新卒・中途、国籍を区別せず、学年すら問わないという同社のユニークでオープンな「通年採用」は、極めて革新的な人材採用手法であるとの評価により、「第1回日本HRチャレンジ大賞」のイノベーション賞を受賞しました。
若林さんのお話を伺いながら強く感じたことが二つあります。
二つ目は経営陣の人材採用に対するコミットの強さです。今年7月7日に開催された採用イベント「希望塾」には、柳井社長以下、国内にいる役員が全員参加してプレゼンテーションを行ったとのことです。
トップの人材採用に対する意気込み、そしてベンチャースピリッツ。ユニクロの強さの理由の一つを見たような気がしました。
さて、今回のテーマは「2014年度新卒採用戦線の予測」です。企業、学生、大学キャリアセンターに本年5月に実施したアンケート調査を基に、2014年度新卒採用の動向予測の主要なポイントを解説したいと思います。
■学校対策が最も重要な施策
採用担当者に2014年度新卒採用で最も力を入れることを聞いたところ、1位が「学内企業説明会」(47%)となり、2位の「就職ナビ」(36%)を大きく引き離しました[図表1]。先回までの連載で、就職ナビ離れや大学キャリアセンター対策について書きましたが、このデータはその流れを端的に表していると言えるでしょう。
「学内企業説明会」重視は、ターゲット校採用のさらなる浸透を意味しています。就職ナビによる「広く浅い」広報活動から、学校を絞っての「狭く深い」広報活動(コミュニケーション活動)へとかじは切られているのです。
採用広報開始(就職ナビの正式オープン)以前の施策を聞いたところ、1位「インターンシップ」(48%)、2位「採用ホームページの開設」(43%)に続いて、3位「キャリアセンター訪問」(41%)、4位「学内企業セミナーへの参加」(38%)と、やはり学校対策が上位に来ています[図表2]。
■水面下の動きが広がる可能性
7月17日、経団連は2014年度入社対象の倫理憲章について、2013年度入社対象の内容から変更しないことを正式に発表しました。その以前から前年に変えたばかりの倫理憲章の変更はないだろうとの見方が強く、企業は、採用広報開始12月1日、採用選考開始4月1日を前提に準備していましたので、この発表による混乱は特にないでしょう。採用担当者に「貴社の採用広報開始はいつか」を聞いた設問でも、昨年よりも多い60%以上が「12月」と回答しています[図表3]。一方、「採用選考開始はいつか」を聞いた設問では興味深い結果が出ています[図表4]。1位はやはりダントツで「4月」ですが、「4月」「5月」はポイントを落とし、「12月以前」「3月」と回答した企業が増えています。特に「12月以前」はポイントを伸ばし、10%近くに達しています。しかも、企業規模別に見ると大企業の方にその傾向が強く出ています。
■インターンシップの活用拡大
インターンシップの実施予定では、調査段階では「未定」との回答が42%を占めるものの、「2013年度向けはやったが、2014年度向けはやらない予定」という企業はほとんどないのに対して、「2013年度向けにはやらなかったが、2014年度向けはやる予定」とする企業が5%あるなど、インターンシップを実施する企業は増えそうです[図表5]。企業規模別では、規模が大きくなるほど実施率は高くなっています。また、有給での長期インターンシップや、コーオプ教育(大学のカリキュラムと企業での職業体験を統合した実践的キャリア教育)なども徐々に広がりを見せてくるものと思われます。
■12月~3月の動き
学内企業説明会や合同企業説明会への参加で母集団を形成し、自社の個別企業セミナーへと誘導するわけですが、ターゲット学生へのグリップ力をいかに高めるかが課題になってきます。採用ホームページの更新だけでは心もとなく、大学別セミナーやOB・OG懇談会の開催など、リアルなコミュニケーション活動が増えてくるものと思われます。また、エントリーシートの提出時期やWebテストの受検時期を早めてターゲットを絞る動きや、プレ選考的なイベント、リクルーターによる予備選考などが増えてくるのではないかと考えています。
■4月以降の動き
今年の選考活動では、人気業界である総合商社の選考が例年になく早く行われましたが、この動きは来年も変わらないでしょう。あるいはもっと早くなるかもしれません。今年の4月に内定取得者に対して実施したアンケートで、「就職活動を継続するかどうか」を聞いたところ、「内定したので終了する」と回答した学生(文系)は昨年の42%から56%と14ポイントも伸びています[図表7]。採用広報開始から選考開始までの期間が短くなったことで、接触できている企業数が減ったこともあり、すんなり内定を受け入れる学生が増えたということです。つまり、「早く内定を出した者勝ち」的な様相を呈しているとも言えます。大手企業の選考活動(内定出し)のヤマ場は今年よりも早くなり、準大手や中堅・中小企業の選考活動(内定出し)の時期も早まってくる可能性があると考えた方がいいでしょう。
■課題、新たな取り組み
最後に、採用担当者から寄せられた「2014年度新卒採用の課題」と「新しい取り組みや制度」を見てみましょう。・親に対する弊社の認知(5001名以上、旅行・ホテル)
・早期からの広報活動への注力(501~1000名、輸送機器・自動車)
・海外展開を見据えた人材確保(501~1000名、輸送機器・自動車)
・学校を絞り込みPR(101~300名、百貨店・ストア・専門店)
・求める人材像のいる場所を見つけ出すこと(301~500名、精密機器)
・他社の様子を見つつ、説明会開始時期、選考開始時期など、スケジュールをフレキシブルに変えていきたい(51~100名、情報処理・ソフトウエア)
・全社を巻き込んだ採用活動(1001~5000名、機械)
・専門性の高い学生を早めに囲い込む(101~300名、化学)
・職種限定の採用を強化(501~1000名、印刷)
・就職倍率をいかに低く抑えるか(効率的、効果的採用活動の構築)(501~1000名、フードサービス)
・先輩新卒社員による説明やディスカッション(成長を目の当たりにしてもらう)(101~300名、情報サービス・インターネット関連)
・採用面談者のスキルアップ(501~1000名、信販・クレジット・リース・消費者金融)
2013年度入社対象の採用活動では、採用広報開始日以前の企業と学生の接触について厳格に運用され、広報開始から選考開始までの期間が短くなったことで、就職意識、業界・企業研究、志望動機などがこれまでの学生と比べて希薄になったと言われました。この傾向は2014年度の採用活動でも変わることはないでしょう。
上記の最後のコメントにもありますように、説明会・セミナーだけでなく、面接もまた企業広報、志望動機形成の場であると考え、面接官への勉強会・研修を実施されることをお勧めします。
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