特許庁・INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)および日本弁理士会は2023年3月24日、日本商工会議所と連携して行う「知財経営支援ネットワーク」の構築に向け、共同宣言を行った。4者は同ネットワークを通じて、地域の中小企業・スタートアップへの知財経営支援の強化・充実化を図るとともに、地域の「稼ぐ力」の向上に取り組んでいく方針だ。
特許庁らが「知財経営支援ネットワーク」を構築。地域中小企業・スタートアップへの知財経営支援を強化へ

特許庁ら4者が「知財経営支援ネットワーク」構築を共同宣言

「知的財産」(知財)とは、人間の知的活動から生み出されたアイデアや創作物など財産的な価値をもつものを指し、企業の競争力の源泉とみなされ高い関心が寄せられている。 特に、大企業に比べて保有する経営資源の少ない中小企業・スタートアップなどでは、技術やノウハウ、アイデア、デザイン、ブランドといった知的財産は重要な経営資源であるとされている。また、物価高などに直面する中小およびスタートアップ企業等においては、成長投資や賃上げのための原資の確保が急務であり、知財を強みとして活かす経営手法である「知財経営」を強化し、「稼ぐ力」を向上させることが不可欠となっている。

こうした背景から、知財経営支援のコアである特許庁、INPITおよび日本弁理士会は、日本商工会議所と連携し、「知財経営支援ネットワーク」の構築に向けた共同宣言を行った。4者は知財経営への「気づき」と「支援強化」が必要との考えから、ワンストップでの知財経営支援サービスを提供するとともに、中小企業やスタートアップなどへの知財経営支援の強化・充実化を図り、地域の「稼ぐ力」の向上に取り組んでいくとのことだ。

「知財経営支援ネットワーク」を通じ、3つの事業フェーズに応じた支援を実施

この共同宣言で4者は、知財経営支援ネットワークを通じ、中小・スタートアップ企業などの知財経営力強化に向け、強みとなる技術やノウハウ、アイデア、デザインといった知財価値の再確認と、新事業の展開や付加価値拡大への知財活用の可能性について普及・啓蒙活動を実施する。またその中で、以下の3つの事業フェーズに応じて支援強化を図っていくという。

【3つの事業フェーズに応じた支援】
1.事業準備フェーズ(新規創業や新規事業の着想・検討段階)
知的財産の確保、事業における有効な活用方法など、事業の成功に向け「稼ぐ力」を向上させるために、知っておくべき知財経営戦略が学べる機会を提供する。

2.事業実行フェーズ(知財を活用した事業を計画し、実施に移る段階)
事業の成功と「稼ぐ力」の向上を支える、知財の保護や適正取引に資する契約などを含めた準備や、実行しておくべき知財経営戦略の実践を後押しする。

3.事業成長フェーズ(さらなる事業展開を目指す段階)
事業が成功し、新たな事業展開などの際に生じる経営課題について、知財経営戦略上の観点から伴走型も含むさまざまな支援で解決を図り、企業のさらなる成長を後押しする。

4つの柱を掲げ、中小企業・スタートアップの経営力の底上げを図る

さらに、共同宣言では以下のとおり「知財経営支援ネットワークの4つの柱」が掲げられている。

【知財経営支援ネットワークの4つの柱】
1.「地域知財経営ネットワーク」の形成
●弁理士会(地域会)、INPIT、経済産業局、特許庁で形成する「知財経営支援のコア」が地域の商工会議所等と連携し、ワンストップ支援を提供する「地域知財経営支援ネットワーク」を形成する。

●「地域知財経営支援ネットワーク」は各地域の経営、金融、海外展開などの各支援機関との連携を強化し、ワンストップ機能を強める。

2.全国一律で高品質な知財経営支援サービスの提供(ワンストップ窓口)
●弁理士会(地域会)、INPIT、経済産業局、特許庁は、全国的に同水準の高品質な支援が提供できる「ワンストップ支援窓口」を構築する。同窓口を通じ、ブランディング(商標)、デザイン(意匠)、オープン&クローズ戦略、知財適正取引、海外展開などをきめ細かく支援する。

●「ワンストップ支援窓口」は、商工会議所経営相談窓口等への専門家派遣等を実施するとともに、窓口に寄せられた知財以外の資金繰りや販路拡大等の経営相談は、商工会議所経営相談窓口等で対応する。

3.大学をはじめ産学官連携による事業化への支援強化
●地域ニーズを拾い上げ、大学の知財エコシステムや産学官連携による地域のシーズの事業化に向けた知財経営を支援する。

●大学やスタートアップ等における知財の戦略的取得・活用に向けた専門家派遣・窓口支援を実施する。

4.企業内で活躍する知財経営人材、支援人材の育成強化
●知財経営人材育成に資するコンテンツ提供、セミナー等を開催する。

●地域の知財人材育成強化に向けて、高校や大学への知財学習の推進を図る。あわせて、ネットワークを支える支援人材の育成強化を図る。


4者は知財経営支援を通じ、中小企業やスタートアップ等の「稼ぐ力」を磨き上げ、付加価値拡大による地域経済の好循環の実現を目指す。今後は同ネットワークを通じ、地域ブロックにおいて、4者が知財経営支援のコアとなり各支援機関との連携を強めることで、ワンストップ機能をさらに強化していきたいとしている。
特許庁らが「知財経営支援ネットワーク」を構築。地域中小企業・スタートアップへの知財経営支援を強化へ
国内外の厳しい競争にさらされている中小企業やスタートアップ等の中には、他社との差別化を図るため知財経営を進める企業も多いという。一方で、資金力不足や人材不足などが課題となり、思うように推進できていない企業もあると考えられる。今後知財経営に注力したいと考えている企業は、こうした支援の活用も検討してみてはいかがだろうか。

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