「教育チェックシート」を作ろう!

第15回 “100%の教育”が実を結ぶアルバイトが辞めない仕事の教え方
レクチャータイムで意識の共有ができたら、次はいよいよ仕事を伝授するステップです。まず、仕事を教える時に最も重要なのは「100%教える」こと。

「わからないことがあったら、その都度聞いてね」「このサービスを受け付けるケースは少ないから、お客さんからオーダーがあったら教えるよ」と教育を中途半端に終わらせるのはNGです。最初から完璧に教えておくことこそ、安心して現場を任せられる人材に育てる鉄則です。
新人研修の際には、業務項目を100%列挙した「教育チェックシート」を作りましょう。新人スタッフとトレーナーが各自1枚ずつ携帯し、1つ教えたらお互いに各項目へチェックを入れていくだけの、ごくシンプルなものです。

シートの作り方は簡単。作業を細かく分解して、箇条書きにしてリストにしましょう。例えば、トイレ掃除の仕事リストなら下記のようなイメージです。

例:コンビニのトイレ掃除チェックリスト

□手洗い台を拭く □シンクを洗う □鏡を拭く
□石鹸の補充 □ドアの表面を拭く □ドアの裏面を拭く
□床のタイルを洗う □タオルを変える □便座を拭く
□トイレットペーパーの交換 □芳香剤の交換

このシートは、新人の教育時だけに限らず、ベテランスタッフたちの記憶違いや我流になったやり方を正す意味でも有効です。また、全員が同じリストを使うようにすれば、教え漏れがなくなり、人によってサービスの内容やレベルが大きく変わることも防げます。

いざ実践! アルバイトが辞めない「仕事の教え方」

第15回 “100%の教育”が実を結ぶアルバイトが辞めない仕事の教え方
新人研修中は、上記の「教育チェックシート」に沿いながら、どんどん仕事を覚えてもらいましょう。なお、教え方にもポイントがあります。それは、行動を理由とセットで教えること。「そこでお辞儀をするように」などと指示しても、理由がわからないと“やらされている”という気持ちになりがちだからです。

例えば、「商品の発注では、欠品を起こさぬよう数量管理を徹底する」と教えるとしましょう。そのとき、「発注は、お客様をファンにすることと、売り上げを作るための下地を作る大切な仕事です」と伝えた上で、「ある人が来店した時に、もし欠品が3回続けば二度と来店してもらえません。すると店舗の利益が減り、あなたのお給料を上げることもできなくなります」と理由を説明します。こう聞けば、スタッフも自分がしている仕事の意味と重要度を理解できるはずです。

教え終わった項目は、スタッフに各自でノートにまとめてもらいます。これが、困った時の助けとなる「自分だけのマニュアル」(セルフ・マニュアル)になるのです。

通常、接客業では本社から店舗用の分厚いマニュアルが配布されているケースが多いようです。しかし、対応を急いでいるスタッフに、分厚い冊子を調べる余裕はありません。結局、店長や周りのスタッフにSOSを出すことになり、私がオーナーを務めたコンビニではマニュアルは無用の長物でした。

一方、業務を習った後、自分用のマニュアルをまとめておくようにすればどうなるか? 彼らは何か問題に直面しても、自分のノートを見て一人で対処するようになります。すると、店長は店をスタッフに任せることができ、じっくりと今後の営業戦略を練ったり、キャンペーンについて考えたり、店舗の課題解決に動いたりする時間を持てるようになるのです。

また、一度教えたからといって彼らを放置せず、定期的に抜き打ちで実技チェックも行いましょう。仕事に慣れて、我流に走りがちなベテランスタッフも、同様にこのテストの対象者です。

教育の3ステップ
1 リストをもとに、理由とセットで仕事を教える
2 教わった内容を「自分マニュアル」にまとめてもらう
3 抜き打ちテストで定期的にチェックする

「100%の教育」が実を結ぶ瞬間

「なんと手間のかかることを......。それ、ホントに効果あるの?」と思う方もいるでしょう。ご想像のとおり、100%の業務を教えるには時間も労力もかかります。事実、私の店舗では週に3日程度、1日3~4時間というスパンで、約1カ月の期間を教育に費やしていました。

もちろん、私の店舗も最初からアルバイトの定着率が高かったわけではありません。それどころか、オープン当時の最短定着時間は、なんと4時間。「おはよーございやーす!」から始まって「お疲れっしたー!」と元気に帰っていった彼は、二度と戻ってきませんでした......。そこから経営やマネジメント、教育などを猛勉強し、定着率を伸ばす方法を試行錯誤した結果、100%完璧に教えるスタイルに行き着いたのです。

定着率が安定した時、お店を構成するスタッフは大学生が8割で、入学時から卒業時まで勤めあげてくれるのが普通になっていました。同時に、接客のクオリティが評価され、最寄りのコンビニを通り過ぎてまで来店してくれるお客さんも増加しました。最終的には、神戸を代表する大手ホテルの支配人が、定期的に店舗の様子を探りに来るようになったのです。これはさすがに予想外でしたが、接客のプロに注目されたことは、アルバイトスタッフにとっても自信になったのではないかと思います。

また、求人に困ることもなくなりました。たまに募集をかける時でも、店頭にチラシを貼れば、「ベビーカーを押していたら、店員さんが飛んできてドアを開けてくれた。私もこんなお店で働きたい」「私と同い年くらいのスタッフが、丁寧な接客をしていることに憧れた」と、明確な志望動機を持って応募してくれる人たちが現れたのです。これらはすべて、100%の教育から生まれたいいスパイラルです。

教育が生むいいスパイラルの一例
新規スタッフが入る
  →仕事を100%教える
  →スタッフが自分の接客に自信を持つ→サービスの質が向上する→愛される店舗へと育つ
  →売り上げがアップ→スタッフは仕事が面白くなる→スタッフが辞めない
  →店舗の姿勢に共感するスタッフが増える→スタッフが辞めない

自信をつけたスタッフは、目が輝き始めます。ぜひ皆さんも仕事を100%教えるスタイルを取り入れてみてください。きっと、スタッフの定着率や店舗の売り上げが上がっていくはずです。

提供:インテリジェンス「an report」
http://weban.jp/contents/an_report/index.html
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