就職ナビへの企業の依存度が下がり続けています。昨年度は、就職ナビが自社の採用において「これまでと変わらず中心的な役割を担う」としていた回答が69%だったのに対して、今年度は55%に激減しました。300名以下の中小企業に限って言うと、45%まで下がります。
第15回 就職ナビの役割は昨年に比べ削減(2012年7月)
私自身、ここ数年就職ナビ依存の弊害を訴え続けてきており、そのせいではないでしょうが、望ましいことだと思います。
 ただ、学生の99%は就職ナビを活用しており、依存度は下がっていません。学生の依存度をいかに下げるか、企業、大学が知恵を絞っていく必要があるでしょう。

 さて、知名度がない中堅・中小企業が、学生に就職ナビで見つけてもらうことは非常に困難です。そこで学生に、以下のような問い掛けをぶつけました。

「最終的には多くの学生が中堅・中小企業に就職するのですが、学生のほとんどは当初大手企業ばかりを志望します。早くから自分がマッチする中堅・中小企業に出会うためには、どうすれば良かったと思いますか。または、どのような仕組みがあれば出会えたと思いますか」

 この問いに対する学生の回答の多くは、非常に的を射たものです。中堅・中小企業がマッチする学生を採用できるヒントが隠されていると思います。
 では、その回答を見ていきましょう。

■学生が考える、「マッチする中堅・中小企業の見つけ方」

(1)インターンシップ

まず、非常に多かった回答は「インターンシップ」です。
・インターンシップなど実際の仕事中の様子を知る機会を多く得ること
・インターンシップやアルバイトなどの制度をより普及させていくのが良いと思います。実際の仕事や、その会社の人々のイメージが持てることが大切です
・インターンシップを開催するなど、中小企業ほど早く情報を開示する
・学生の知識不足が原因。情報を見られるようになるのが遅いため、インターンシップなど企業と接しやすい機会を増やすべき
・学生は中小企業と接する機会が少ないため、積極的にインターンシップの機会を設け、学生に理解してもらうことが大切だと感じる。また、大手企業がビジネスで連携している中小企業を進んで紹介することで、学生側も中小企業を受け入れやすくなると感じる
・去年の夏から秋ごろに、ようやくインターンシップを意識し始めて参加したので、もっと早いうちからやっておけば良かった
・中堅・中小企業も、もっと積極的に大学に赴いたりしていただくと、学生側が企業を知る良い機会になるのではないかと思う

 学生は、知名度のない中堅・中小企業に対して、入社してからの仕事内容や人間関係に不安を抱いています。その不安を払しょくするには、インターンシップが最も有効です。
 もちろん、「実際の職場を見せたら来なくなる」「現場が受け入れを拒否する・嫌がる」「ノウハウがない」などの問題を抱える企業も少なくないでしょう。でも、ミスマッチした学生を採用してすぐ辞められるほうが損失は大きいでしょう。
 また、見られたらまずいような職場自体が問題でしょうし、実は思うほど学生は嫌なイメージを持たないものです。現場も、特別な場を用意するのではなく、できるだけ普段の仕事を見せれば良いのです。それでも、学生が入ってくることで、職場がリフレッシュすることが多いものです。

(2)中堅・中小企業のみの合同会社説明会

また、同じく多く挙がったのは、学内合同説明会です。これについては言うまでもないので、学生のコメントはここでは挙げません。
 そこで、学内説明会ほどではありませんが、「中堅・中小企業のみの合同会社説明会」についてコメントを紹介します。
・優良中堅・中小企業のみが集められた合同説明会があれば良かった
・合同企業説明会の中小バージョンを開催するべき。合同企業説明会というと、どうしても知っている企業に足が向いてしまいがちになるが、中小企業のみ参加の合同説明会ならいやが応でも中小を知ることができるから
・ある商品に関わる中小企業を集め、合同説明会を開く
・ネット上では分からないことも多いので、中小企業のみの合同説明会を行ってもらえれば、もっと多くの企業と出会えると思う
・とにかく、早い段階から中小企業に興味を持つことが大事だったと思います
・企業で見るのではなく、業界・職種で絞り、幅広く検索すれば良かったと思う
・中小企業合同説明会などの早い段階から、中小企業に魅力を感じられるような場が必要があると思う

