自らも新米経営者として格闘しながらお客様への貢献を目指す

 当社は、カシオの人事管理システム事業が独立した形で2009年に設立されたソフトウェアベンダーだ。
貴社が今着手すべき改善ポイントとは?
これまで20年以上の長きにわたり、業務系パッケージである人事統合システムの「ADPS(アドプス)」、社員・組織の「見える化」を実現する人材マネジメントシステム「iTICE(アイティス)」など人事ソリューションを約4800の団体・企業様に導入いただいているが、現在では、企業の人事の役割が大きく変わりつつある中、お客様の企業価値向上に貢献することができる企業を目指して、人事コンサルティング、調査サービスといった新たな領域の人事・人材関連サービスを積極的に拡大しているところだ。

  私自身はカシオに入社し、人事ソリューションの営業担当として数多くのお客様へのご提案や導入に携わってきた。管理者としては営業課長から企画室長、営業部長、また、人事事業の部門長などを経験し、2013年8月、代表取締役社長に就任して、現在は新米経営者として自社の経営課題に取り組み、日々格闘している真っ最中だ。今日は、20年にわたるさまざまな企業の人事部門や業界有識者との交流の中で感じてきたことや、今、自分自身も1人の経営者として感じている課題、また、これまで会社の中でいろいろな立ち位置で仕事をし、役割が変われば視点が変わることを実感してきた経験も踏まえて、経営的な視点での戦略的人材マネジメントをテーマに話をさせていただきたい。

経営視点で見た、理想の経営実現のための課題は何か

  まず、理想の経営像とはどういうものか。これは、常に会社が元気な状態であり続けることではないかと私は考えている。ただ、バロメーターになる言葉はいろいろある。人によっては、社員がいきいき働いていること、あるいは業績が伸びていることかもしれない。経営層、事業責任者、現場のマネージャーなど、それぞれの役割に応じた視点によって、この状態の捉え方が変化すると強く感じている。
 そうした中で、経営視点で見たとき、理想の経営を実現するための課題は何だろうか。日々、いろいろなお客様とお話する中でよくお聞きし、私自身も今、思っていることを3つ挙げたい。
 まず1つ目は、経営の意図が正しく浸透していないことだ。企業理念や事業戦略が末端までなかなか届かず、下に行けば行くほど、各階層間での温度差が発生している。
 次に2つ目は、現場の「組織風土」が活性化しないこと。硬直化して元気のない職場が多く、昔なら世代の近い先輩が若手に会社の文化や仕事のやり方を伝えたが、そうした現場でのOJTも機能しなくなっている。
 そして3つ目は、マネージャー、リーダー階層に元気がないことだ。いろいろな役割が中間管理職に集中し、負荷がかかる中で、事業構造や仕事の仕組みを改善するためのリーダーシップが弱く、部下のマネジメントも育成もなかなか思うようにできていない。しかし、これら3つは、強い企業づくりのためには必ず解決しなければならない課題ではないか。

強い企業への変革にはリーダーの発掘・育成と早期戦力化が必要

貴社が今着手すべき改善ポイントとは?
  では、昨今の変化する市場において、強い企業へ変革するためにはどうすればよいのか。大事なことは、事業を担うべき「リーダーの発掘・育成」だ。実際のところ、事業の8割はリーダーで決まってしまう。また、社員全員の「早期戦力化」も重要だ。従来、人の育成には10年かかるといわれていたが、これを3年で終える。3倍速以上のスピードだが、時代の変化が速い中で、ゆったりと人を育てる余裕はどの企業にもないからだ。これらはカシオグループのトップが常に言っており、グループ内でも、お客様へのサービス提供でも、私どもの方針になっていることだが、いろいろな企業の経営者にお話すると「まさにそうだ」と共感いただくことが非常に多い。
 変化に柔軟に対応するためには、新しい事業スキームに合わせて、従来の基準にとらわれない新しい人材要件に沿った人材の発掘・育成が必要だ。それと同時に、その人材がどのように成長しているかを常に把握していることも求められる。また、重要な点は、要件に沿った能力が育成される環境が常に整っているかということで、その環境下においてこそ、社員は高いパフォーマンスを発揮することができる。そして、個人の能力は仕事を通してこそ成長するものであり、個人の能力を喚起するためには、モチベーションの向上が欠かせない。ただ、こうしたことはよくいわれていることではあるが、実際には非常に難しく、お客様からも「なかなかできていない」とよくお悩みをお聞きしている。

