不確定要素が多く変化の激しい現代社会においては、先回りして行動することや、自らが先頭に立ってプロジェクトを動かすことが重要だ。この率先して物事を動かす力を「イニシアチブ」という。ただし、この「イニシアチブ」は、シーンによって意味合いや活用法が変わる言葉でもある。人事にとっても、採用や育成の面でインプットしておいて損はないキーワードだ。そこで本稿では「イニシアチブ」の意味や使い方、ビジネスシーンにおいてイニシアチブを取る方法などを解説していく。
「イニシアチブ」とは? ビジネスでの意味や使い方、取る方法を解説

「イニシアチブ」の意味

「イニシアチブ」とは、率先して動き、優位に立つことや、その力を指す。広辞苑では「率先して行動し、物事をある方向へ導く力。主導権」と定義されている。

●ビジネスにおけるイニシアチブの意味

ビジネスにおいて「イニシアチブ」は、主に「主導権」や「実行力」を指して用いることが多い。具体的には、複数の立場の関係において主導権を握っている状態や、プロジェクトを先導して進める姿勢のことである。ビジネスにおいて率先して動き、主導権を持つことで業務を円滑に進めることができる。

●英語の「initiative」の意味

イニシアチブは英語では「initiative」と表記する。これは「主導権」、「自発力」、「率先」などを意味する。また問題解決のための「構想」や「戦略」の意味で使われるケースもある。

●「イニシアティブ」との違い

「イニシアチブ」は「イニシアティブ」と発音・表記することもあるが、意味は同じである。そのため、統一できていれば、どちらを使用しても問題はない。

政治とスポーツシーンにおける「イニシアチブ」の意味

ビジネスシーン以外にも政治やスポーツのシーンでも「イニシアチブ」という言葉を耳にする。それぞれの使い方と意味を解説しよう。

●政治での「イニシアチブ」

政治での「イニシアチブ」は、直接民主制の下で国民が立法に関する提案を行う制度である「国民発案」や、議会における「発案権」の意味で使われるがある。また「構想」や「政策」を指す場合もある。

●スポーツでの「イニシアチブ」

スポーツでの「イニシアチブ」は、「優勢な立場」や「先手」という意味で用いられる。使い方によっては、試合のペースを握るために攻勢を仕掛けたり、相手に圧力をかけたりすることも含まれる。

「イニシアチブ」の類語や言い換え

「イニシアチブ」には近い意味の言葉がいくつかあり、場面に応じて言い換えることができる。以下がその例だ。

●主導

主導とは、物事を主となって動かしていくこと、その権限を持つことである。「イニシアチブ」の言い換えとして使いやすい言葉と言える。

●リーダーシップ

リーダーシップは、組織やチームを統制して引っ張る能力を指すのこと。自らが中心となって物事を推進する点では「イニシアチブ」と同じだが、リーダーシップは集団を率いる場合に限定して用いる。

●率先

率先は、ひとの先に立って行動することである。自発的な行動を意味する点では「イニシアチブ」と同様だ。ただし率先には、先に立つことで他者に影響を与えたり、追随させようとしたりする意味が含まれている。

●積極的

積極的は、「イニシアチブ」と同様に、能動的に行動する姿勢を表す言葉だ。実行力や行動力について話す際に「イニシアチブ」から言い換えることができる。

「イニシアチブ」の対義語

「イニシアチブ」の対義語としては、「追従」や「追随」がある。どちらも、後についていくことや従うこと、他人の真似をすることを意味する。他者の先を行くことを意味する「イニシアチブ」が主体的である一方で、受動的であるということだ。

ビジネスシーンにおける「イニシアチブ」の使用例

次に、ビジネスシーンにおいて「イニシアチブ」という言葉がどのように使用されているかを見ていこう。ここでは主な3パターンを紹介する。

●「イニシアチブを取る」

「イニシアチブを取る」とは、他者との関係において、目標達成のために主体的に行動する意味で用いる。具体的には、新しいアイディアを発案したり、プロジェクトを率先して推進したりすることだ。また同じ意味で「イニシアチブを握る」という言い方もある。

使用例
・次の会議はイニシアチブを取って進めよう
・市場でのイニシアチブを取る(握る)ことが、売り上げ増につながる

●「イニシアチブを発揮する」

「イニシアチブを発揮する」とは、率先して行動する力を示すことを指す。組織やチームを主体となって先導し、周囲に影響を与えるような場面では、リーダーシップと同じような意味として使う。

使用例
・私がイニシアチブを発揮することを周囲から期待されている
・あなたがイニシアチブを発揮したことで、商談を上手くまとめることができた

●「戦略的イニシアチブ」

「戦略的イニシアチブ」とは、企業や組織が目標実現に向けて掲げる主体的な取り組みを意味するのこと。つまり、ここでいう「イニシアチブ」は「構想」や「計画」の意味合いで使用されることが多い。

使用例
・企業の持続的成長のためには、戦略的イニシアチブが必要だ
・我が社の戦略的イニシアチブは、〇〇による市場拡大である

「イニシアチブ」を取るメリット

ビジネスの様々な場面において「イニシアチブ」を取ることは重要だ。「イニシアチブ」を取ることで得られる主なメリットを挙げていこう。

●スムーズな意思決定ができる

会議や商談などの意思決定の場において、しばしば意見が出なかったり、まとまらなかったりする。そこで誰かがイニシアチブを取って発言したり、進行をしたりすることでスムーズに意思決定まで運ぶことができる。一つの発言に乗じて意見を重ねたり、他者の発言を促したりするすことで活発な意見交換を行えたりするからだ。

