先の意識調査によれば、組織の中堅どころの社員の8割以上が「人間らしい生き方ができるのは、仕事よりも私生活」と答えているわけです。
「人間らしい生き方」のイメージは人それぞれでしょうが。
「人間らしさ」で考えると、その要素はおおむね、次の三点に要約されます。

・感情のまま行動するのではなく、理性を持って判断する。
 善悪の判断が付き、善の方向で行動を選択する
 (何を善とするのかは、時代、地域、社会、宗教等によって異なりますが)
・社会的な生活を営む。人と協働して何かを成し遂げる。
・新たなものを創造する、考える。

これらのことは、働くことでも大いにカバーできます。
むしろ、私生活より、仕事の中での方がカバーしている考えて間違いないと思います。

また、「自分は役立っている」と感じることが「人間らしさ」につながっていることは間違いありません。
職業(有給労働とは限らない)に就き、働くということは「自己有用感」を獲得する最大の方法です。

生活と職業が密接している場合、この「働くこと=自己有用感」という感覚は比較的得られやすいのだと私は思います。
働き、人の役に立っている人(だいたいは親)を間近に見られるのですから。
私自身、自営業の家に育ちましたので、その実感は大いに持っています。
ところが、自営業を営んでいる人の推移をみてみると、1970年977万人、1990年878万人、2010年582万人。
つまり、生活と職業が密接しているであろう家庭で育った人は、この40年でほぼ半減しているのです(少子化傾向も考えるともっと減っていると推察されます)。
社会に出るまで、「働くこと」を身近に感じることができない人が多くなったと考えられます。

説話では、「働くとは、傍(はた)が楽(らく)になることで、お客様や周りへの人を楽にしてあげることなんだ」とか、「石切工の事例」
(参照:https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=271)とか
働くことの意義を説くものがたくさんあります。
そのほとんどは、その話を聞いた人が
「人や社会のためのに自分は役立つ」
「働くことが生きがいになる」
と感じることを「目的」にしているように感じます。
研修や講話では、このような説話を使って、働くとは、生きがいそのもの=人間らしい営みだと伝えるます。

しかし、いくら説話でわからせようと思っても、そこは限界があります。
ある食品スーパー様では、弊社の新入社員研修の期間中に「出口調査」を新入社員にさせています。
スーパーの出口でお客様にその店の感想を聞くのです。
いかにお客様から支持されているか、何がその要因なのかを最終日にまとめて、役員と店長にプレゼンさせます。
「お客様視点を持たせる」とか「基本的なマナーを実践する」等、この取り組みにはいくつか目的がありますが、その一つに「この仕事は人の役に立つこと」であるという実感を持たせることを上げています。
新入社員には、早い段階で「自己(自社)有用感」を持たせることが重要だと思います。
それが、仕事の中での人間らしい働き方をすることにつながっていると思います。
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