「いけばな」と聞いてイメージするものと、経営学やビジネスの世界とは、一見すると大きな隔たりがあるかもしれない。しかしそこには明確な共通点がある。マッキンゼー・アンド・カンパニー社やハーバード・ビジネス・スクールといった経営学の最前線で働き、2017年に華道家として独立した山崎 繭加氏はそう考えている。本講演では華道家/IKERU主宰の山崎氏に、経営学の変化と「いけばな」との出会い、そしてティール組織との共通点やビジネスとのつながりなどについてお話しいただいた。

講師

  • 山崎

    山崎 繭加 氏

    華道家/IKERU主宰

    2017年に華道家として独立。「いけばなの叡智を共に探求する」IKERUを主宰し、いけばなの叡智から学ぶ個人向けのレッスンや組織向けのワークショップなどを展開している。それ以前は、マッキンゼー・アンド・カンパニー、東京大学、ハーバード・ビジネス・スクールで働いていた。著書に『ハーバードはなぜ日本の東北で学ぶのか』(ダイヤモンド社、2016年)。東京大学経済学部、ジョージタウン大学国際関係大学院卒業。古流松麗会顧問。軽井沢在住。

リーマンショック後、ハーバード・ビジネス・スクールに起こった変化

みなさんは「いけばな」に、どのようなイメージをお持ちでしょうか。ご自身の生活やお仕事とは、だいぶ遠いものとお考えだと思います。かつての私も、いけばなは、あくまで「趣味」だと捉えていました。今日は、“私自身が経営学の世界に身を置く中で感じてきた変化”、そして“いけばなが長い時間をかけて伝えてきたことが、経営学と重なりつつある”、そういったお話をしたいと思います。

私は、もともとはビジネス、そして学問の世界に身を置いていました。大学で経済学を学び、マッキンゼー・アンド・カンパニーでは経営コンサルタントとして働きました。それから一度ビジネスの世界を離れ、アメリカの大学院に留学。その後、2006年から10年間ほど、ハーバード・ビジネス・スクール(以下HBS)のスタッフとして勤務しました。

HBSは「資本主義の総本山」といわれ、世界中のトップエリートたちが集まっています。私が働き始めた2006年当時、彼らは競争の原理にもとづいて世界をとらえ、「どのようにすれば企業として勝てるのか」といったことを議論していました。ところが、少しずつ状況が変わってきたのです。

その大きなきっかけのひとつは、日本語では「リーマンショック」、英語では「Great Recession」といわれる、世界的な金融危機。多くのビジネススクールの卒業生たちが金融の世界で働き、そのなかにはウォールストリートを起源とした世界的な金融危機の原因をつくった人もいます。当時、HBSをはじめとした世界中のビジネススクールの先生たちは、「これまで我々は素晴らしい人材を輩出し、世界を変えるリーダーをつくってきたという自負があった。しかし、自分たちの教育には何かが欠けていたのではないか」、そう反省したのです。

その反省から出てきた指針に、私は大きな衝撃を受けました。それは、「Knowing-Doing-Being」です。「Knowing」は知識であり“頭”。心技体でいう「技」の部分です。「Doing」は“体”を動かして実践を通して学ぶこと。そして「Being」は自分とは何か、どのような価値観や信念を持つのかという深い気づきであり、違う言葉で表現すると“心”です。

これら“頭”、“体”、“心”を考えると、それまでのHBSの教育は”頭”に偏っていた。その結果、金融危機につながるような行動をしてしまう人材を世に送り出してしまったのではないか。そうした深い自省を行なったHBSでは2010〜2011年の間に大きな変革が行われ、“頭”だけではなく“体”や“心”もきちんと育むプログラムをつくっていったのです。

このことに私は驚き、「世界は変わりつつあるのだ」と自分ごととして感じるようになりました。
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