「企業理念浸透に関するアンケート調査」結果報告必要性は認識するも進まぬ理念の浸透

HR総合調査研究所が、2013年8月26日〜27日にかけて実施した「企業理念浸透に関するアンケート調査」の結果をもとに、各企業の実施状況、浸透を阻害している要因などを報告する。有効回答は117社。

ほとんどの企業が認識する理念浸透の必要性

企業理念とは、社会に対する企業の存在意義であり、企業活動の拠り所になるものである。昨今、「Wayマネジメント」としてこれまで以上に企業理念の浸透が注目されている。
社員に企業理念を浸透させることの必要性を問うたところ、98%(「やや思う」を含む)の企業が重要だとの認識を持っている。残り2%も「わからない」であり、否定的な企業は皆無である。

図表1:社員への理念の浸透は必要か
さて、理念浸透の主な目的はなんであろうか。トップの「企業経営の方向性の明確化」(74%)は当然として、「社員の行動規範」(55%)、「企業文化・社風の良質化」(51%)がそれに続く。ただし、過半数を超えたのはここまで。以下、「企業の社会的責任意識の向上」(37%)、「社員の一体感の醸成」(37%)、「経営戦略・方針の指標」(35%)、「現場の仕事の質の向上」(24%)、「社員のモチベーション維持・向上」(21%)、「日常の経営管理の指標」(10%)と続く。
数値目標だけを追いかけがちになるマネジメントに疲弊する社員のモチベーション維持・向上としての側面が2割というのは、やや少ない感がある。

図表:理念浸透の目的

具体的な施策を講じている企業は3社に2社

社員への理念浸透のために具体的に何か施策を講じているかとなると、やや状況が異なってくる。「講じている」(「やや講じている」を含む)とする企業は66%にとどまり、3分の1の企業は施策を講じていない。また、「講じている」企業の中でも「やや講じている」程度の認識の企業が過半数となっている。

図表3:理念浸透のために施策を講じているか
施策の内容を見てみると、「(理念を解説した)パンフレット・カードの配布」(57%)、「分かりやすい表現での明文化」(52%)が多い。次いで「管理職・一般職を対象にした企業理念教育」(38%)、「企業理念に基づいた企業文化・組織体制・社内制度」(32%)、「企業理念の唱和活動」(30%)と続く。

図表4:施策の内容

表彰制度を活用する例も

施策の内容を具体的に見てみよう。朝礼で唱和、イントラへの掲示、ポスター、社内報・コレドの配布など、一般的なものは割愛させていただく。
・全従業員への、理念共有アンケートの実施。(繊維・アパレル・服飾)
・表彰制度により、求めるValueを体現した優秀者を顕彰。(医薬品)
・先人の経験集などを作成して配布&議論。(輸送機器・自動車)
・全社をあげた取組事例発表会を行い、どのような形で所属における経営理念の体現を行ったのかを発表し共有する機会を設けている。(保険)
・経営層との意見交換会を定期的に開催している。(建設・設備・プラント)
・創業者のVTRをアルバイトから社員まで定期的に見せて、創業者の心意気を忘れない様に努めている。(フードサービス)
・役員クラスの職場訪問説明会。(商社)
・プロジェクト体制で浸透に取り組んでいる。(化学)

思うように進まぬ理念浸透

取り組みの成果として、企業理念が社員に浸透していると認識する企業はわずか6%しかない。「やや浸透している」の36%を合わせても4割強に過ぎない。「(浸透しているとは)あまり思わない」(40%)、「思わない」(13%)を合わせると50%を超える。施策が形式的なものにとどまる例も多く、浸透への本気度には企業によりかなり差があるようだ。

図表5:理念は浸透しているか

浸透の阻害要因トップは「経営層が旗振り役になれていない」

理念の浸透が進んでいないとする企業に阻害要因(課題)を聞いてみた。最も多かったのは、「経営層が旗振り役になれていない」(54%)で過半数を超えた。経営理念は策定したものの「お飾り」になっている企業が多いようである。次いで「社員の帰属意識の希薄化」(38%)、「企業理念に基づいた体制・制度になっていない」(30%)が続く。
「理念に沿った行動」よりも「売上至上主義」の評価制度などにならないよう、調整をしていくことが求められる。

図表6:理念が浸透しない阻害要因

今後の施策では「企業理念(ナレッジ)共有化の推進」がトップ

今後新しく取り組みたい施策を聞いたところ、最も多い回答は「企業理念(ナレッジ)の共有化を推進するイベント、仕組みづくり」の31%、次いで「企業理念に基づいた企業文化・組織体制・社内制度」「管理職・一般職を対象にした企業理念教育」(ともに29%)、「分かりやすい表現での明文化」(27%)と続く。

図表7:今後新しく取り組む施策
すでに実施されている施策との合計で見てみると、トップは「分かりやすい表現での明文化」で79%と8割近い企業で重視されている。「企業理念の唱和活動」を新しくはじめようとする企業は2%しかない。形式的になりがちな唱和活動よりも、教育やナレッジの共有が大切だと考える企業が多い。

図表8:現在と今後の施策の合計
具体的に新しい施策を見てみよう。現在実施されている一般的な施策よりも、目新しい施策が多くみられる。
・企業理念実現に必須のコンピテンシーを明確化し、採用基準や昇進基準に用いるなど、全グループの人事制度に何らかの形で落とし込むことを検討中。(医薬品)
・各層別研修の中で、企業理念を意識するようなプログラムを入れて行こうと考えている。(建設・設備・プラント)
・経営層をはじめとする役員に本気に関与してもらうためのエンロールメント活動。(情報サービス・インターネット関連)
・企業理念に全社員が触れる機会を増やす。(百貨店・ストア・専門店)
・個々の理念に記載されたキーワードを自己の組織体業務の中で、具現化して実行するアクシションの立案と実行(具現化は毎期の予算実行計画策定時に議論)。(情報サービス・インターネット関連)
・目標管理制度における行動発揮度の評価項目に設定し運用するなどの方策を検討する。(情報処理・ソフトウェア)
・グローバルでの浸透を促進する。(輸送機器・自動車)
・リーダー育成系研修では、理念そのものを研修題材に用いたケースワーク等を取り入れる。(情報処理・ソフトウェア)
・部署ごとの具体的な行動指針を明確にし、評価制度へつなげる。(ゲーム・アミューズメント・スポーツ施設)
・担当部署による社内キャラバン。(情報処理・ソフトウェア)
・組織・職制横断的な「シャベリ場」を作ることで、相互に企業理念の理解・浸透を図る。(運輸・倉庫・輸送)
・企業理念の共有セミナー実施。(輸送機器・自動車)
・経営陣と社員の対話の場を増やす。企業理念そのものの見直しと、トップダウンではなく社員参加型のビジョンづくり。(運輸・倉庫・輸送)
・eラーニングによる社長メッセージの配信。(人材サービス)
・昇格昇進の審査項目に追加。(運輸・倉庫・輸送)
・CIまでを意識した会社としての表現を見直す。(情報処理・ソフトウェア)

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年8月26日〜27日
有効回答:117社

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