賃金の額を相場より「上」に設定する際の注意点

次に決めるのは、一般的な時給相場より上の金額に設定すべきか、下の金額に設定すべきか、ということです。これは、賃金設計の3ステップのうち、(3)と密接にかかわってきます。

実際のケースを見ていると、企業に潤沢に利益が出ている時、またはよい人材を集めて業務拡大に乗り出そうという時、なるべく多くの人を採用したい時などに、賃金を相場より上に設定することが多いですね。

ただ、気を付けたい点もあります。賃金を相場より上に設定する際は、ぜひ新入社員の額と比べてみてください。彼らの所定労働が170時間で月給17万円ならば、時給は単純計算して1000円。これよりも時給が高ければ、非正規社員たちの意欲は増すでしょう。が、新入社員は不満を持つかもしれません。

一方、アルバイト・パートスタッフが企業の売上にとって重要な役割を担っている場合は、逆もまた然り。新入社員の給与を超えることをよしとするか否かは、企業の裁量次第。経営戦略を反映してください。

賃金の額を相場より「下」に設定する際の注意点

次に、相場より下の金額に設定するケースを見てみましょう。普通に考えれば、人材の獲得競争において、賃金が少ないのは不利ですよね。しかし、工夫次第で挽回できる可能性もあります。たとえば、「昇給」や「手当」に関する制度を取り入れる方法です。

「昇給制度」の具体例を見てみましょう。

●企業が取り入れるアルバイト・パートの昇給制度の例
 1年後には原則10円アップ、勤務状況によって20円アップ など
 契約を更新した場合は、原則20円アップ など


採用時の賃金は少ないけれど、働きぶりによって金額を上げる仕組みは、スタッフのモチベーションアップにも効果的ですよね。

ただし、この仕組みを取り入れる際は、「頑張っているか」などの主観的な評価ではなく、「この仕事ができるようになったか、まだできていないか」などの客観的な評価を基準にするよう心がけてください。

とはいえ、「経営不振で、必ず昇給させるという約束はしにくい」という声もあるかもしれません。それならば、「手当制度」を検討してみるのも1つの手です。

手当というと、「通勤手当」「職務手当」などを思い浮かべがちですが、実はこのシステムは、労働基準法に定めがありません。「給与」は雇用者側が勝手に減額などの改正をすることは許されませんが、「手当」の場合は、仕事ぶりによって増減があると定めておけば、臨機応変に金額や頻度を変更してもいいのです。

●企業が取り入れるアルバイト・パートの手当制度の例
 今月は売上が上がったから、スタッフに“ありがとう手当”を支給する
 経営が軌道に乗り始めたから、毎月一番優秀な働きをした人に“MVP手当”を支給する
 経営不振に陥っているため、これまでの手当をいったん廃止する


企業の哲学を反映しつつ、従業員のやる気がアップする楽しい手当を検討してみるのもいいですね。

保険の金額チェックもお忘れなく!

この記事にリアクションをお願いします!