「残業は悪」ではないが、月30時間までなら……

「残業が多い」ことをブラック企業ととらえる学生は4割ほどしかいなかったわけですが、具体的な残業時間の選択肢を示して選んでもらったところ、文系、理系ともに5割前後の学生が「月30時間くらいまでの残業ならいい」と回答しています[図表5]。「残業はないほうがいい」とする学生は、文系で26%なのに対して、理系では16%と10ポイントも低くなるなど、全体的には文系学生よりも理系学生のほうが残業時間を許容する傾向となっています。込み入った実験では時間通りに終わることは少なく、時には研究室に泊まり込むこともあるなど、仕事と実験をダブらせて考えたとき、残業もやむなしと考える傾向が強いのではないでしょうか。
第73回 2018年の就活生の動向は
そんな理系学生でも「残業はないほうがいい」から「月60時間まで」の合計は90%に達しており、「月100時間を超える残業でも構わない」とする学生は3%だけです。文系学生では「月60時間まで」の合計は94%にもなり、「月100時間を超える残業でも構わない」とする学生はわずか1%にとどまります。高度経済成長期の話だけではなく、つい数年前まで、月100時間の残業がある会社はゴロゴロあったように思います。もちろん長時間残業を肯定しているわけではありませんが、振り返ってみたときに、時代の変化の速さに驚いているところです。

安定志向が強くなる企業選択の軸

学生は企業を選択する際にどんな点を重視しているのか、いくつかの観点から聞いてみましたが、今回は特徴的な二つのデータを昨年と比較しながら紹介します。
まずは、「会社の魅力」として重視するポイントです[図表6]。文系では、昨年は「経営者・ビジョンに共感」が41%でトップ、次いで「安定している」が31%でしたが、今年は僅差ではありますが「安定している」が36%でトップ、次いで「経営者・ビジョンに共感」が35%という結果になりました。理系でも、昨年は「技術力がある」が30%でトップ、次いで「安定している」26%という順位でしたが、今年は「安定している」が31%でトップに躍り出て、「技術力がある」が26%で2位に落ちてしまいました。文理ともに「安定している」がトップになるという、大手企業志向に通じる結果になっています。
第73回 2018年の就活生の動向は
もう一つ、「雇用の魅力」として重視するポイントも見てみましょう[図表7]。文系では、昨年のトップは「社風・居心地が良い」の39%で、「福利厚生がしっかりしている」が37%で続いていましたが、今年は「福利厚生がしっかりしている」が42%で、32%の「社風・居心地が良い」に10ポイントもの差をつけてトップとなっています。理系では昨年から「福利厚生がしっかりしている」が36%、「社風・居心地が良い」が33%で2位という序列でしたが、今年は「福利厚生がしっかりしている」が38%と2ポイントを伸ばしたのに対して、「社風・居心地が良い」は30%と3ポイントを落としたことで、二つの項目のポイント差はさらに広がる結果となっています。今年は文理ともに「福利厚生がしっかりしている」がトップとなったわけです。「福利厚生がしっかりしている」も大手企業をイメージする項目と言え、こちらからも大手企業志向の強まりを裏付けるものとなっています。
第73回 2018年の就活生の動向は
企業選択の軸として、「安定している」や「福利厚生がしっかりしている」ことを重視することもよいのですが、企業規模にとらわれるのではなく、自分がそこで働くことをイメージして企業研究をしてもらいたいと思います。数字では分からない、企業ごとの特徴を知るためにも、できるだけ社員と会って話を聞くとともに、社員が醸し出す雰囲気を感じ取ってほしいものです。逆に言えば、企業はどんどんそのような機会を学生に提供していく必要があります。セミナーを人事部門だけで運営するのではなく、現場の社員の協力を仰ぐのはもちろんのこと、面接選考が始まった後も、面接と面接の間に社員との懇談会を挟んだり、職場見学の機会を設けたりするなど、ぜひ工夫してみてください。

この記事にリアクションをお願いします!