 中堅・中小企業だけの合同説明会というコメントが多いのは、大手企業に交じると埋もれてしまうからです。中堅・中小企業だけだといや応なく見るという考えです。これまでは早い時期に中堅・中小企業だけの合同説明会をやっても、学生の集客が厳しいという現実がありました。ただ、状況は徐々に変わってきていることと、どのようなコンセプトでの合同説明会にするか(高いシェアの商品、職種、人材育成など)によって、集客力は変わってくるでしょう。とにかく、大手に埋もれるような合同説明会には、よほど差別化の自信がなければ参加しないことですね。

(3)大学経由の露出

次に、大学を経由することです。学内合同説明会はもちろんですが、ここではそれ以外のコメントを挙げます。
・大学で中堅・中小企業の説明を多く開く。本人の意識の問題が大きいが、今まで知らなかった企業に行くという勇気を持てるようにする環境作りが大切
・2回~3回生のときに、大学で強制的に企業の紹介や研究をさせる時間を持つと良いと思う(中小企業の講演会など。)
・OBやOGと懇談できる機会が欲しい。できれば大学側が主催して、複数のOB・OGに来ていただき、その中で新しい価値観(中小企業に行きたい、など)が生まれるのではないかと思う
・3年生の最初のキャリアガイダンスや、企業セミナーにもっと中小の方を呼んだり、情報が欲しかったです。
・自分の大学の学生にどこの企業から内定が出ているのかを確認できる仕組みがあれば良い。

 学生にとって、大学のお墨付きを得た中堅・中小企業は信頼性が上がります。また、自分たちでは気づかない中堅・中小企業との出会いの場を、大学が作ってくれることを望んでいます。
 企業の側としては、大学のキャリアセンターに、学内のガイダンスやインターンシップで協力することを積極的にアピールすると良いでしょう。特に、大学はインターンシップの受け入れ先が少ないことに悩んでいますので、歓迎される可能性が高いと言えます(もちろん審査はありますが)。

(4)時期をずらす(早期に)

次は、広報時期の問題です。
・採用時期をずらす。中小企業の方が先に説明会を行っても良いと思う。そのほうが説明会に足を運びやすい
・12月からの就活で中小を見る時間はない。アプローチの仕方も分からないとみんな言っていた
・12月から開始するとどうしても名前がすぐに思いつく大企業に行ってしまいがちなので、もう少し心と時間にゆとりを持てるよう、10月からの開始にするべきだと考えます
・選考時期を大企業は後にする。それしかないんじゃないでしょうか。それか、中小をまとめて集めてインターン公募をする。企業として中小のほうが圧倒的に優れていることが多々あります。その現実を捉えさせる機会を誰も学生に提供していない
・毎年、人気企業の企業説明会は早めに行われて、中小企業は4月からのイメージがある。人気企業よりも早めに(11月には始めるなど)説明会を組んでいただけたら、情報をつかみたいので行くと思う

 意外と「早期にやるべし」という意見が多数ありました。実際問題として、中堅・中小企業が早期に採用活動をすることは、歩留まりの問題や前年度の採用と時期が重なってしまうことなら、一見難しいように見えます。しかし、多くの学生が大手より先に行うことで、魅力が理解しやすくなると言っているのは、一考の余地ありでしょう。
 倫理憲章に本来拘束されない中堅・中小企業は、思い切って早期から活動を行うこともありだと思います。内定パスを出して、大手企業の後からでも先着順でOKを出すという思い切ったアイデアなどもあり得ます。

(5)採用実績校の情報開示

採用実績を積極的に開示することも効果的なようです。
・自分も大手しか見ておらず、最終的に大手から複数の内定をいただいたので中堅企業を見ることはなかったが、中堅企業を目指す人は自分の学校の採用実績を見るのが一番だと思う
・採用実績校を開示することでフィルターなどの判断ができるようにすれば、無駄に応募せずに、同業種の中小企業に行くのではないかと思いました
・知名度の低さが大きな要因の一つであると考える。そのために、採用実績や選考方法をさらに開示して、自分に見合った企業を探せるようにする必要があると思う

 採用実績校をターゲティングし、OB・OGが働いていることを積極的にアピールすると、学生の不安感を下げることになるでしょう。
 もちろん、新たなターゲットにアプローチしたいときには使いにくい手法ではありますが。

■個性的な手法でアピールしましょう

まだまだ多くの学生コメントがあり、「お、これは面白い!」と思わせるものも少なくありません。学生もなかなか考えていますね。
 企業目線だけだと、他の企業と似たり寄ったりのものになってしまいます。中堅・中小企業も学生目線で個性的な採用手法を検討してみてはいかがでしょうか。内定者に、まっさらな頭で採用手法の提案をさせることも一つの方法でしょう。
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