日本でもっともよく知られている固有名詞のひとつが、「ユニクロ」だろう。幼稚園児も高齢者も知っているし、着ている。2012年3月中旬には超弩級のユニクロ銀座店がオープンし、来店客の行列ができた。

 このユニクロの持ち株会社がファーストリテイリングだ。2年前に楽天とともに英語社内公用語化を宣言した。そして昨年末には柳井社長が通年採用の導入を発表し、今年2月初旬の会社説明会から始まった。今回はユニーク新卒採用の中身をユニクロの新卒採用リーダーに聞いた。

――ファーストリテイリングの全体像を簡単に教えてください。

ホームページに「2012年8月期第1四半期業績及び業績見通し」を公開している。連結売上は2011年8月期通期実績で8203億円、2012年8月期予想は9650億円。ユニクロ事業では国内853店舗、海外223店舗を展開し、計1076店舗ある。

 その他にもジーユーなどの事業を展開しており、総店舗数は2167(2011年11月現在)。従業員数はグループ全体で1万4612名(2011年8月現在)。社長の柳井は、2020年にグループ売上高5兆円、海外売上高比率7割を目指すと言っている。

――2010年に社内英語公用語化を宣言しました。同時期に宣言した楽天は、採用時に一定以上の英語力を求めていますが、ユニクロではどうですか?

新卒の選考で英語力は問わない。語学力は高い方がいいが、基準を設けておらず、英語力を理由に落とすことはない。現在の英語の運用は、母語が異なる人が対象の資料や会議は英語で行っているが、国内店舗の日本人同士の会議や打ち合わせは当然日本語を使う。

 ただ本社社員と店長の約3000人はTOEIC700点以上がマストだから、入社後に勉強してもらう必要がある。英語は絶対にイヤという人には無理ということになる。

――ユニクロが宣言した通年採用仕組みは?

通年採用を導入した背景には、新卒一括採用の仕組みに対する疑問がある。学生はある時期まで企業との接触を制限されており、社会と触れあい、成長する機会が奪われている。これは会社の論理、都合だと思う。そこで学生がいつでも応募でき、仕事を経験できる通年採用を2013年採用から導入した。

通年採用でも選考の仕組みはこれまでと同じだ。ユニクロの採用は、まず説明会に来てもらい、そこで適性検査を受けてもらう。次に面接を行う。面接を行う場所は、東京と大阪だ。このステップを踏んだ上でインターンシップを実施する。そしてインターンシップをクリアした人が最終面接に進むことができる。

 2013年採用の学生はいま面接中だ。これから通年採用の仕組みを導入していくが、詳細については計画中だ。

――インターンシップの中身を教えてください?

2012年卒では2種類のインターンシップを行った。まず夏にサマーインターンシップを実施した。店舗インターンシップが最長6日、本部インターンシップが4日だ。店舗インターンシップは学生の都合に合わせた店舗で行うが、本部インターンシップは東京か大阪に来てもらう。ただ2012年卒で実施したサマーインターンシップは選考目的ではなく、学生に就業体験の機会を与えるためのものだった。

 もうひとつのタイプは選考プロセスで実施するインターンシップだ。これはサマーインターンシップより短く、店舗インターンシップが2日、本部インターンシップが2日だ。

 2012年卒採用では、10月から採用活動を開始し、7、8月に終わったが、そのプロセスの中で随時インターンシップを行った。

――学生にとっても企業にとっても負担が大きいインターンシップを選考プロセスに取り入れた理由は何ですか?

インターンシップを選考プロセスに導入したのは2007年卒採用からだ。導入した理由は、採用後のミスマッチを減らすため。ユニクロに入社すると、昇格試験に受かった上で店長になる。

 しかし店長という仕事を頭でわかっているだけでは入社後にミスマッチが起こる。入社前に店長という仕事を見て理解することが必要。毎日朝にダンボール箱を荷受けする、店舗スタッフをマネジメントするというリアルな仕事がわからないと、店長という仕事の魅力もたいへんさも伝わらない。

店舗インターンシップを経験した学生に期待していることは3つある。ひとつは店舗で実務を経験することで店舗の仕事を理解してもらうこと。ふたつ目は店長に密着してもらい、店長という仕事を理解してもらうこと。そして店長が即ち経営者であることを店舗で発見してもらうことだ。

 インターンシップ参加学生にはグループディスカッションが課せられ、議論することで仕事とは何かについての理解を深めてもらっている。

――2012年卒の採用数と、インターンシップ参加者数を教えてください。また今年の夏に実施するサマーインターンシップはどのようなものになりますか?

2012年卒の国内新卒採用数は141名。グローバルでは約900名の新卒を採用しており、例えば韓国では150名を採用している。インターンシップ参加学生数や最終面接者数については、ノーコメントとさせていただきたい。

 今年のサマーインターンシップは計画中だが、7月中旬から9月頭にかけて実施する。昨年までは就業体験型だったが、今年は通年採用の一環として実施し、選考直結型インターンシップになる。

――1年生でもOKと報道されましたが、どういう仕組みですか?

ユニクロの通年採用では、学年を問わない。1年生も応募できる。説明会、適性検査、面接を経てインターンシップを経験し、認められた学生には、最終面接に進むパスポートという権利が与えられる。さらにパスポートを使って最終面接に進み受かった学生が内定を得るわけだ。

 もちろん最終面接で落ちる学生もいるが、パスポートの有効期間は3年間だ。ただし同一年度は使えない。1年生でパスポートを取得したら、1年の時に最終面接に進んでもいいし、使わなくてもいい。好きな時に行使すればいいし、落ちても自分を磨いて翌年に最終面接にチャレンジすればいいという仕組みだ。

 ユニクロでは、国籍のほか、新卒、中途、第二新卒の区別なく採用を受け付けているので、卒業後であっても3年間の有効期間内であれば行使可能だ。

――入社後の教育研修スケジュールを教えてください。

ユニクロの入社日は3月上旬だ。春休みに入っているので、学事日程には抵触しない。わたしがユニクロに入社した2001年の入社日も3月1日だった。その後に1回だけ4月1日にしたことがあったが、教育研修期間が短くなり、無理があることがわかったので、3月1日に戻した経緯がある。

 ユニクロの教育研修は、ユニクロ大学という部署が担当している。新入社員は、入社後の1週間でユニクロの歴史、業界におけるポジションなどの知識を学び、社会人としての基礎的行動力を身につける。それから店舗に配属されてOJTで店長の仕事を学んでいく。

 そして4月から5月にかけて3回の集合研修がある。OFF-JTで学ぶのは人事管理システムの使い方などで、店舗で店長に密着して体験してきた実務をスキルとして磨くための研修だ。
 
そして7月末から8月頭に昇格試験があり、受かった人は店長として配属される。この昇格試験が新入社員の最初のキャリアステップだ。
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