慶應義塾大学大学院 高橋 俊介 氏

トークセッション 「日本の成長戦略を支える人材戦略はいかにあるべきか」
すべての施策を連携させ、ワンセットで実行する必要がある。

雇用維持型から労働移動支援、社会人の学び直し、多元的な働き方、キャリア教育の推進、女性活躍の推進など、すべて方向性としては大賛成。また、これらすべての施策を連携させワンセットで実行する必要があると思った。これはやるけどこれはやらないということをやると、非常に大きな軋みが生じるだろう。
私はここ5年ほど沖縄で、一括交付金を使った事業活動の支援をしている。沖縄は極端にサービス業に偏っている地域だ。若年層失業率は日本でいちばん高い。輸出型製造業はゼロで、おまけに中堅・中小企業、オーナー企業が多い。そんな沖縄でいちばん戦略的に重要な産業というのは、観光ビジネスだ。もう一つが、コールセンターのようなサービス化したIT。そして医療介護サービス。
私はモノづくりの時代は終わったとは言わないが、日本の将来の産業構造を考えると、サービス業ないしはサービス化した産業の力が、大変重要だと思っている。でも残念ながら、現在そこにはマネジメント・ケイパビリティが明らかに不足している。日本において、サービス業の比率が高くなっていくのは避けられない。けれども、サービス業の生産性やマネージメントの水準は、製造業のように高くはない。日本のサービス業を成長させるためにも、この分野に優秀な人材を移動させる必要がある。
社会人の学び直しについて、日本は欧米、新興国とくらべても非常に極端な特徴がある。大学院や大学の学部に入学する人の社会人比率が圧倒的に少ない。一方、これまで有用であったキャリアが役に立たなくなる現象が、さまざまな企業で起きている。雇用の不安定化より深刻なのは、キャリアの不安定化である。これを解決するためにも、社会人の学び直しは有効だろう。それには、しっかりと基礎から学び直すことが必要だ。スイスの時計学校で精密機械の職人を育てるのに、最初に教えることの中で重要なのは物理学の基礎。例えば光の屈折はどんな原理で起こるのかという原理原則から学ぶことで、状況がかなり変わっても応用力が効く。「応用力が付くような基本的な教育」が学び直しには最も重要で、それをやらなければだめだという認識も広まって欲しい。


一橋大学大学院 守島 基博 氏

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