■主旨と内容

セクシュアルハラスメント(以下セクハラ)は、個人の尊厳を不当に傷つける社会的に許されない行為です。
職場でセクハラが生じると、たとえ当事者の問題が解決しても、職場環境の悪化により、秩序が乱れたり、仕事の円滑な遂行が阻害されたりして、企業活動の効率的運営や労働生産性、さらには社会的評価にも悪影響が及びかねません。加えて、都道府県労働局へのセクハラ相談件数は年々増加しています。
法律で義務づけられていることへの対策は当然ながら、社内を総点検し、男女労働者がセクハラのない職場でイキイキと働くことができるような雇用管理に取り組む必要があります。セクハラ案件は、一度起こってしまうと解決までに大変な労力が必要ですし、社内のダメージも計り知れません。
男女雇用機会均等法第11条では、職場におけるセクハラに関し、事業主は雇用管理上必要な措置を講じなければならないと規定しており、講ずべき措置は厚生労働大臣の指針において9項目定められています。

>>男女雇用機会均等法
第11条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする。

>>指針に定められたポイント
『事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針』平成18年厚生労働省告示第615号(以下一部、著者要約)

(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)職場におけるセクシュアルハラスメントに係わる事後の迅速かつ適切な対応
イ. 事案に係わる事実関係を迅速かつ正確に確認すること
ロ. 事実確認ができた場合においては、行為者および被害者に対する措置を適正に行うこと。
ハ. 再発防止に向けた措置を講ずること(事実が確認できなかった場合も同様)。
検討内容
企業がセクハラ対策を進める上では、制度と運営の取り組みがありますが、まずは規定の整備が最重要課題となります。その際のポイントは以下の2点です。

(1)セクハラの内容およびセクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、周知・啓発すること。
(2)セクハラの行為者については、厳正に対処する方針および対処の内容を就業規則等の文書に規定し、周知・啓発すること。
(1)についてはすでに多くの企業で対応ができていますが、(2)については未対応の企業が多いのが現状です。早急な取り組みをお勧めします。そこで具体的な対応策としては、現行の就業規則内に「セクシュアルハラスメント防止規定」を追加し対応する、つまり就業規則内にセクハラ禁止規定を設け、さらに懲戒の部分に具体的な対応策まで盛り込むケースが考えられます。

[セクシュアルハラスメントを懲戒規定に追加する例]

(懲戒の種類)
第○条 懲戒は次の区分により行う。

(1) 譴責 始末書を提出させ、~。
(2) 減給 始末書を提出させ、~。
(3) 出勤停止 始末書を提出させ、○日間を限度に~。
(4) 諭旨解雇 ~
(5) 懲戒解雇 即時に解雇する。
(懲戒の事由)
第○条 次のいずれかに該当する時は譴責、減給、出勤停止とする。

(1)~(5) 略
(6)職場内において、性的な言動によって他人に不快な思いをさせたり、職場の環境を悪くしたとき。
(7)職場内において、性的な関心を示したり、噂を言ったり、性的な行為を仕掛けたりして、他人の業務に支障を与えたとき。

2 次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし情状により諭旨解雇とすることがある。

(1)前項の行為が再度に及んだ者またはその情状が悪質と認められたとき。
(2)~(6) 略
(7)職責を利用して交際を強要したり、性的な関係を強要したとき。
あるいは、セクシュアルハラスメント防止規定とその処分(懲戒等)の具体策を別途独立規定とするケースもありえます(図表2 )。
規定に加えてパンフレット等でセクハラについての取り組みや処分などを明確に周知・徹底させる方法も考えられます。パンフレットによる場合は社長名で社内周知します。内容は規定と同様のものになりますが、社長の宣言文として発表すると効果的です。

[セクシュアルハラスメントを懲戒規定に追加する例]
セクシュアルハラスメント防止に関する規定

第1条(目的)
本規定は、就業規則第○条および男女雇用機会均等法に基づき、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために従業員が遵守すべき事項ならびに性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等を定める。
第2条(定義)
セクシュアルハラスメントとは、職場における性的な言動に対する他の従業員の対応等により当該従業員の労働条件に関して不利益を与えること、または性的な言動により他の従業員の就業環境を害することをいう。
2 前項の職場とは勤務する事務所のみならず、従業員が業務を行うすべての場所をいい、また就業時間内に限らず、実質的に職場の延長とみなされる就業時間外の時間を含むものとする。
3 第1項の従業員とは、直接的に性的な言動の相手方となった被害者に限らず、性的な言動により就業環境を害されたすべての従業員(正規従業員、パートタイム従業員、派遣社員等当社において働く者すべて)を含むものとする。
第3条(禁止行為)
就業規則第○条に定めた服務規律の禁止行為のうちセクシュアルハラスメントに該当する内容を次に定める。
(1)容姿および身体上の特徴に関する不必要な発言、性的および身体上の事柄に関する不必要な質問、噂の流布
(2)わいせつ画面の閲覧、配布、掲示
(3)不必要な身体への接触やプライバシーの侵害、性的な言動により従業員の就業意欲や能力の発揮を阻害する行為
(4)交際や性的関係の強要、性的な言動への抗議または拒否を行った従業員に対して、解雇、不当な人事考課、配置転換等の不利益を与える行為
(5)その他相手方および他の従業員に不快感を与える性的な言動
2 上司は、部下である従業員がセクシュアルハラスメントを受けている事実を認めながら、これを黙認する行為をしてはいけない。
第4条(懲戒)
本規定第3 条に掲げる禁止行為に該当する事実が認められた場合は、就業規則第□章第○条に基づき下記の懲戒処分を行う。
(譴責、減給または出勤停止)
本規定第3 条第1 項①~③のいずれかまたは⑤の行為を行った時
(懲戒解雇)
本規定第3 条第1 項④または第2 項の行為を行ったとき
第5条(相談および苦情への対応)
セクシュアルハラスメントに関する相談および苦情処理の相談窓口は○○課、電話03-XXXX-XXXX、担当者は○○とする。
(2011.05.30掲載)
  • 1

この記事にリアクションをお願いします!