「インポスター症候群」とは、自分の力で何かを達成し、周囲から高く評価されても、自分にはそのような能力はない、評価されるに値しないと自己を過小評価してしまう傾向のこと。

インポスター(impostor)は詐欺師、ペテン師を意味する英語で、「詐欺師症候群」と呼ばれることもあります。

成功体験から自信をつかむことができず、これまでの成功は自分の力によるものではない、ただ運がよかっただけで、周囲が手助けしてくれたからに過ぎないと思い込み、自分のキャリアはまがいものだと後ろめたく感じたり、いつか自分が“詐欺師”であることが発覚するのではないかといった不安な心理状態に落ち込んでしまったりする……こうしたことがインポスター症候群の特徴です。

インポスター症候群は、一般的に男性より女性が陥りやすいとされ、聡明で有能な女性、高いキャリアを築いている女性や専門職の女性に多い傾向があるともいわれます。

近年、インポスター症候群が社会的に注目されるきっかけとなったのは、フォーチュン誌が選ぶ「世界で最も有力な女性50人」の一人、米国フェイスブックのCOO、シェリル・サンドバーグ氏が、著書『LEAN-IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』で、インポスター症候群に苦しんでいた自身の過去を明かしたことでした。また、映画『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニー役で知られる女優のエマ・ワトソンも、自らがインポスター症候群であることを告白しています。

企業でも、昇進のチャンスがあるのに「自分には無理です」と尻込みしてしまう女性社員が少なくないといわれますが、その一部にはインポスター症候群のため自信を持てずにいるケースが含まれているかもしれません。また、最近は、女性活躍推進として女性管理職比率の向上が企業に求められているため、インポスター症候群に陥っている女性を管理職や役員などに登用した場合、「自分は数合わせのために選ばれたに過ぎない」と思い込んでしまうことも考えられます。

能力を持つ多くの女性人材が自信を持って管理職としてのキャリアを築き、高いパフォーマンスを発揮していく状況をつくるためには、人事がインポスター症候群に関する知識を持ち、必要に応じてカウンセリングなど医療面の支援体制も整えることが望ましいでしょう。