択してもらったデータが[図表12]です。2強となっている「マイナビ」と「リクナビ」のパワーバランスの変遷を確認できるように、過去4年間のデータを一覧にしてみました。2015卒採用までは「リクナビ」が「マイナビ」をリードしていましたが、昨年初めて「マイナビ」が「リクナビ」を逆転しています。今年は「リクナビ」が情報掲載社数を大きく伸ばしたこともあり、昨年17ポイントもあった「マイナビ」とのポイント差はわずか4ポイントにまで詰め寄っています。ちなみに、2016年5月6日現在の情報掲載社数は、「リクナビ」2万3312社、「マイナビ」1万8013社と、「リクナビ」のほうが5000社以上も多くなっています。
  一方、理系学生が活用している就職ナビ(複数選択)では、「マイナビ」「リクナビ」ともに92%で並んでいます[図表13]。「キャリタス就活」は、昨年の「日経就職ナビ」の54%から9ポイントの減少とはなっているものの、その他の就職ナビには大きく水をあけている状況です。
  複数選択での回答ではまったく同じポイントとなった「マイナビ」と「リクナビ」ですが、「最も活用している就職ナビ」を単一選択してもらったところ、「リクナビ」47%、「マイナビ」42%という結果になりました[図表14]。
  文系同様に昨年は「マイナビ」の後塵(こうじん)を拝した「リクナビ」ですが、わずか1年で「マイナビ」を再逆転しています。かねてより「リクナビ」は理系学生での強さが際立っており、2015卒採用では「マイナビ」に33ポイントもの差をつけていました。「マイナビ」が2018卒採用でどう盛り返してくるのか注目したいところです。
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プロフィール

ProFuture代表 HR総研所長 寺澤 康介

1986年慶應義塾大学文学部卒業。就職情報会社に入社後、企画制作部長などを経て、2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役などを経て、2007年採用プロドットコム(現社名=HRプロ)を設立、代表取締役社長に就任、現在に至る。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用、人事関連のコンサルティングを行ってきた。現在はHRプロ代表とともにHR総合調査研究所所長を兼任し、人事領域全般を対象にした調査、研究を実施している。
HRプロは人事担当者のポータルサイトとして約8千社、1万4千人の会員(2012年3月現在)を持ち、採用、人材育成、人事労務など、人事関連の最新情報を提供している。

<執筆、出演、記事掲載メディア等>
「週刊東洋経済」「東洋経済オンライン」「日経ビジネス」「日経アソシエ」「労政時報」「企業と人材」「人材教育」「人事マネジメント」「企業実務」「NHK(テレビ、ラジオ)」「朝日新聞」「読売新聞」 「日本経済新聞」「産経新聞」「文春」「アエラ」「サンデー毎日」など

※『採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント』は、WEB労政時報に寄稿した原稿を約2週間遅れで転載しておりますので、内容的に時差が生じる場合があります。ご了承ください。
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