とある男性国会議員の不倫騒動で男性の育児休業取得について注目が集まった。育児休業を始め、男性の育児を支援する制度について考えてみる。
イクメン議員の不倫騒動勃発! 男性の育児休業取得について考える

男性の育児休業が微妙な感じに

とある男性国会議員の不倫騒動が男性の育児休業(以下「育休」。)取得に水を差すような形となってしまった。

そもそも、男性の育休は一般的に取りにくいとされており、厚生労働省の2014年度「雇用均等基本調査」によると、男性の育休取得率は2.30%である。政府は2020年までに13%にするという目標を設定しているが、人事労務の現場を知る筆者としては果てしない道のりがあるように思える。

男性の育休の取得については、法に基づく制度であるので男女に関わらず取得できるようになっている。
以前は、労使協定を定めることにより、配偶者が専業主婦(夫)や育休中である場合等の労働者からは、育休申出を拒める制度となっていた。2009年の法改正によりこれを廃止し、専業主婦(夫)家庭の夫(妻)であっても育休を取得できるようになっている。その改正の背景として「勤労者世帯の過半数が共働き世帯となっているなかで、女性だけでなく男性も子育てができ、親子で過ごす時間を持つことの環境づくりが求められている。」「男性が子育てや家事に関わっておらず、その結果、女性に子育てや家事の負荷がかかりすぎていることが、女性の継続就業を困難にし、少子化の原因にもなっている。」と厚労省のパンフレットには記載されている。

しかし、利用できるはずの男性労働者にとっても、また企業にとっても、依然としてハードルが高い制度のようだ。

男性が利用できそうな育児に関する制度について

育休とは、平成3年に制定された「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育児・介護休業法」。)」に基づいて、子を養育する労働者が取得できる休業である。通常子が1歳になるまで取得できるが、保育園に預けられない等の事情がある場合は1歳半まで取得できる。
その間の給与を補填するものとして、雇用保険から育児休業給付金が貰え、育休中の最初の半年間は育休前の給与の67%、半年後は50%が給付される。こちらも男女何れも利用が可能である。

男性が育休の利用を躊躇う原因として、人事評価への影響が挙げられている。それについては育児・介護休業法第10条により、不利益な取り扱いが禁止されている。
厚労省の「育児・介護休業のあらまし」では、休業期間を超える一定期間昇進・昇格の選考対象としない人事評価制度とすることは「昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと」に該当する、とされている。会社の人事制度が上記に該当しないか注意が必要である。
その他、法が定める制度として、会社は一定の条件を満たす3歳未満の子を育てる労働者のために、短時間勤務制度(1日原則6時間)を設けなければならない。短時間勤務制度は、育休復帰後の女性労働者の利用は増えているが、男性労働者の利用は少ないようだ。
また、あまり大きく取り上げられることは少ない制度として、同じく3歳未満の子を育てる労働者が請求した場合は、残業をさせてはいけない、という制度もあれば、小学校入学前の子を育てる労働者が請求した場合は、1か月24時間、1年150時間を超える残業をさせてはいけない、という制度もある。

筆者も二児の子どもを育てる共働き世帯であるが、育休や短時間勤務について夫婦同時に取得する必要はないのでは、と考えるが(最も筆者は事業主ゆえに育休等の制度利用はできないが)、夜ご飯の準備やお風呂などで慌ただしい夜の時間帯には、夫婦二人がいる方が望ましいと思っている。もちろん、夫婦のあり方、子どもの数や状況等について、どの制度を利用するのがベストかは各家庭により異なるであろうが、周囲に聞いても、同じような感覚であるようだ。育休や短時間勤務取得を考えるよりも、時間外勤務の制限に関する制度については、比較的取得しやすく、企業にとっても負担が少ないため有効ではないかと思う。

また、現在、ワークライフバランスの観点により、賃金テーブルを何通りか設け、転勤がある通常の社員から転勤のない勤務地限定社員等への転換がスムーズに行える人事制度を導入している企業が増えている。子育て世帯の転勤については、切実な問題であり、請求があった場合は数年間転勤を拒めるような制度があった方が良いと思うが如何だろうか。

そう考えていくと、男性の育休取得を考えるよりも先にやるべきことは沢山あるようである。
どんなに立派な制度を導入しても利用者がおらず絵に描いた餅とならないよう、各企業において労働者の声を聞いた上で何が求められているか検討する必要があるのではないだろうか。
まずは各企業においてできるところから取り組み、男女共に子育てと仕事を両立できる環境をつくっていくことが大事だと思う。

松田社労士事務所
特定社会保険労務士 松田 法子

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