本年度の新入社員研修は、技術系の職種以外はほぼ各社終了した事と思います。

弊社の新入社員研修では、研修スタート時と終了間際の2回、意識調査を実施しています。
通常、一回目のデータのみ入力し、二回目のものは特段、統計を取っていません。

合計点数では、二回目の意識調査は一回目と比較して平均28点程度向上しますが、
実際のところ、個別の設問において、意識はどのように変化するのかは調べていませんでした。
そこで、4月に行われた公開コースの4クラス(101名)だけ、二回目のデータを試しに入力して、調べてみました。
※同一人物の回答と確定できないデータ、すべての設問に回答が記入されていないものは除外。
このデータから、一回目と二回目の変化で受講者の意識の変化が少なかった者、
誤答傾向が強くなったものを取り上げると、次のようになります。

「たてまえと本音は違うという固定観念は、職場では通用しない」(正答への変化10人、誤答への変化15人)
「仕事は「会社のためにしてやっている」のではなく「自分のためにやっている」のだ」(正答への変化15人、誤答へ変化18人)
この二つは、正答に変化した人より誤答に変化した人の方が多くなっていました。

その他にも、誤答傾向の増加が多いものには、次のような設問があります。
「会社の実態を知るには、噂や横の情報だけに頼るのは間違いである。しかし、上司に直接聞いてみたところで、はっきり分かるものでもない」
「会社の仲間と仲良くやっていくためには、多少いやな付き合いも我慢して付き合う必要がある。」

わずか公開コースの101人ですから、ここから明確な新入社員全体の意識傾向を読み解くわけにはいきませんが、それでも「会社に対する不信感」、「仕事を会社のためにしてやっている感覚」のようなものは感じることができます。
「仕事は「会社のためにしてやっている」のではなく「自分のためにやっている」のだ」という設問は、「そう思う」の率が、2001年には64.2%であったものが、2014年には35%まで下がっています。
今回のこの100人でいえば、31.6%にしかすぎません。

逆に、正答率が高まった上位の設問は、次のようなものです。
「我々は時間で労働を売っているのだから、勤務時間中に指示されたことだけをやっていればよい」
「職場の人間関係は心が通じ合っていれば、礼儀作法などに気をつかうことはない」
「多くの先輩と幅広く付き合うより、特定の先輩と親密になる方が得である」
「良い成績さえ上げていれば、会社の規則やルールは多少違反しても許される」
これらは、もともと、正答率の高い項目であり、また、マナーやルールに関することは比較的受け入れられやすい項目でもあります。

皆さんの会社の新入社員はいかがですか?

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一方、インストラクターからの研修担当報告書を読んでいると、下記のような行動傾向も多数見られています。
「休憩時間には学生に戻るかのようで、その会話の内容に研修のことは出てこない。テレビや個人的な趣味の話ばかり。研修の緊張感が持続しない。休憩時間の会話は幼児並では」
「幼弱性が強いというより、子供っぽい。集団行動をしているといつの間にか仲良しクラブのようにじゃれ合っている」
「(公開の研修では)相互に仲良くなろうとしない。他社の人、他チームの人との交流が極端に少ない」
「研修で意識も行動もレベルアップするが、半数以上は周りが練習しているからやるといった状況で、自発的、自律的とは言い難い」
「研修会場前に落し物がありました。それに気づいても見ぬふりをして、拾う方が1人もいない。余計なことには関わらないというような意識があるのではないか」

このようなマイナス面だけではなく、良い面もありますし、積極的な新入社員がいることも事実です。恐らく、大手の企業様のなかには、やる気満々で積極的な新入社員達であふれているところもあるかもしれません。社会を見据え、自分を磨き、高い志を持って社会に出てきた人もいるにはいますが、極めて少数です。それらの人と、そうでない人の差が大きく開いており、2:6:2の原則でいうと、最上位の1%の人を稀に見かける程度で、その他の上位19%に入るはずの人が、かつての中位60%の上の方と混ざってしまい、見当たらないような感覚です。

わずか101人ではありますが、この一回目と二回目の意識調査の変化や、今年の新入社員研修の現場で観察された言動、現場を担当してきたインストラクターの主観も交えて、「速報」としての今年の新入社員の傾向を考えると次のようになります。

・仕事と私生活は分離して考える傾向がさらに強くなっている。
・そのため、仕事で自己実現する、仕事にのめり込むということに抵抗感がある人が多い。
・近年の「ブラック企業報道」や「労働観」の変化による企業に依存する意識の低下、あるいは「そこそこの生活さえできればよい」と考え、「もっと上へ」という上昇志向が欠如しつつある。

新入社員研修が終了し、採用活動に忙しい人事担当者の方も多いかと思います。
しかし、育成はこれからです。現場任せにせず、育成に関わっていくことで、よりよい組織風土を作っていかねばなりません。
弊社も、これらの変化に対応して、来年度以降の新入社員研修を工夫していくことが必要だと考えています。
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