一般的な「人事評価制度」の作り方

さて、アルバイト・パートスタッフを対象とした「人事評価制度」の中で、最も取り入れやすいのが勤務態度を評価するオーソドックスなタイプです。これは、職能レベルや特定のスキルではなく、勤務態度や向上心、チームとの協調性、シフトへの貢献などで評価するのが特徴です。
第17回 アルバイトのやる気を引き出す 「人事評価制度」活用ガイド
上記は、コンビニエンスストアで使われている人事評価シートのサンプルです。業種によっても作り方は異なりますが、まずは基本となる作り方をご紹介しましょう。

「人事評価シート」作成の3ステップ
(1)スタッフの評価要素を洗い出す

ポイント:複雑&過剰な項目は運用に差し障るため、シンプルな言葉で、項目を増やしすぎないようにするのがコツ。10項目もあれば十分。

(2)評価として「着眼点」を記載する
ポイント:「ここまでできれば3点」「ここまでなら2点」というように点数基準まで決められるとよい。3カ月以上無欠勤なら1点、さらに遅刻もしていなければ2点という具合。

(3)重要度が一目でわかる「ウェイト」を設定する
ポイント:大切にしたい評価項目は配点のウェイトを高く設定する。人によって差がつきやすいような項目を高めにしてもOK。

 なかでも「ウェイト」は、管理側が何を大切だと考えているか、スタッフに何を求めているのかという意思表示にもなります。ぜひ設定してみてください。

人事評価シートは、業種ごとにカスタマイズを!

上記ではコンビニエンスストアの人事評価シートを例に挙げました。しかし、業界によって「評価項目」や「評価のポイント」、「ウェイト」は大きく異なります。

 主な評価ポイントの違いを、「フード系接客業」「販売・サービス系の接客業」「コールセンター系」「清掃、運輸、軽作業系」、以上4つの業種別に見てみましょう。

業種ごとに異なる主な評価ポイント
●フード系

衛生観念の欠如や食中毒が致命傷になる“フード系接客業”は、衛生管理を徹底するためにも「衛生面」の項目はマスト。「専門知識の探求(アレルギーやアルコールに対する知識)」や「追加オーダーを取りにいく姿勢」などの項目も重視したい。

●販売・サービス系
仕事のメインを占める「販売力」を評価するために外せないのが「売り上げ実績」の項目。昇給制度やインセンティブ制度と組み合わせれば、販売力のあるスタッフのモチベーションを高められる。

●コールセンター系
電話口での応対がすべてといっても過言ではないコールセンター系は、「言葉づかいは適切か」といった基本事項、あるいは人によって差がつきやすい「お客様を怒らせた回数」などを評価項目に含めるとよい。

●清掃、運輸、軽作業系
接客業や販売業に比べて、仕事の質を比較しにくいため、普段の勤務態度を細かく評価するスタイルは不向き。グレードランク制度のように「指示をもらえれば基本はできる」「配置を考えた指示ができる」などの職能でざっくりと評価するスタイルの方が運用しやすい。

 もちろん、上記は一例に過ぎません。業界や職種、部門などを考慮しながら、何を一番大切にすべきかによってシートをカスタマイズしてみてください。

「人事評価制度」は継続が命!

第17回 アルバイトのやる気を引き出す 「人事評価制度」活用ガイド
これらの評価は、半年に1回など、定期的に行うのがポイント。ただ、多忙な人事担当者にとっては、この評価制度が負担になりがちです。最初はなんとか運用できていたものの、だんだんと滞り、数回でやめてしまう会社や店舗も少なくありません。

 しかし、制度をころころと変えると、スタッフは不信感を抱きますから、長く継続することを心がけてください。そのためにも、モットーは「できるだけシンプルに」! 必要最低限の項目を作ることから始めていきましょう。

 スタッフの人数が多く、全員を評価することが難しいなら、評価を“自己申告制”にして対象者を絞るのも有効です。人事評価制度に参加するための最低基準を設け、それをクリアしていると自己申告してきたスタッフのみを評価しましょう。

 また、私のクライアントの中には、専門の調査会社にチェックをお願いしているところもあります。覆面調査員が職場に赴き、実際に接客を受けて、その様子を調べるのです。

 第三者によるチェックには、主観的な評価を防げるというメリットもあります。より公正な評価をするために、パートやアルバイトのリーダーとダブルチェックをする会社も少なくありません。人間関係などが評価に響きそうだと思ったら、公平性のあるチェック体制を設けておきましょう。

本人へのフィードバック時の注意点

第17回 アルバイトのやる気を引き出す 「人事評価制度」活用ガイド
人事評価制度の仕上げとなるのが、本人へのフィードバックです。スタッフが頻繁に出入りする休憩スペースや慌ただしいバックヤードではなく、二人とも落ち着いて話せる空間で、きちんと向かいあって座り、面談の形で評価結果を伝えてあげてください。

 すでに客観的な数値やランクが明記されているため、フィードバックは誰にでも可能ですが、最も適しているのは実際に評価を下した人物。たとえば店長や直属の上司です。なぜなら、このフィードバックはスタッフとの絆を深める点でも役立つからです。

 何ができているか、何ができていないのか。それを“見える化”することが大切なのはすでに述べたとおりですが、一番の狙いはスタッフにやる気を出してもらうこと。「あなたはここが素晴らしい!」と、まずは褒めてあげてください。

 また、面談の際は、できれば本人の話をゆっくり聞けるだけの時間を確保しましょう。これは、雇用契約書を更新するタイミングでもいいと思います。スタッフが普段は見せない気持ちやスタッフ間の人間関係、表面化していない問題は、真剣に聞く姿勢を見せないと入ってこない情報です。

 ぜひ、「人事評価制度」を上手に使って、スタッフとの信頼関係を築くと同時に、今まで以上のやる気を引き出していってくださいね。

提供:インテリジェンス「an report」
http://weban.jp/contents/an_report/
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