●生産性の向上や事業の成長

主体的に臨むことで業務を円滑に進めることができ、個人の成果につながるのは言うまでもない。さらに、個人だけでなく、周囲を引っ張る形でイニシアチブを発揮すれば、チーム全体に好影響を与え、生産性の向上や事業の成長につながる。

ビジネスにおいて「イニシアチブ」を取る方法

ビジネスにおける「イニシアチブ」の重要性は理解できても、行動できなければ意味がない。どのように「イニシアチブ」を取ればいいのか。ここで「イニシアチブ」を取る方法を解説していこう。

●積極的に自分の意見を伝える

まず積極的に自分の意見を伝えることが、「イニシアチブ」を取るための第一歩だ。いくら良い意見を持っていても、それを相手に伝えなければ意味がない。明確な自己主張をすることで、その場の空気感や進行をコントロールしやすくなる。

●素早く決断する

「イニシアチブ」を取るためのアクションには、素早い決断が不可欠である。そのために、常に進行状況や業務課題を把握し、データ分析に基づいた自分の考えを持っておきたい。

●新しい提案を行う

新しい事業アイディアや課題解決策の提案をすることも、「イニシアチブ」を取る方法の一つだ。自分が提案者となることで、周囲を巻き込めるようになる。

●質問を想定して回答を用意しておく

会議や商談に臨む際には、事前に質問を想定して、回答を準備しておくといいだろう。スムーズにその場を進行できるだけでなく、相手の疑問に対して的確に応対することで信頼を得ることにつながり、意見が通りやすくなる。

●根拠を示し、相手の納得感を得る

「イニシアチブ」を取りたいからと言って、闇雲に思ったことを発言するだけでは、聞き流されてしまうだけだ。自分の意見を述べる際には、根拠を示すと良い。相手の納得感を得ることができ、自分の意見に耳を傾けてもらえる。

「イニシアチブ」を取る人の特徴

「イニシアチブ」を取る人には、どういった特徴があるのだろうか。主な7つを紹介したい。

●リーダーシップがある

「イニシアチブ」を取る人は、リーダーシップがあることが多い。目標に向かって先頭に立ち、組織を導いていく。そうした頼もしい姿に周囲も一目置き、「イニシアチブ」を譲りたくなるものだ。

●自信がある

大きな自信を持っている人も「イニシアチブ」を取りやすい。逆境や困難に対して物怖じせず堂々としている人は、安心感を抱かせ、周囲を巻き込んでいく。

●聞き上手

「イニシアチブ」を取る人は、話し上手なだけでなく聞き上手であるケースも少なくない。会話をスムーズに進めるためには、相手の意見に耳を貸し、それに対して適切に返答しなくてはいけないからだ。場の空気をコントロールするためには聞く力が欠かせない。

●観察眼が鋭い

観察眼が鋭いことも「イニシアチブ」を取る人の特徴と言える。他人の仕草や言動を細かく観察して心理を読むことで、相手の気持ちに寄り添った行動が取れたり、逆手を取って意外性を打ち出したりすることができるのだ。

●間の取り方が上手い

「イニシアチブ」を取るには、間の取り方が大切になってくる。相手の意見を聞かずに矢継ぎ早に自己主張しても、自己中心的な人だと思われるだけである。効果的なタイミングで自分の意思を伝えることで相手の心を掴むことができる。

●決断力がある

決断力がある人は、「イニシアチブ」を逃さない。優柔不断な人は、主導権を握れる機会が訪れても、行動に移せずに、せっかくの時機を逸してしまう。

●分析力がある

「イニシアチブ」を取るには、相手を納得させるだけの根拠を示す必要がある。つまりデータに基づいて話せたり、論理的に説明したりできる分析力のある人は、周囲を味方につける提案を打ち出していける。

まとめ

ビジネスにおいて「イニシアチブ」が求められる場面は多い。率先して動き、主導権を持つことで物事を円滑に進められるからだ。主導権を握りたいと考えるビジネスパーソンは、世の中の変化にいち早く対応する実行力と決断力を身に付けたり、相手の納得感を得るための分析力を磨いたりして、いつでも先回りして行動できるように心掛けたい。人事としても、そのような人材を採用したり、育成したりすることで企業の持続的な成長につなげていけるのではないだろうか。

よくある質問

●「イニシアチブを取る」の言い換えは?

「イニシアチブを取る」の言い換えとしては、「主導権を握る」、「率先する」などがある。「主導権を握る」とは、物事を主となって動かしていく権限を持つこと。「率先する」とは、「ひとの先に立って行動すること」を言う。

●「イニシアチブ」の使い方は?

ビジネスシーンにおいては、「イニシアチブを取る(握る)」、「イニシアチブを発揮する」、「戦略的イニシアチブ」などが使用例としてある。「イニシアチブを取る(握る)」は、他者との関係において目標達成のために主体的に行動することを意味する。「イニシアチブを発揮する」は、率先して行動する力を示すことを言う。「戦略的イニシアチブ」とは、企業や組織が目標実現に向けて掲げる主体的な取り組みを指して使う。
  • 1

この記事にリアクションをお願いします!