最近流行りの言葉で“タレントマネジメント“という言葉があります、またその実行をサポートする”タレントマネジメントシステム“が注目を浴びています。人材の高度な活用を目的とした、人材の育成、配置、発掘などに力点を置いた人事管理手法であり、システムです。

 人材活用というテーマはいままでさまざまな議論がされ、多くの企業で意欲的な取り組みがされてきています。今時点で“タレントマネジメント”の中身を聞いても、“いまさら”的なものが多く、至極当然のことを言っているように思います。確かに経営により直結した人材管理という意味で、ある程度体系化されている概念でありシステムです。しかし人事管理を通常議論する者にとっては、新規性が見当たりません。さらにこのような“手垢のついた“概念に対して、わざわざ“タレントマネジメント”と称することが大げさな感じすら受けます。改めて英語で呼ぶことにも逡巡します。
  タレントマネジメントは何が新しいのでしょうか。まずこのマネジメントの基本的な考え方は、社員の活用、育成、定着に対するものであり、そのために評価やサーベイや職務履歴や自己申告などを活用するというものです。新規性があるとすると、この高度な人材管理を実際に行うことを強力にサポートする“タレントマネジメントシステム”でしょう。今までの人事システムが、人事の実務処理を効率的に行うことを目的にして利用されてきたものから、より高度な人材管理を行えるようにするという発想で構築されています。社員の発掘や活用や育成、定着などをよりスピーディーに適正に行うべく、そのマネジメントに必要な情報を体系化したものです。今までの人事システムが“人事業務システム”であったものから、経営者や事業管理者なども含めて人材のパフォーマンス向上を直接的に執行する経営幹部も含めて活用する“人材マネジメントシステム”ということになります。今までのシステムの発想や守備範囲という観点からは新たな領域、プロダクトということができます。

 このようなシステムが一般的になること自体は、企業の人事管理レベルを押し上げる基盤が提供されるという観点では非常に好ましいことです。しかしプロダクトとしては、今までの人事システムが本来カバーしているべき機能であるはずです。ところが、今までの多くの人事システムがこの機能を十分に顧客にアピールできなかったこともあり、人材活用のための積極的なシステム機能が発達しなかったのです。そのため既存の人事システムとタレントマネジメントシステムは本来一つのシステムであるべきところが、別のプロダクトとして販売されていることが多いのです。人事システムとタレントマネジメントシステムは使用するデータも共通性が高く、別のシステムである必要はないので、人事システムの機能拡張モジュールか、そもそも人事システム内に取り込まれるべき機能です。

 人事管理がより高度になるためには、経営に対して人事管理がより重要で有効な管理であることを証明しなくてはなりません。タレントマネジメントシステムが新たなプロダクトとして定着するには、経営における人事管理の有効性が真に認識されなければならないということです。そして“タレントマネジメントシステム”が定着した時には、“タレントマネジメントシステム”などの洒落た名前ではなく、単に“人事管理システム”と呼ばれているはずです。
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