企業の採用活動は過去のエピソードを重視する傾向に

はじめに、ゲストスピーカーによるプレゼンテーションが行われた。

まず、トップバッターとして、中野智哉氏(株式会社i-plug 代表取締役)が、就活支援サービスである適性検査のデータから見える企業と学生のマッチングや、どのような経験がパーソナリティの変化に影響しているかを分析した調査について、情報を共有した。

中野氏によると、この調査は、「学生の経験」、「入社先のデータ」、「社会人基礎力」の3点を比較しながら、どのような経験に取り組んだ学生がどのように成長を遂げているのか、さらに企業はどういった学生のデータを見ながら採用活動をしているのかを明らかにするために行われたという。

中野氏はデータを挙げながら、大学生の社会人基礎力が上昇する要因となっている事項を解説し、「留学とインターンシップ(1ヶ月以上)の経験は社会人基礎力を確実に上げている」と述べ、さらに企業がどのような観点で学生の採用活動を行なっているかについては、「従来の学歴を元にアプローチしている傾向から、過去のエピソードを重視して学生にオファーをしている傾向に変化してきている」と指摘した。

企業のスタートアップに必要な人材とは

次に、永井希依彦氏(AeroEdge株式会社 執行役員)が、企業のスタートアップかつ製造業に必要な人材像について独自の見解を示した。

「心持ちとしては、経験は一旦取り払って、ゼロベースで取り組める人、未経験・低付加価値の作業を楽しんで柔軟に取り組める人、自分を失わないために明確なキャリア像を持っている人が必要。スキルとしては、課題提起だけでなくソリューションも提供してくれ、現場の作業員と汗水垂らして指導してくれる人、不慣れな現場でも立場の違う人とも短時間で明確に意思を伝えられる人、会計とITの2つの分野で実績を残してきている人が必要だ」と述べた。

さらに、なぜ外部人材を柔軟に活用するのかについては、「コストを抑える」、「柔軟性のある業務遂行」、「最新・最高の知見を導入できる」、「他分野・他業界の専門家を引き込むことでインプレッションの可能性が広がる」といったメリットを強調した。

学び直しには「アートとサイエンス」の造詣が今後に活きる

最後に、落合陽一氏(筑波大学 助教/学長補佐)がプレゼンテーションを行った。

落合氏は、教育をどうやって拡充するか、またそれに対応するイノベーション時代をどうやって育てるかを考えていくことが重要だと語った。「必要な人材とは、アートとサイエンスとデザインとエンジニアがわかる人間でなくてはならない」とし、現在の大学ではどれかが欠けがちであると指摘。「この4つを同時にやらないとバランスの悪い人間になってしまう」と見解を述べた。

また、技術における年齢差がなくなってきていることを挙げ、再び学び直すことの重要性を説き、さらに、学び直す際にアートなどの深い造詣を学ぶことが今後に活きてくるのではないかと示唆した。

活発な意見が交わされたディスカッション

続いて、参加した研究会委員によるディスカッションが行われた。

そこでは、「地方の中小企業の経営者の元に就くことが良い学びになる」、「企業毎にローカライズされたスキルではなく、外部に持っていけるポータブルスキルをつけるべき」、「会社に通いながら大学院に行く人が、公に言えない『隠れキリシタン』となっている状態を何とかしなければならない」、「大企業の人材がもっと早く市場に出る仕組みを求めたい」、「賃金で評価される社会認識を改善し、やりがいで仕事を選べるようにすべき」などの活発なディスカッションが行われた。

今後、各ワーキング・グループでの議論を経て、本年度中に内容がまとめられる。
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