最近、大前研一氏の新著「稼ぐ力~仕事がなくなる時代の新しい働き方」を読みました。日頃大前氏が主張されていることの多くが述べられていますが、今後の企業の人事課題の観点からも非常に参考になりました。
現状認識として、グローバルなビジネス環境の観点で日本企業が何に苦しんでいるのか、そんな日本でこれから必要とされる人材とはどのような人材かを述べ、次に「新しい働き方研究」として、日本のビジネスパーソンの世代別の課題を指摘し、その処方箋を示しています。世界的には報酬の格差がさらに広がるのが現状であり、ビジネスパーソンとして差別化の武器を持たないと勝っていくことはできないと、厳しく指摘しています。
人事・就職関連の話題で俎上(そじょう)に載せられているのは、アベノミクスの賃上げ政策、ユニクロの世界同一賃金宣言、経営者リーダー教育、人事データベース、追い出し部屋、65歳定年制、育休3年、女性活用、ヤフーの年収1億円制度、労働者派遣法改正、採用基準、採用選考方法、東大秋入学提言などで、極めて多岐にわたっています。皆さんが大前氏の個々の分析に同意するかどうかは別として、こうした俯瞰した視点が重要だと思います。

入社前教育実施企業が中小企業でも増加

10月1日には各社で来春入社予定者の内定式が開催されたことでしょう。最近の傾向としては、本社に内定者全員を集めるのではなく、地方拠点にも会場を設けて開催する例が徐々に増えてきているようです。学生の負担を考えて、近くの会場で参加できるようにするためです。内定式には内定書の授与というだけでなく、内定者同士の顔見せという側面もありましたが、最近では内定者SNS等で内定者間の交流はWEB上でもできるようになってきていることから、一堂に集める意味合いが薄れてきていることも影響しています。
中には、デンソー(愛知県刈谷市)のように、リアルな内定式を執り行わない会社も出てきています。内定者には理系学生が多く、卒業研究や短期留学で忙しい学生をわざわざ本社に呼び集めるよりも、卒業までの時間を有効に活用してほしいとの配慮からだとのことです。内定者だけが見られるSNSで人事担当役員からの激励メッセージを配信することで、内定式に替えています。今後、理系内定者の多いメーカーでは同様な動きが出てくるかもしれませんね。

さて、内定者フォローの一環として、内定式から入社までの間に入社前教育(内定者教育)を実施する企業も多いことでしょう。今回は、HR総研が実施した調査を基に、内定者教育の状況についてお伝えしたいと思います。
まず、入社前教育の実施状況から見てみましょう。2013年春入社者を対象に入社前教育を実施したかを聞いたのが[図表1]です。大企業(従業員1001名以上)と中堅企業(301~1000名)では7割に達していますが、中小企業(300名以下)では62%にとどまっています。ただし、今年から実施するという企業は、他の企業規模よりも多い8%もあり、今後徐々に実施企業は増えていくものと推測されます。
第31回 内定者教育の状況について

メーカーと非メーカーで異なる実施状況

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