就職ナビ掲載のインターンシップ募集情報が倍増

さらに政府自体が、学生と企業のミスマッチ解消と学生の就職率向上のために、インターンシップを採用に活用することを推進しようとしています。選考時期を遅らせようとする動きと一見矛盾するのですが、政府は産学連携でのインターンシップによって、結果的に採用に結びつけて就職率アップを目指す施策を増やそうとしているのです。
 そうした動きを受け、2016年度新卒採用を待たず2015年度新卒採用から、インターンシップを実施する企業が急増しているのです。就職ナビ運営企業などが設けているインターンシップ受付サイトでは、インターンシップ募集の情報掲載企業数が昨年に比べ倍増しており、いかにインターンシップによる採用を効果的に増やすか、企業による実験的な試みが多数進行していることが伺えます。大学側でも企業からのインターンシップ学生受け入れが急増しており、今後この動きにどのように対応していくかを検討しているところが多くなっています。では、今後インターンシップによる採用選考の動きはさらに広がるのでしょうか。おそらく政府などがよほど強い規制を効かせない限り、間違いなく広がるでしょう。
 第1に、選考開始時期が大幅に遅くなる中、インターンシップ採用する外資系企業などと選考時期の差が一層広がり、早期に優秀人材に接触したい大企業の動きが予測されること。
 第2に、経団連などの規制が弱くなること。
 第3に、多くの学生がインターンシップ採用を望んでいること。HRプロが調査したデータでは、選考・内定に直結するインターンシップを望んでいる就職活動学生は、文系の77%、理系の75%に及びます。望んでいない学生はわずか4~5%程度に過ぎません[図表1]。
 第4に、大学のキャリアセンターも必ずしも採用につながるインターンシップを否定しているところばかりではないこと。HRプロ調査では、選考・内定とインターンシップを切り離すべきと考えている大学キャリアセンターは33%にすぎません[図表2]。
 第5に、政府自体がインターンシップによって結果的に就職率が上がることを望んでおり、その施策を打っていること
――などが理由として挙げられます。
第32回 インターンシップについて
第32回 インターンシップについて

広がる都市圏と地方との格差

インターンシップ自体はミスマッチの解消に有効であることは間違いありませんし、こうした動きが現在の面接偏重の採用選考を是正することは望ましいと言えます。ただ、検討しなければならない課題も少なくありません。
 多くの学生は、遅くとも大学3年になった時から早々にインターンシップに参加する準備を行わなければならなくなるし、インターンシップを受けるための選考も増えるでしょう。つまり、一層活動が早期化するということです。
 また、都市圏と地方の格差も問題になります。セミナーや会社説明会は全国の主要都市で開催することもありますが、インターンシップとなるとその受け入れ場所は本社所在地に限定されることがほとんどと思われます。地方の学生がインターンシップを受けたいと思っても、金銭的・時間的な面で都市圏の学生と差が出ることは間違いありません。企業側でも、採用活動が長期化することと、インターンシップを受け入れる現場の負荷をどうコントロールするかという問題も増えてきます。

中小企業でインターンシップ実施企業が倍増

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