企業規模で異なる、終了企業の内定充足率

今度は、「(ほぼ)終了した」企業を対象として、採用計画数に見合う内定者数を確保できているのかどうかを見てみましょう。
 まずはメーカーからです[図表4]。「(ほぼ)終了した」と聞くと、今後の内定辞退を見越して採用計画数に対して「100%以上」の内定者を確保しているか、少なくても「90%以上」の内定者を確保しているイメージを持ちがちですが、実態は少し異なります。大企業では、すべての企業が「90%以上」というわけではないものの、「70%未満」との回答は1社もありません。それに対して、中堅企業では「50~70%未満」の企業が6%、中小企業にいたっては「50~70%未満」の企業(7%)だけでなく、「30%未満」という企業も7%あります。採用計画数まではほど遠いものの、採用活動自体は終了しようというものです。これ以上継続したとしても、本来自社が求める人材を採用できそうにないとのあきらめ感からなのでしょう。
第43回 2015年卒採用の最新状況
中には、不足分を中途採用でカバーしようと考える企業もあるかと思いますが、実は中途採用市場のほうが新卒採用市場よりも人材獲得合戦は熾烈(しれつ)になっています。中途採用に過度な期待をされないほうが無難です。

内定充足率が低くても採用活動を終了する非メーカー

次に非メーカーを見てみましょう[図表5]。メーカーに比べると全体的に内定充足率は低くなっています。内定充足率「90%以上」の企業の割合は、メーカーの大手企業では86%に達していたのに対して、非メーカーでは大手企業でも77%にとどまります。中小企業で比較してみても、メーカーでは79%なのに対して、非メーカーは68%しかありません。いずれも約10ポイントの差があります。中堅企業の差はもっと大きく、メーカーの89%に対して非メーカーは69%と20ポイントも低くなっています。
第43回 2015年卒採用の最新状況
最近の傾向として、ポテンシャル的には合格ラインの人材だとしても、就職活動の後半になって初めて応募してくる学生は、他社に落ちたから仕方なく応募してきているだけであり、自社に対する強い思い入れがあるわけではないと考えて、採用活動を止めてしまう例が少なくありません。採用しようとすれば採用できないわけではないのに、内定後(入社後)の他の内定者との温度感やロイヤリティの違いを憂慮しているというわけです。もちろん一つの考え方ではありますが、一方の学生からすると、そのような企業が増えてくると後半戦での挽回が難しくなってしまいます。
 ただ、企業側にも新しい動きが出てきています。「入りたい学生」から採るのではなく、「採りたい学生」から採ろうとする動きです。極論すれば、志望動機などは不要というものです。有名なところでは、富士通の「チャレンジ&イノベーション採用(一芸採用)」がこれに当たります。金太郎飴のような人材の集団にならないためにも、こういった動きがもっと広がってくることを期待したいですね。

活動継続企業の内情は、企業規模によって大きく違う

「活動継続中」企業についても内定充足率を聞いています。こちらはメーカー、非メーカーで分けずに全体の企業規模別のデータで見てみたいと思います[図表6]。
第43回 2015年卒採用の最新状況
中堅企業の一部には、充足率が「100%以上」であるにもかかわらず、まだ採用活動を継続している例もあります。例年の内定歩留まり率を考えると、まだ心もとないということなのでしょう。「90%以上」の企業割合だけは、中堅企業が最も低くなってはいるものの、その他の区分はきれいに企業規模に比例しています。例えば充足率「70%以上」の企業の割合は、大企業で69%、中堅企業で51%、中小企業で30%、充足率「30%未満」となると大企業では皆無であるのに対して、中堅企業で5%、中小企業では13%といった具合です。冒頭のデータ(全体)では、採用活動の終了・継続の状況は企業規模による差は少なくなっていましたが、終了企業、継続企業ともに企業規模によってその内情は大きく異なるということが分かります。
 今回のデータは8月末時点の調査になりますが、現時点で再度継続状況の調査を行ったとしたら、企業規模によって大きく傾向が異なることが予想されます。大手企業では継続企業でも残っている採用枠の割合は少ないので、採用活動を終了している企業が大きく伸びているでしょう。また、採用活動継続企業にとっても10月1日の内定式は一つの大きな節目になっています。内定者は充足していなくとも、この日までに採用活動を終了する企業は少なくありません。

大企業でも4割の企業で内定辞退が増える

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