調査レポート

「2016年卒学生の就職意識調査」結果報告【1】
急増するインターンシップ参加学生

HR総研では、楽天株式会社が運営する「みんなの就職活動日記」の協力の下、2016年卒業予定学生を対象にした就職意識調査を実施した。スケジュール変更により就職意識が遅れていると言われる今年の就活学生だが、果たして本当にそうなのか、昨年の調査データとも比較しながら見ていきたい。

スケジュール変更報道が意識醸成
まずは就職を意識し始めた時期について見てみたい。昨年の調査は12月下旬に行われていたため、今年とは1ヶ月ほどの調査時期の違いはあるものの、今回の調査が11月下旬の実施であることを考えれば、選択肢「学部3年生(院1年生)10月〜11月」への影響がそれほどあるとは考えづらい。にもかかわらず、文系、理系ともに「学部3年生(院1年生)10月〜11月」が大きく減少している。文系では25%→7%、理系では36%→10%といった具合だ。
では、昨年と比較して伸びた時期はいつだろうか。文系で目立つのは「学部2年生から」で、9%→20%と倍増している。政府の要請により、これまでの「倫理憲章」から採用スケジュールが3〜4ヶ月も繰り下げられることになる過程を多くのマスコミが報道し、いやがおうにも関心を持たざるを得なかったとも言える。

[図表1]就職を意識し始めた時期(文系)
理系で目立つのは「学部3年生(院1年生)4月〜6月」で、34%→48%にもなっている。スケジュールは繰り下げになるものの、インターンシップ募集企業が急増し、インターンシップに参加しないことは就職活動に乗り遅れることを意味するかのような風潮の中で、就職を意識してきたようである。文系で増加が目立った「学部2年生から」も3%→9%へと増えている。

[図表2]就職を意識し始めた時期(理系)
昨年までのスケジュールを支持する学生が最多
「学業に専念できる時間の確保」「留学生の増大」など、今回のスケジュール変更は学生のためという意味合いが強かったわけであるが、果たして学生は新スケジュールを好意的に受け止めているのだろうか。結果を見てみると、新スケジュールを好意的に受け止めている学生は、文系、理系ともに2割にも満たない。最も多かった回答は「昨年までのスケジュールの方がよい」で、文系の64%、理系の65%とおよそ3分の2の学生が昨年までのスケジュールを支持している。もちろんスケジュールが変わることで、昨年までの先輩たちの活動報告が参考にならなくなることや、各企業がどう動くのか予測がつかないといった、「変化」を敬遠する学生も含まれるだろう。しかし、「変化」を差し引いたとしても、「就職先が決まる時期が遅くなる」ことへの異論や、理系においては卒業研究の時期と重なることへの抵抗は強いだろう。ただ面白いのは、文系、理系ともにほとんど同じ傾向となったことである。

[図表3]新スケジュールの評価
大手企業は新スケジュールを守ると考える理系学生
企業は新スケジュールに沿った採用活用をすると思うかどうかを聞いてみた。「多くの企業が守ると思う」と答えた学生は文系、理系ともに15%程度で並んだが、「大手企業は守ると思う」と考える学生は文系と理系では分かれた。理系では過半数の53%が「大手企業は守ると思う」と答えたのに対して、文系は38%にとどまった。理系では「多くの企業が守ると思う」と合わせれば69%と7割近い学生が「大手企業は守る」と考えている。一方、「守る企業はごく一部だと思う」と回答したのは、理系では28%にとどまり、文系では41%と最多になった。

[図表4]企業は新スケジュールを守ると思うか
8割以上の学生が就職活動に不安を感じている
自身の就職活動に不安を感じているかを聞いたところ、文系では「とても不安」54%、「やや不安」33%で合計87%、理系では「とても不安」49%、「やや不安」35%で合計84%が「不安」と回答している。理由を聞いてみると、「全体のスケジュールが変わったから」「志望する企業のスケジュールが不明だから」「自己分析ができていないから」「業界研究ができていないから」などが多くなっている。

