三井化学は、2011~13年度の中期経営計画で「経営のグローバル化」を掲げており、グローバル人材の確保と育成に注力している。このテーマに関心を持つ人事担当者は多いはずだ。そこで汐留シティセンターにある三井化学本社を訪ね、吉田存方グローバルHRグループ グループリーダーにグローバル人材マネジメントの詳細を聞いた。
――昨年10月の日経新聞の記事では「外国人採用」「若手社員の海外駐在」、そして「海外からのインターンシップ受け入れ」の3つを伝えています。この3項をお聞きする前に三井化学がグローバル人材育成に取り組んだ背景についてお聞かせください。

 三井化学は2011~13年度の中期経営計画の中で、グローバル経営の実現を挙げており、そのグローバル経営を担うグローバル人材の確保と育成が人事部門に与えられた課題になる。

 どこの会社の人事部門も同様だと思うが、弊社の人事部門は人事(配置・評価)、人材開発(教育・採用)、労制(制度・組合対応)という3グループに分かれていた。グローバル人材確保や育成も行っていたが、専門部署が存在するわけではなく、担当者がその都度行うというものだった。しかしそういう体制では、グローバル人材の確保や育成に戦略的に取り組めない。

 そこで中期経営計画がスタートした2011年度に「グローバルHRグループ」という部署を人事部に設け、配置、教育、労制とも連携してグローバル人材にかかわることのすべてを統括する体制を作った。

 グローバルHRのミッションは2つある。ひとつは本体社員の「内なるグローバル化」だ。もうひとつは海外の現地法人で働く有能な人材を発掘し、経営幹部として登用していくことだ。

外国籍社員は現在60名

――日経新聞に書かれている「外国人採用」についてお聞かせください。

 外国人採用は昔から行っており、現在トータルで60名ほどの外国籍社員がいる。定期採用として力を入れてきたのは2005年以降で、約45名を採用した。
 ただ本体の外国人社員は多いとは言えない。三井化学単体の従業員数は7800名から比較すると60名はまだまだ少ない。

 一つの目安は採用数の10%程度を外国人にすることだ。現在の新卒採用数は50名弱なので、この目標は達成可能である。

 三井化学のこれまでの採用では日本に留学した外国人が中心だった。これからは中国、インド、シンガポールの現地大学生の採用を視野に入れており、すでに数例の実績もある。インターンシップの受け入れなどを通じて、海外の有力大学に有能な人材を採りに行く施策を強化する。

 また外国の大学に留学した日本人も、「グローバル採用」の枠として位置づけている。

 中国・インド・シンガポールの大学からインターンシップ受け入れ

――「海外からのインターンシップ受け入れ」を実行されている企業は少ないと思いますが、どのような内容ですか。

 海外からのインターンシップ受け入れを始めたのは2007年度、中国が最初で、当時は清華大学など8大学から受け入れていたが、現在は清華大学、浙江大学、大連理工大学の3大学となっている。化学工学専攻の学部3年から修士1年生を受け入れている。2012年度は6名が工場で4週間のインターンシップに参加した。

 インド工科大学からの参加は2010年度からスタートし、化学専攻の大学3年生、MBA在籍生が対象だ。2012年度は6名が、工場(1名)・研究所(2名)・事業部(3名)で6週間のインターンシップに参加した。

 シンガポール国立大学と南洋理工大学からのインターンシップは2010年度にスタートし、化学、化学工学専攻の大学3年生が対象だ。2012年度は3名が工場で10週間のインターンシップに参加した。

 インターンシップには渡航費、滞在費、日当などがかかるが、すべて三井化学が負担している。このインターンシップへの参加者から2009年度以降で6名が入社している。グローバル人材の採用に効果があったと思う。

 海外からのインターンシップとは別に、シンガポール経済産業省(EDB)と相互人材育成プログラムで連携している。これはスカラーシッププログラムで、東京工業大学国際大学院プログラムに2年間派遣し、その間の学費と奨学金を三井化学が支給する。その後は最低3年間三井化学グループ内での勤務を義務付けている。

 インターシッププログラムの参加者がスカラーシッププログラムへ応募するケースが多い。

海外駐在の前に3カ月間の語学漬け研修

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