3 リーダー育成のための組織体制

ここまで、リーダー育成のブレイクスルーを起こすために、次世代リーダー育成を「リーダータレントマネジメント」へ進化させ、時代の要請である後継者育成に、子会社経営を本気で活用すべき、と述べてきました。

いずれの施策も実行するには、相当なパワーがかかることであり、現実の組織運営や企業経営に影響が及ぶことに間違いありません。しかし既に多く指摘されているように、リーダーは経験で育つものである以上、リーダーの育成を、意図的・計画的に行なおうとすれば、現実の組織や業務に影響が出ることは仕方がないことです。組織に波風を立てずに、リーダーや後継者を育成しようとすること自体が難しいのです。

そこで私は、今後リーダー育成のブレイクスルーを起こすために、今よりパワフルに組織やリーダーを動かし、企業経営にダイレクトに関わるもう一つの人事部として「経営人事部」を創設するべきだと思っています。経営人事部は、リーダー開発だけを専門に行う、トップ直轄の部門です。リーダーを把握し、人を見極めることができる人材と、多様な事業経験を持つ、事業を見極められる人材、そして社外のプロから構成されたチームを創るのです。

ルノーと日産自動車のCEOであるカルロスゴーン氏は、「最高経営責任者が後継者に責任を持つことは大きな間違いだと思っています。それは取締役会の責任です。」と言っています。確かに欧米流の経営における企業統治を純粋に目指すなら、CEOの選定は取締役会の責任、ということになります。しかし、多くの日本企業が選ぶ企業統治は、そこまで取締役会が大きな権限と役割を持った姿なのだろうか?と疑問にも思います。それに代わる方法として、経営陣と人事が主体となって、取締役会とも連携しながら、透明なプロセスで後継者を選ぶ責任部門である経営人事部を創設すべきだと思います。
リーダー育成を3つのポイントから再考する
私がこれまでの人生でお会いしたリーダーの方々は、皆、会社を心から愛し、自社が社会にどのように期待されているかを知っていました。組織の仲間と切磋琢磨し、喜びや苦労を分かち合い、相手の成長や生き甲斐を考えて働きかけています。多様な経験を通じて己を磨き続け、自己実現と社会貢献を果たそうとしています。

どんなに時代が変わっても、このような素晴らしいリーダーが企業には必要です。さらにいえば、「育成する力」を磨き続ける不断の努力無くして、勝ち残る企業を創ることはできません。自社のリーダー育成力を常に検証し、時には既成の枠組みやしがらみを絶って、新たな一手を打つ勇気が求められているのです。

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