[図表5]就職活動に不安を感じるか
依然として強い大手企業志向
景気が良くなって企業の採用数が増えてくればくるほど強くなるのが学生の「大手企業志向」だ。今回のアンケートでもその結果ははっきりと表れている。「絶対大手企業」「できれば大手企業」を合わせると、文系の65%、理系の70%が大手企業志向ということになる。昨年の調査ではそれぞれ59%、68%だったことを考えれば、昨年よりもさらに大手企業志向が強くなっている。スケジュール変更により、中堅・中小企業の採用がますます厳しくなると予想される中、企業にとっては厳しい現実である。

[図表6]志望する企業規模(文系)
[図表7]志望する企業規模(理系)
インターンシップ参加者が7割に急増
これまでのインターンシップへの参加状況について見てみる。文系で「0社(応募をしていない)」と回答した人は、2015年卒学生では43%だったのに対して、2016年卒学生ではわずか14%にとどまり、逆に「4社以上」と回答した学生は17%にも上る。この傾向は理系についてもほぼ同様だ。

[図表8]インターンシップへの参加状況(文系)
実際にインターンシップに参加したことのある学生の割合で見てみると、文系は2015年卒の46%が2016年卒では70%に、理系でも同じく44%からが71%へと大きく伸びている。キャリアセンターや就職ナビに、インターンシップに参加するよう煽られているということなのだろうが、7割もの学生がインターンシップを経験しているというのは驚きの数字だ。インターンシップは、完全に就職活動の一部として考えられていると言える。また、早期のインターンシップ参加者は「就職意識が高い」「優秀な学生の割合が多い」と言われてきたが、それも垣根がなくなってしまったようだ。ただ、2016年卒採用では早くから「インターンシップ」が重要なキーワードになると言われてきたにもかかわらず、まだ1社も応募したことがない学生は「就職意識が低い」
と言うことができるかもしれない。学業に専念できるようにスケジュールを繰り下げたことが、かえって就職活動時期を早めるという皮肉な結果になっていると言わざるを得ない。

[図表9]インターンシップへの参加状況(理系)
情報源は就職ナビがダントツ
昨年までの調査では、インターンシップの情報源としては「キャリアセンター」がトップであった。ところが今回の調査では、「就職ナビ」が文系、理系ともに7割を超え、2位の「企業ホームページ」の倍以上となっている。次いで「キャリアセンター」となるが、文系では22%なのに対して理系は14%とやや低めとなる。理系は、ダイレクトに「企業ホームページ」で探したり、「研究室」で情報を収集する学生が文系よりも多くなっている。

[図表10]インターンシップの情報源
2週間タイプが半減し、短期インターンシップが増える
文系、理系ともに昨年比で大きく減っているのは「2週間程度」のインターンシップで、その他のタイプはすべて伸びている。「2週間程度」のインターンシップの多くは単位認定されるものの、インターンシップ先は学生が自由に選択できるわけではない。また、拘束期間の長さから敬遠され、もっと短期間のものに複数参加しようとしているようである。
逆に大きく伸びているタイプは、「半日」や「1日」、いわゆる1Dayインターンシップである。1Dayインターンシップは、複数の拠点で同一プログラムを実施することも比較的容易であり、1回当たりの受け入れ学生数を確保することができる。7割もの学生がインターンシップ参加経験者になったのは、まさしく1Dayインターンシップをはじめとする短期間のプログラムが増えたことによるものだ。2016年卒学生向けに公開された企業の採用ホームページをみる見ると、今後開催されるWinterインターンシップの案内があちらこちらに見受けられる。学生の最終的なインターンシップ参加経験者はさらに伸びるものと思われる。
インターンシップ先に応募する学生が約7割
インターンシップに参加した企業への応募意向を聞いたところ、文系の65%、理系の71%が「応募する」と回答。「未定」の学生がそれぞれ23%、19%あり、「応募する」学生はさらに増える可能性が高い。比率は少ないとはいえ、自分でインターンシップ先を志望していない単位認定型(2週間タイプ)が含まれることを考えると、自由応募で参加したインターンシップだけに絞れば、応募意向比率はさらに高くなる。
2016卒採用のキーワードとして「インターンシップ」がよく取り上げられるが、採用活動の有効な施策としてもはや切り離せなくなっている。
【調査概要】
調査主体:みんなの就職活動日記(楽天株式会社)
調査企画:HR総研(HRプロ株式会社)
調査対象:2016年卒業予定の大学生・大学院生
調査方法:WEBアンケート
調査期間:2014年11月20日〜11月26日
有効回答:839名(文系562名、理系277名)