改正育児・介護休業法の先にある課題。不登校対応で生まれる親と企業の認識ギャップが、人事には見えていない離職リスクになる

サイボウズ ソーシャルデザインラボは2026年7月8日、「子どもの不登校・行き渋りが親の就労に与える影響と、企業側の認識・対応とのギャップに関する調査」の結果を発表した。同調査は、企業で正社員として働く子育て中の親1,000人(うち不登校・行き渋りのある子どもを持つ保護者500人)と、人事担当者500人を対象に、2026年6月2日から9日にかけて実施されたものだ。子どもの不登校を機に働き方を変えた親は4人に1人にのぼる一方、人事担当者の半数以上が社内の実態を把握できていないなど、当事者と企業側の認識には大きなギャップがあることが明らかになった。

HRプロ会員なら、会員限定の記事や『HR総研』調査報告/そのほか多数のコンテンツが無料で利用可能!
<<メールアドレスだけの無料会員登録をする>>

相談を躊躇する従業員(働く親)と実情が見えない人事

改正育児・介護休業法は2025年4月1日から、子の看護休暇を取得できる対象を「小学校3年生修了まで」に拡大した。ただし、不登校・行き渋りは小学生から中学生・思春期にかけて広く発生するため、看護休暇の対象拡大が支援を必要とする世代すべてを網羅しているわけではないだろう。法律による支援範囲の定めは広がっているものの、こうした事情は本人や家庭から言い出しづらい面もありそうだ。

サイボウズ ソーシャルデザインラボが、働く親(以下、親)側に「使いたかったが使えなかった制度や働き方があったとき、誰かに相談できたか」を尋ねると、33%が「どこにも相談できなかった」と回答した。相談できたという人を見ても、「職場の上司への相談」は18.4%、「人事・労務への相談」は10.2%にとどまっている。
改正育児・介護休業法の先にある課題。不登校対応で生まれる親と企業の認識ギャップが、人事には見えていない離職リスクになる
一方で、人事担当者側に「子どもの不登校・行き渋りを理由に、相談/休暇申請・離職した従業員がいることを把握していますか」と聞くと、「いないと思う」が25.6%、「おそらくいるが把握していない」が27.8%となった。両者を合わせると53.4%と、半数以上が実態を把握しづらい状況にあることがわかった。小中学生の約3.9%が不登校という文部科学省のデータを踏まえれば、「いない」のではなく「見えづらい」可能性が高い。なお、この傾向は企業規模が小さいほど顕著で、従業員100人未満の企業の人事は約6割が「いないと思う」と回答している。
改正育児・介護休業法の先にある課題。不登校対応で生まれる親と企業の認識ギャップが、人事には見えていない離職リスクになる
さらに、人事に「従業員の子どもが不登校・行き渋りになった際のサポート状況」について尋ねた。「すでに取り組んでいる」企業は16.6%で、「今後、取り組む予定」が25.8%、「今後に向けて検討したい」が33.8%、「予定はない」が23.8%という結果だった。
改正育児・介護休業法の先にある課題。不登校対応で生まれる親と企業の認識ギャップが、人事には見えていない離職リスクになる

「制度の周知」を求める従業員、実行できていない企業

他方で、親側に「仕事を続けやすくするために、企業に求めること」を尋ねると、最も多かったのが「使える制度の積極的な周知」で53.6%と半数を上回った。
改正育児・介護休業法の先にある課題。不登校対応で生まれる親と企業の認識ギャップが、人事には見えていない離職リスクになる
では、実際の企業側の周知状況はどうなのだろうか? 「従業員に対して、家庭事情で利用できる制度・休暇(介護休業を含む)の活用方法を積極的に周知しているか」を尋ねると、「積極的な周知を行っている」人は19.4%で、「入社時・制度説明時に案内」(28.8%)や「申請があれば案内」(27.4%)など、限られたリソースの中で一定の対応を行っている企業も多かった。

しかし、先述の回答をみると制度が広く知られれば親は利用を検討しやすくなり、離職の抑止も期待できるため、最も着手しやすいギャップだといえる。
改正育児・介護休業法の先にある課題。不登校対応で生まれる親と企業の認識ギャップが、人事には見えていない離職リスクになる
実際に相談しなかった理由としては「相談しても変わらない」が29.6%、「言い出せない雰囲気」が22%、「評価への悪影響」が12.2%となっており、これらの回答は計63.8%を占めた。
改正育児・介護休業法の先にある課題。不登校対応で生まれる親と企業の認識ギャップが、人事には見えていない離職リスクになる
他方で、自社を「相談しやすい職場だ」と考える人事担当者は45.8%(「思う」+「どちらかといえば思う」)にのぼり、企業の自己評価と従業員が感じる「相談のしにくさ」との間には大きな開きがある。
改正育児・介護休業法の先にある課題。不登校対応で生まれる親と企業の認識ギャップが、人事には見えていない離職リスクになる

4人に1人が離職・転職・時短を実行、人事の離職リスク認識は途上段階にある

不登校・行き渋りの影響で、実際に「離職」が5.8%、「転職」が8%、「時短・職種変更」が7.8%、「休職」が3.2%と、合計で24.8%(4人に1人)が行動に移していた。こうした行動をとった割合は男性で22.8%、女性で26.8%とどちらも2割を超え、働く父親も決して無関係ではないことがわかる。
改正育児・介護休業法の先にある課題。不登校対応で生まれる親と企業の認識ギャップが、人事には見えていない離職リスクになる
一方、「子どもの不登校・行き渋りが従業員の離職リスクになりうる」と強く・ある程度認識している人事担当者は56.2%で、離職リスクとして「あまり認識していない」(28%)、「認識していない」(15.8%)を合わせた43.8%が、十分には認識できていない状況にある。
改正育児・介護休業法の先にある課題。不登校対応で生まれる親と企業の認識ギャップが、人事には見えていない離職リスクになる
不登校・行き渋りは特別な事情を持つ一部社員の問題ではなく、離職リスクや採用コストに直結しうる経営課題として捉えられる余地がある。看護休暇の対象拡大など制度整備が進む一方で、顕在化しにくい事情にまで対応を広げるには時間がかかるのも実情であり、既存の周知の仕方や相談しやすい風土づくりを少しずつ見直していくことが、次の一歩になりそうだ。

出典:サイボウズ ソーシャルデザインラボ「働く子育て中の親の33%が『どこにも相談できなかった』 人事の53%には実情が見えづらく お互いの認識に大きなギャップ」(2026年7月8日発表)

HRプロ会員なら、会員限定の記事や『HR総研』調査報告/そのほか多数のコンテンツが無料で利用可能!
<<メールアドレスだけの無料会員登録をする>>