人材データ管理だけでなく調査・分析や施策提案まで一貫サポート

  さまざまなお悩みを持つお客様に対して、私どもは人事課題の抽出から改善施策の設計、人材データの管理までを一貫して検討することを大切にしながら、一貫した人材マネジメントソリューションをご提供している。これは、社内に散在している人材情報のデータ整備・一元管理を行う「データ管理」から、社員の状況を定期的に調査し、それぞれのお客様の課題を見極める「定期的調査・分析」へ、そして、提携コンサルタントによる人事制度設計・社員教育などを含む「コンサルティング・改善施策の設計」へ、「実行」へと、PDCAサイクルが常に回るように人材マネジメントを行うというものだ。
 ソリューションの実際例を挙げると、「定期的調査・分析」のメニューの1つとして「モチベーション調査」を行っている。これは、大脳生理学に基づく行動分析手法であるハーマンモデルをベースとして、上下を未来志向/現在志向、左右を論理的/感覚的として4象限に区分けし、社員が何を重視して働いているかを分析できる調査だ。たとえば、お客様のA社では、階層別や地域別、部署別にモチベーション特性を他社平均と比較した結果、「主任クラス」や「開発部門」などのスコアが低く、要注意ではないかということがわかった。そこで、分析結果をフィードバックする際に要改善項目をレポートし、課題を抽出して、それぞれのモチベーション向上のための施策をご提案した。そして、それを実施し、結果がどうなったかを時系列の中で見える化しながら次の手立てにつなげるということをさせていただいている。
 また、企業の中で、経営者なら経営方針、人事なら人材分析、事業責任者なら組織力把握、現場責任者なら部下育成を考えるというように、役割が違えば視点が違う。それぞれの視点で人材データを活用し、多角的な人材マネジメントを全社レベルで実施していただける仕組みになっていることも、私どものご提供するソリューションの大きな特色だ。

人材システム導入を課題解決につなげる3つのポイント

貴社が今着手すべき改善ポイントとは?
  私自身も、自社で人材マネジメントシステム「iTICE」を導入し、いろいろな人材データの見える化を進めているが、こうしたシステムは「入れたら終わり」ということでは当然ない。日頃、部門長たちやマネージャーたちにフィードバックする中でも強く言っているが、システム導入を課題解決につなげるためには、次の3つのことが大切だと私は考えている。
 1つ目は「気づく」ことだ。ツールから出てくるデータの結果はあくまでも指標、モノサシのひとつ。これをネタにしながら人と組織の状態や変化に気づくことが重要で、そのためには、見る人の役割、目的、観点に応じた見える化や、時系列での変化の見える化、さまざまな情報を組み合わせた立体的な見える化が必要になる。一番重要なのは、見える化して何に気づくかだ。
 2つ目は「対話する」こと。サーベイの結果は、低く出たからといって叱責するようなものではない。そこにはさまざまな課題が内在しており、それを掘り起こすためにはポジティブなコミュニケーションが欠かせない。必要に応じたフィードバックをタイムリーに行い、積極的に対話することだ。
 そして、3つ目は「観察する」こと。施策を実行したら、前と比べてどう変わっているか、継続的に比較を行い、状態の変化に応じて次の施策を立案することが大切になる。
 今、私が考え、実践していることをお話させていただいたが、私どものソリューションが多くの企業様の課題解決の一助となることを願っている。
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