“HR Tech”からの提言

◆各社CHROからのメッセージ
HR Techのメイン・セッションの一つ、「Engaging and Retaining the Talent of Tomorrow」というセッションでは、企業のCHROによるパネル・ディスカッションが行われました。 IBMのCHROである Diane Ghersonは、組織変革のための重要な3要素は、1)リーダーシップ、2)これまでにない新たなスキル(主にデジタル関連)、3)従業員体験であると伝え、従業員エンゲージメント向上に向け年間を通してパルス・サーベイを行っていることや、各従業員ごとにパーソナライズされたキャリアプランの策定といった取り組みを紹介しました。
また、「一見矛盾するようだが、テクノロジーによってヒューマニティが再導入される。しかもそれは従来よりも素早く行われる。」とADP社のCHROが追加しました。まさにテクノロジーとヒューマニティの共存という、AI時代に欠かせない考え方です。
スターバックスのCHROは、「今は人事の大変革期と言える。誰も経験したことがないことでもあり、それはチャンスであるとも言える。施策はdisruptive(破壊的な、あるいは、破壊力のある)でもあると同時にpractical(現実的)でもなければならない。」とコメントしました。

◆2017年に向けての4つの重点事項
また、カンファレンス全体を通じて、 2017年に向けて人事は次のような点を強化する必要があると伝えられました。
① AIによる補佐 (AI Enabled Virtual Assistants)
② マネージャ機能のより一層の有効化 (Manager Effectiveness)
③ チーム内及びチーム間における「知」の共有 (Team Intelligence)
④ マーケティング・ツールの人事への適用 (HR Leaders Using Marketing Tools)

◆今後2、3年の間に人事担当者に必要とされる新たなスキル

重点事項に続き、今後人事担当者に必要とされる新たな 4つのスキルも紹介されました。
① データ分析 (Data Analytics)
② チーム内及びチーム間における「知」の共有 (Team Intelligence)
③ コグニティブ・コンピューティングに関する知見 (Cognitive Computing)
④ 消費者が求めるものを企業が提供するために必要な課題解決のためのクリエイティビティの活用 (Design Thinking)

まとめ

最後に、本年の HR Techを通じた考察を以下のキーワードを用いてまとめます。
第4回 世界のHRテクノロジーの動向と日本の人事への適用可能性
まず、「従業員体験の向上」を図ることが大変重要です。従業員体験を向上させるための一つのアプローチが、従業員エンゲージメント率という指標の向上に向けてアクションを取っていくことです。従業員エンゲージメント率の向上が業績アップにつながったという事例が多数あります。また、従業員エンゲージメント率の向上は離職率の低下にも寄与するため、再雇用や再教育のコスト削減も可能になります。
次に、「候補者体験の向上」も重要なテーマです。これにより優秀人材を獲得しやすくなりますし、残念ながら今回は入社に至らなかった場合も、その候補者は企業にとっての大切な顧客にもなりうるわけで、採用プロセスにおいて良い体験をした候補者は心強い「ファン」になってくれる可能性が高いです。
そして、「従業員体験の向上」「候補者体験の向上」を実現するためには、人事に関する膨大な過去データやエンゲージメント調査の結果をもとに高度な分析を行い、「次なる手」を早めに打っていく必要があります。また、ますます多様化する価値観に柔軟に対応し、従業員や候補者の満足度を上げるためには、コンシューマ化を推進し、ゲーミフィケーションを取り入れるといったアプローチも現代には大切な要素です。
本記事が、皆様の人事領域で最新トレンドを取り入れるきっかけになりましたら幸甚です。

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